#8 ある御仁と言われて現れたのが身内だと驚くよね


-23-


「『サーヴェランス』都市内部では、貴族の地位で区画分けをしている・・・国王様と血縁者、大公様を除く公・侯・伯・子・男の五爵によって区分けしている。まぁ簡単に言えば五つの身分によって区画に分けている訳だな。」


都市内部に馬車を走らせるアッシュさんが俺の為に説明をしてくれた。


「だが、君達には我々の本部へ連れていく・・・何処で目を光らせているか分からないからな・・・そこである御仁と会ってもらう・・・。」


「ある御仁?」


俺の言葉に一同お互いの顔を見合わせる・・・、アッシュさんの表情からも読み取れない所を見ると彼本人も今回は『お使い』だった様子だ。


(この国のエース様でも分からない・・・)


だとすれば・・・王族レベルとしか考えられない・・・。


「少なくとも、王族では無い・・・この国は民主国家・・・王族はお飾りみたいなものさ・・・安心したまえ」


とほほ笑んでいた。そんな彼の回答にネイア姫が口を開いた。


「あの・・・聞きたいことがありまして・・・。」


「ダルク侯爵の事ですね?彼女は山派貴族の筆頭・・・このような事態は鑑みれば・・・。」


ネイア姫が頷いた、ヴィラはハッとなった。ネイアの従姉で、ダルク・サーペント侯爵・・・。

「実は・・・侯爵様は現在議会を始め、執務の殆どをお休みになられております・・・。急病との事で・・・先月から今月までずっと・・・病床に臥せっております・・」


アッシュさんが、神妙な表情で語った。



-24-


セントナイツウォーリアー本部、この『サーヴェランス』の治安を一挙に引き受けている治安一組織の本拠点だ。


概観は厳密で荘厳さが色濃く現れ、無機質なディストピアを感じさせる・・・。

内装も内装で装飾的な造りは一切合切廃し、テカテカに磨きあがった壁や天井。床は真っ黒い大理石に近い素材で埋まっている。


アッシュさん先導の元、本玄関から応接間へと案内されていく。

無言のネイア姫はさっきの問答で堪えたらしい。一旦アッシュさんが離席し、応接間で俺達は待機する事になる。


「大丈夫か?」


俺は声を掛ける・・・流石に強くなったとはいえ、メンタルは15歳の少女だ。自分を溺愛してくれた人が知らない内に病床に臥せっていると知って相当なショックを受けていたのだ。


連れ添う様にミスティアが心配そうに見つめる。彼女は無言で辛辣な表情を浮かべていた。

一刻程して再び応接間に、アッシュさんが入って来た時は後ろにもう一人・・・頭からフードを被った性別不明の同伴者が現れた。


身長はあからさまにアッシュさんより長身で大柄、マントの隙間から漏れた独特の強い皮の匂いと音が漂っており。俺はウッと眉間に皺を寄せ、ヴィラが顔を顰めた・・・。ネイア姫はアッシュさんに現状の情報を確認する・・・。


