#3  世間知らずのまんまだと色々な所でこまるよね


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『レイグローリー』から『サーヴェランス』へは『三国街道』を下っていけば、一週間もかからない。それ位交通の便が良い、やはりインフラ整備された道には需要が高い。


オマケに定期的な騎兵の巡回もあり大きなトラブルは皆無だった。

とはいっても、今回はフォルを連れての同行は任務上あまり合理的ではなく。『ドーニンドー商会』から長距離仕様の大馬車を用意し、表層面は一般的な集団客を装う事にした。


一般旅行客を同行されれば巻き添えをする可能性もあり。ていの良いギルドから『サーヴェランス』へのギルド依頼を受けたベテラン冒険者達と同伴する。


自衛力のある彼らなら、大丈夫だろうと言うルイーンさんの発案である。


そんな馬車で列を成す光景は、夏の風物詩だ。

馬車に揺られて、レイグローリーのある高原を下り、『三国街道』へと合流し更に南下する街道をゆらゆら揺れていく。


その間は、旅籠街で、だらける様なちょっとした旅行気分へ向かって行く。

ちなみ旅行気分という揶揄は、アルフレッドから揶揄されて言われたからだ。すごい嬉しそうに、金貨をたんまり入った袋を持たされた。


『レージ様。この金子はヴォルガングで多く使う事でしょう、前もって用意しました。大変な任務を承った身でしょうから・・・色々入り要かと・・・。』


任務内容は秘匿だったが、それを何処で知ったか分からなかった。



俺は、このアルフレッドの言葉の意味を履き違えている事に気づかなかったのだ。



「・・・・?」


「どうしました?」


俺が考え込んで。

上の空が気になったネイア姫が声を掛ける、不思議そうでたまらないらしい。

馬車にはクラン面子共々が、俺の顔を見る。


「まぁ・・・男の人ですから、大方ヴォルガングでの遊びの算段でしょうに・・・。」


如何にも不機嫌なヴィラが口を開いた。その意味が全く理解できない俺の顔。


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「ソレは無い無い・・・いやぁレージ君だよぉ?」


真っ先にそれを否定したのがハルーラ、俺は彼女の真意が理解できず顔を向ける。


「そーだス・・うちの職場の面々の男衆ならまだしも・・・」

「っていうか、世間知らずなレージ君が『ヴォルガング』の実情を知っているとは思えないし・・・」


ダルダとハルーラが一緒に「ねー」っと意気投合している。

ヴィラは不満そうに外套越しで腕組み足組し不満そうだ、ネイア姫ははっとなり沈黙し。ミスティアは顔真っ赤だ。


「・・・??」


ん~~~~・・・どういう事?

たぶん、酷い誤解を受けている様だ・・・。奥にいた一介のギルド依頼から同伴した面々がベテラン勢がくすくす笑っている。


「ヴォルガングっつったら、娼館街がウリよ」

「獣人も多いけど色々と多種多様な面々が居るんだぜ・・・いがいとなぁ・・・」

「耳長なんてレアだがな・・・しかしヴォルガングっつったらそれか・・・」


「闘技場かぁ・・・あそこも熱い・・・あそこに出向いて一旗上げようとする奴も多いしなぁ・・・」


と・・各々がヴォルガングの名所を教えてくれる、彼らが何回か『ヴォルガング』や『サーヴェランス』へ出向いた話を掻い摘んでくれる。


「サーヴェランスじゃぁ・・・旅籠の料理だよなぁ・・・美味いぜアソコはなぁ・・・」

「あの国の旅籠宿なんて、風呂が完備が義務だから、滅茶苦茶以後心地が良いんだぜ・・・。」

「その分、仕事は殆どお国様がやっちまうもんだから、長い出来ないのは玉に瑕・・。」

「そうそう、一番の名所っていえば『アレージョア』だな!」


その言葉に、ネイア姫がびくりと反応する。


「水没の街でな、船で移動する珍しい街さ・・・色々不便だけど観光地よりちょっと宗教色が色濃いけど・・・」


「悪くない街だぜ・・・見て回る街としてならアリだな!!」


笑いながら彼らは話し合った。

ルート的には『サーヴェランス』からというプランもあったので俺は聞いてみた。


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「サーヴェランスは、どうなんですか?」


俺の言葉に面々は見合わせ顰めた。っていうよりお前は何言っているんだと言う顔になっていた。

「オイオイ、黒耳長のお嬢ちゃんの言うとおりだな・・・」

「マジモンの世間知らずだな・・・」


「『サーヴェランス』はどっちかっていうと貴族の街さ。」

「上品にも娯楽もないしほとんど周辺の町々から物資を搬入して成り立たせる都市なんだぜ?」


「市民の娯楽と言えるものもねぇし、息が詰まっちまう。都市としてはご立派なんだが・・・」


そんな話をした途端に、空気が重くなる。ネイア姫が口を開けて俺に話しかけた。


「彼らの言う通り、『サーヴェランス』は貴族都市と言われております。それ故に入る事は愚か、警備も厳重で非常に管理された都市と言われます・・・。」


「管理・・・?」


ネイア姫が頷いた。

沈痛な面持ちをする彼女に『ディストピア』という言葉が浮かんだ。


「あれ?でも、あの国って市民にも政治の介入権もあったよね?」


確か・・・民主で議題を進め固めてから、次に貴族階級の者達が出資を兼ね合いで詳細を研磨するという行政システムを取っている・・・学校の授業で聞いた事を思い出す。


「そうね・・・でもそういうまつりごとには危険がつきものなの・・・」


成る程・・、政治に準拠する傾向で貴族らの自由を放棄した。貴族管理の社会を形成した・・・そんなイメージが沸いてしまう。

彼らが思い出したかのように『サーヴェランス』思い出話をし始める。


「っていうか、最近じゃぁ厳つい『重鎧士』っていうのがいてなぁ・・・」


「ありゃぁ驚いたぜ・・・俺達よりこーんなに大きな獲物を振り回して・・・」


と両手で振って、その大きさを表現する。

『重鎧士』というワードに皆、ネイア姫に顔を向けた。

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