#10 昨日の今日で大騒動で尻拭いはしないといけないよね
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翌朝、アマチの中でも大規模な民間食堂。そこを『三国掃討』の部隊が貸し切っていた。アマチの食事は魚メインでご飯に近いルプアと言う主食にしている。俺はシャクル講師に誘われて、打合せも兼ねて話をする事になった。
「まさか、ジーベルが司令官とはね・・・私が出てきて正解だったよ。」
「顔見知りっぽい様ですが・・・?」
「アイツは家柄だけ・・・いや・・・周りの太鼓持ちで出世した無能だよ。裏じゃぁ色々奴隷商紛いの事もしている。要注意人物。一度『パンドラ』の手で投獄されたんだがね・・・」
吐き捨てる様な言い草をするシャクル講師。聞けば奴も・・・特にミスティア絡みで大きくかかわっている事を暗に俺に伝えた。二人で朝食を誘導されたのも、デリケートな内容と察し納得する。
「魔眼持ちの彼女に、ジーベルはご執心でな・・・2年前にミスティアを助けた際は彼女は心神喪失・・その上から妾にしようとしていた」
「うえぇ・・・気持ち悪ッ・・・」
「だろぉ?アイツは、彼女の施設の子供を人質をとって犠牲にね・・・。私が保護した時は、人質の子らは別の施設・・要はジーベルは約束を無視して垂れ流しよ・・・」
シャクル講師は毒を吐く様に続ける。こういう行為の気持ち悪さは、どの世界も同じだ・・・。
「ジーベルは彼女だけでも取り返そうと動く・・・わざわざ、ここまで出張った理由は、それしかない・・。あいつは内政で踏ん反り返る、デスクワークなんだが・・・ここに来て急に出て来たからな・・・非常にわかりやすい・・・垂れ流したのはテタルだ。」
俺はふと疑問に思った・・・
「ミスティアはシャクル講師の事を知らないようですが・・・」
「いったろ?『パンドラ』の一員なのさ・・私の素顔を彼女は知らないのさ・・・」
シャクル講師は肩をすくめて笑った。トレイの食器の上が奇麗になった頃合い、唐突な叫びと爆音が響いた!!
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「あそこは・・・!!」
俺とシャクル講師が飛び出す。皆も騒動に騒然としていた、狼煙のような煙が噴き出していた。
「あそこは・・・確か検分に置いた魔獣のサンプル・・・」
「大変です!!例の飛行魔獣が復活して・・・」
「なにぃ!?」
伝令の兵士の一言で俺とシャクル講師が駆けだす。人込みを縫って駆け付けた先は、散々な状況だった。壁や床に叩きつけられた、魔導師ら兵士ら、騎士たちが応戦。
中央に立っていたのは、死んだはずの魔獣が立っていた。しかも、いとも簡単に奴は騎士たちを捌く。
「詰めが甘かったか?」
「いや・・・君は確かに奴を倒した・・死亡も確認した・・でも・・外見が変化している・・・」
確かに黄色い蜂を彷彿とした外見とは異なり、その体色は『黒』だ。
その姿は禍々しい程に黒く、厚い外皮の隙間から赤黒の筋繊維が見え。蜂の目もぎょろっとした異質な風体をしていた。羽も黒く染まっており、全身から甲殻的な生命体に進化した様な印象を漂う。切り落とした筈の両手の爪は進化し、鋭い鋸の様に刺々しく、蛇腹の様にウネウネ動いており。
そこから青白い放電を放つ。
「伏せろ!!」
俺はシャクル講師の頭を抑える、蛇腹の鞭が一瞬に横一線の薙ぎ払い。放電と物理の合わせ技をしてきた。周りは閑散としていたが、動けない者達は追い打ちを喰らう。
これ以上はマズい!!・・・俺は駆け出す。即抜刀し接近する。
「クソ!!」
黒化魔獣はそれと見抜いてすぐ飛び上がった。蛇腹爪を俺に仕掛ける、それを俺は切り払った・・が。
切断面からズルリと生えて再生する。
「なにぃ?!!」
「再生した?!」
再生能力までは看破できなかった俺は咄嗟に攻撃を防ぐ。飛行魔法を展開し飛翔した、周りのどよめきを気にする暇はなかった。
「げぇ!!飛んでる!!」
「なんだアイツ!?」
