#1 前世でダラケまくっていたから厳しくやっていってもしょうがないよね

-4-


俺は前世では劣等生、ブサイク、低身長のド陰キャロードをぶっちぎっていた。


自業自得である、これを戒めに、俺はこの世界では必死にやっていこうと考えた。


赤子から3年、俺はしっかり地に足を立って歩く様になった。歩ければどうにでもなる。最初にどうすれば?出来る事からやるしかない、母から言語を始め四則演算の勉学を傍らに家の手伝いを率先してやっていく事にした。水汲み、掃除、草むしり、家事、洗濯、お使い・・・何から何まで俺はやっていった。言われることは全部やる、咎められる事には理由があるだろう。


「おまえの両親エルフィとラグナの二人の言う事を聞けばいずれ、魔法、そして剣術を教えてくれるだろう。」


村最年長で、鍛冶屋のガラムがそう諭す、ガラムはどちらかと言えば道徳の先生だ。ガラムの言葉は言葉が重い、最年長と言うのもあるが父、母と付き合いが長い。それ故に息子である俺を諭し理解させる仲介役。言葉足らずで未熟な両親の梁のような役目を張って出てくれる。

「そうなんだ・・・・え・・?魔法・・・剣術?」


確かに家には剣や何冊か不思議な本や杖が置いてあった。


それは触ってはいけないと言われていた、だがこうやってガラムに直接言われると異世界に転生した事を実感する。俺は今の自分で必死過ぎて失念した。


「なんだ?嬉しくないのか?」

「やっぱり、そう言うのって覚える必要があるのかな・・・って」

「ふぅむ・・・難しいのう・・・世には理不尽が付きまとう・・・」


ガラムは髭を扱く。彼はまるで自身の経験の様に語った。


「だが、お前の両親は儂なんかよりずっと強い。覚えて損はない、見聞きし従い、信頼を勝ち取り、そして学びなさい。それが良い。」


ガラムは愁いを帯びた、ひどく悲しそうな顔をした。何故だ?


「・・・」


何かあったのか・・・聞こうとした。でもやめた。まだ子供の俺には聞いてはいけない事だろう、まだガラムは愚か産みの両親から技術を教えてもらっていない。きっとまだ早い・・・、今は・・・。


母の使いの途中だった。俺は一礼して、家の手伝いの続きを始めた。




-5-


俺は5歳になった。


1年前。母が、俺の両手足に変な術を掛けた。

「封印環」というらしい、これをかけると魔力の制限を受け体自身の負荷が大きくなるそうだ。それを付けて今までの生活をしなさいと言われた。


家の手伝いを言われなくやり続け、朝の食事前に水汲みに繰り出し、食事後に掃除と草むしり、昼までには麓の村まで下山しお使いの仕事。


余裕のできた時間で、

午後から日毎に母の魔術の知識、耳長のサークと狩りや自然の知識、アージュの農耕の手伝いや薬学や医学治療の勉学というスケジュールだった。

それが終われば父と日が暮れるまで走り込みを始める。


最初は余裕だと思った・・・しかし、日を重ねると一気に体力がガクッと落ちる。一週間も経つと、それは虚弱体質化したかのようにフラフラだ。




「はっはっは!!どうだ?母さんの封印環は絶大だろ?!」

「???・・・ど・・・どういう事????」

「エルフィも実の息子に酷いことするわね・・・高位の封印環を施すなんて・・・」

「??!!・・・・・あっ・・・」


俺はビックリした、日頃の疲れが取れない疲労が溜まりに溜まっている、何故だ?!改めて考えたら母の施した封印環の所為と気づくまで一週間。随分と掛かった。アージュの顔はよしよしと撫でてくれた。


「う~~~~ん・・・まだまだ・・・」

「レージ無理をしなくていい・・、それに俺の手を見なさい。」

父ラグナの手には俺と同じ封印環が三つ、備わっていた。体力は半端ない。フルマラソンをダッシュで走っても息が上がっていない。信じられなかった、俺も走っていたけどコレは桁が外れる、という言葉を思い知らされる。

「嘘だろ・・・ひえぇ・・」

「いやいや、一週間、耐えきっただけでも凄いもんだ、大の大人だったら三日で音を上げる、それに比べたら、お前は一週間、それを耐えきっている凄い事だ。誇っても良い」

「アラアラ、息子に厳しくするつもりが甘々なお父さんになってしまったわねぇ・・・生まれて間もなくは俺は誰よりも厳しい父親になる!!・・・なぁんて言っていたのに・・・。」


アージュの意地悪な言い草に父ラグナは顔を真っ赤にする。どうやらこの父、尊大で厳格な父親像を目指していたらしい。


だが俺は内心、この封印環を使った修練方法に可能性を見出していた。前世での甘々な自分をぶち壊したい、そう思っていた。



-6-


封印環を施した生活は最初は一週間中、1日外す。そう言う決まりにした、そうしないと自己治癒回復能力が発揮できないらしい。

成る程、封印環って言うのは自己回復の抑制や、魔力の回復に大きく及ぼす効果がある。それを施すのは基礎体力があって出来る事で、それが出来ないと言う事は前衛職という職には就けないらしい。


厳しい・・・流石異世界・・


「いったん外すのは反動を利用して、自己回復力を高める効果もあるのそうすると、封印環を付けていても徐々に回復するのよ。」

母はそう言った。俺の健診をしてくれている、アーシュが付け足す様に口を開ける。

「逆に封印環を施しっぱなしだと、逆効果になる最初は一週間周期で体内の魔力を循環させることで身体と馴染むようになっていくわ。コレは魔導師にも通じる修練方なのよ」

「え?魔導師もこれ施すの?」

驚く声に母が口を出す。

「根幹的に体力が無いとそう言う職に就けないわね、王都や都市部の温室育ちの連中はそう言うのは関係ないでしょうけど」

珍しい・・・今の母には言葉にトゲがあった。父親に対する嫌味とは違うトゲ。マイルドではない、心底毒を含んだ言葉だ。どうした我が母よ?

「・・・」

「とりあえず、週一で一回外して、魔脈を診ていきましょう、そうするとね、魔法も新しく覚える事があって楽しいわよ。レージ。」

俺の絶句っぷりにアージュが取り繕う。

「よし・・・父さんみたいに三つ・・・いや五つ付けてもへこたれない様にしなきゃ!!」

「あの人以上の脳筋にならない様に、確り勉学魔術も学んでくれなきゃ困るわよ、あの人魔法はさっぱりなんだから」



あぁ父よ、女子衆が貴方の悪口を言っております・・・


「ブエッキュッシュ!!」

「オイ・・・ラグナ・・・クシャミする際は顔を反らせとあれほど・・・」

「スマンスマン・・・サーク・・・どうも俺の悪口言われてるな・・こりゃぁ・・・」

「絶対脳筋って言われてるな・・・」

「本当の事だからな、顔も俺に似ず母に似て良かったよ・・・。」

「だが目元はお前似だ、お前の目は良いからな。」

「サーク、あんがとな。」


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