「統合総会議堂での議会には、ひと月前から現れていらっしゃらない・・・だとすると・・・山派の今の頭目は・・・ガボネ・ガボンネ伯爵様ですね・・・」


「えぇ・・・例の『重鎧士』も彼とその一派が圧しています。」


アッシュさんの返答に俺は『重鎧士』というワードに反応した俺。

不躾ながらもネイア姫に許可を得て例のスケッチを見せて、聞いてみた。「ひょっとしてこういう奴か」と・・・。


「よく描けてるな・・・大凡アタリ、っていうかもうちっと厳つくて、実物はずんぐりとしているけどね・・・。」


そう、アッシュさんの手に取っているスケッチの紙を後ろのフード姿が手を差し伸べる・・・。アッシュさんは後ろのフードの人物に事も無げに渡す。


「これは・・・中々見事に描けてるわねぇ・・・彼の言う通り・・もうちょっと不格好よぉ~?」


-25-


「おかぁさま?!」


その声を聴いて驚愕したのはヴィラだった。頭からかぶった厚手のマントをズルリと下す・・・。一気に皮と強烈な程の香料の匂いが漂う。


「ゴメンナサイねぇ・・・こっちも色々大変でねぇ・・・」


ヴィラと負けず劣らずの、ドギツイエロボンテ姿だった。

なんせヴィラの様なひどく引き締まった、アスリート体系という色は内に秘めており。成熟し成長したらこうなるだろうと言う風格が漂う。


顔立ちの雰囲気は、ヴィラの持っている生真面目成分を払拭し。

放蕩な感情が生々しい程に垂れている表情は酷く印象深い。目元はイやらしく男を見る目を帯びており、眼光は鋭い獣性と性欲が帯びていた。

口元はやや締まりなく厚ぼったい唇は酷く濡れており、舐め擦りまわる舌先が良く姿を見せていた。


髪型は娘そっくりの縦ロールに癖の強いウェーブ、髪色はヴィラよりも濃い金色の髪色。そしてヴィラの肌色よりより焼けた褐色の色合いとの強いコントラストが性欲の強烈な匂いを漂わす事に一際強く押し出していた。


「貴方がレージ君ね?うちの娘が気に言っていると聞いて興味持っちゃって・・・でぇ!アッシュ君にお願いしちゃった!」


テヘッと言わんばかりの軽いノリだ。声もハスキーさよりやや低い声色が色気を醸していた。


そして娘と同じ首周りの重そうな首輪は金縁取り。垂れた輪っかは人間用というよりガチで家畜用って言わんばかりのサイズだ。首輪から伸びた皮ボンテのベルトが亀甲の様に、美熟女淫獣の肢体を緊縛している。


少なくとも前世の記憶でも、こういう体系はエロフィギュアのレベルしかお目にかかった事が無い。


身長は俺よりちと高く、肩幅は俺より一回り細い。

下品にも、肩幅よりもデカい胸部の特大スイカが、ズドンと垂れており。その数値は目分量でミスティアのそれを凌駕するだろう。見事に乳首はヴィラと同じデザインでお揃いにしている。


流石の俺もそんな特大スイカで出遅れて反応する。


「ヴィラの・・・お母さん?!・・・若い!!」


ヴィラのムッチリとした肉質感は、母親にも健在で更に経産婦特有のボテりとした下腹部に臍の凹凸。そこを撫でながら、ニコニコしながら心底嬉しそうに微笑みながら。


「アラそう?うれしぃい!!お腹の方がちょっと気にしているのよねぇ~!」


二の腕のベルトから指の先まで黒革ボンテグローピング、太もも半ばから足の爪先。双方の防具には、ビッチリ真っ黒皮と金縁の刺繍の模様を入れていた。


「ちょっとレージ殿!!ジロジロ見すぎです!!もうちょっと空気を読んでくださいな!!」


「アラアラ・・・このコったら・・・母親に嫉妬して・・・まったくもう・・・」


ヴィラの強烈な突っ込み、母親との文字通りの板挟み。

俺は板挟みになりながら、ちょっと自分でも情けないと痛感していた。

押し問答も程々にし、ネイア姫にヴィラの母は向き直った。


「ネイア姫・・・ダルク侯爵様は大丈夫です、ただ状況的に動けないとの事・・・私はこうしてきたのは今回の一件で接触してきたのです・・・。」


ネイア姫の前で毅然としたヴィラの母親の態度に驚く俺。彼女はこう言葉をつづけた。


「私・・・金狼子爵・・・ラヴィラ・ヴィギュネィ・ヴィシャ・・・サーヴェランスとヴォルガングの国交関係の危機をお救い下さい・・・。ネイア姫・・・クラン白竜ナーガの皆さま・・・。」


彼女は俺達の足元で跪拝した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る