黒化魔獣は鞭を揺らし間合いを警戒する、しかし更なる脅威が重なった。凄まじい程の超音波の様な音を発生させた、その音は皆驚き耳をふさぐ。それの脅威を知るのは暫くしてからだ。
「なに!!」
「これは・・・・!?呼んでる?」
「大変っ!!アレを見て!!」
魔力知覚のある俺と、ミスティアは驚き。目の良いハルーラが指を指す。その先には無数の影。どこからともかく黄色い蜂型の魔獣がやって来た。それだけにとどまらず、黒化魔獣は下腹部の膨らみの針を飛ばすと蜂型魔獣を撃ち込む。
「同族を・・・」
「まさか!!」
こういうパターンは、洗脳か寄生だ・・・。打ち抜かれた魔獣が患部を肥大化し今度は頭部が破裂。素早くその個体を『マジックブラスター』で狙い撃ちするも、黒化魔獣の蛇腹鞭がそれを吸収してしまう。
破裂した頭からは蛇腹の爪が伸びていた・・・。
「はっ!!学習をするか?」
「いやぁああああああ!!!」
一人が悍ましさの余りに悲鳴を上げ。それが合図で、わぁッと逃げ出し始める。
一部の学徒の懸命な先導で閑散とする。頭部が破裂した魔獣は、黒化魔獣とは異なった個体へと変化し生命とは言えない従者へと変貌した。
「レージ君?!」
ここぞとばかりに悪い報告が続く。グランシェルツの別動隊の斥候からの伝令兵がやって叫ぶ。
「大変です!!緑蟻獣と赤蟻獣の大群が
黒化魔獣の行いが一気に呼び水になったようだ。
これはマズいぞ・・・。
四の五のしていると、魔獣が一気に襲い掛かって来た。
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事態は騒然となった、パニックと言うのが一番怖い。
冷静に判断できない人々を手隙の学徒が誘導する。
蛇腹頭の蜂魔獣、黒化魔獣の連携戦闘は恐ろしい程に出来上がっていた。特に電撃連携を駆使し、空中から地上への直接攻撃をわざわざ狙ってやがる・・・クソ!!
「コイツ!!ワザと・・・!!」
蛇腹を斬り捨てても即再生、蛇腹頭も斬り捨てても即再生。斬っても斬っても再生する。
「喰らえ!!フレイムボール!!」
「いけぇえええ!!!バーナーバーン!!」
「切り裂け・・・・ウィンドスラッシャーーーーーー!!!」
「とどろけぇえええ・・・・・ブレスターーーーーーァァアア・・・フレーーーーーーム!!!」
「唸り狂え!!ウォーーーターーースラッシャーーーー!!!」
前線では緑蟻獣と赤蟻獣の混合攻撃を魔法で防御し相殺させる。魔導師団60人による後方支援と、前線特化に繰り出す騎士と傭兵の混合部隊がコレでも負けじと突撃する。
学徒掃討部隊数、前衛部隊30。総員数200人。対する魔獣軍勢は、1200頭+飛行魔獣と言う大所帯だ。しかし、一番の血気盛んなグランシェルツ騎士団は誰よりも突貫していった。
「アマチを守れ野郎ども!!インテリに負けんじゃねぇえええ!!!!」
「うぉおおおおおおおおお!!!」
「魔獣共め!!ブッコローーーーース!!」
一気に乱戦と化す。
カリスとヴィラ、ネイア、ダルダの四人が切り出して突貫していく。
「田吾作!!あんのやぁあっろぉ?!僕より目立ちやがってぇ・・・はぁ!!『戦刃』!!」
飛ばした『闘刃』が一貫して突き破っていく。後ろで爆破が起りそれが連鎖し一帯に爆破が起る。『緑蟻獣』の爆発液の誘爆だ。
「獣牙斬!!・・・街に被害を出さない様にセーブして戦っている?あの男・・・」
後衛部隊の護衛に回ったヴィラは俺の戦いぶりを不信がっている。
「く・・・螺閃輪で対処しているようですが・・・幾分不利な事態です!!・・・火焔膜!!!」
後衛と魔獣の大群との間に炎の一帯を作り出し壁を作る。そこで一息ついた面々はお互いの面子を見合わせて驚く。
「あれ・・・?ミスティアさん?どこだス?」
「え・・・?」
ダルダの言葉にハルーラが驚く。
そう・・・誰もミスティアの姿を見ていなかったのだ・・・。
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