まくあい

 その後一行は街に降りて、揃ってご神体を奉じに、そして、肝試しに参加しに、真神神社へと参じた。

 神官たちの反応は、複雑なものだった。まずもって、亀蔵と鶴吉の揃いの顔を見て、怯えた顔で後退る。それから、万兎羽に気づいて、物欲しげな顔で彼に擦り寄った。

「これはこれは、土御門殿。あの、こうしていらっしゃったと言うことは、例のものは見つかったということで宜しいのですかな? その、期待させていただいても?」

「氏で呼ぶなって、何回言ったら覚えるのやら。全く。例のもの、ね。はいはい、君たちが失くしてしまったご神体なら、ほら」

 万兎羽はうんざりとした投げやりな口調で、手にしていた木彫りの犬を神官たちに放った。神官たちは、それを慌てて受け止める。

「いやはや、これはどうも。しかし、いくら土……万兎羽殿でも、ご神体の扱いは気を付けて頂けますと……」

「紛失した上で、素知らぬ顔で宮移しをするような不届きものよりは、心得ているつもりだよ」

 苦言を呈する神官たちを鼻であしらって、万兎羽は虎丸を横目で見た。

「それから、一応神体探しは彼にも協力してもらったし、俺に礼を言うなら彼にも言っておけよ」

「偉そうに言うが、貴様は礼節を果たしたのか?」

 神官たちに上から指示をくれる後輩の様を見て、鶴吉が呆れたように言った。

 そうして、神官たちはようやく藤野屋三人組を見る。そうして二人の老神官は、虎丸を見止めると、あからさまに眉を顰めた。

 虎丸は先んじて頭を下げて言った。

「あの、探してた犬……こいつなんですけど、見つかりました。有難うございます」

 すると神官の一方が、高圧的に言う。

「はあ、その小汚いのが。それは、うちの境内では見つからない訳ですな。まあ、土御門殿の力添えをしたことについては、礼を与えますぞ。名誉に思うとよろしい」

 もう一人の神官も、乗っかる様にして言葉を続ける。

「それよりも、そちらの不浄の髪は、うちには少々相応しくないと以前もお伝えしましたぞ。なるべく早くお暇して頂けますかな」

 蛇介の眉間に青筋が浮く。仔犬は虎丸の腕の中でぐるぐると唸っていた。しかし、神官たちは、それ以上藤野屋三人組に取り合うこともなく、白髪の警官に向き直る。

「それで、土御門殿、お貸しした真神の姿絵は……?」

「ああ、それなら蛍と共に旧真神寺の地面の下だね。真っ二つに裂けて」

「そんな!」

「安心しなよ。別に真神の分け御霊は、そんなことを気にしておられない。蛍の始末には必要なことだったしね」

「は、はあ、まあ、土御門殿がそうおっしゃるのなら……仕方ございませんな。有名な絵師に頼んだもので、かなり高価なものなのですが、仕方ないですな」

「仕方ないね。相応の対価だ。蛍が蔓延り続けるよりはましだと思えよ」

「そ、そうですな……」

「さっさとご神体を収めに行ったら? 長らく地下に放置されて、ご立腹かもしれないよ」

 そう脅されて、神官たちは飛び上がる様にして木彫りの犬を抱え込む。

「さ、左様ですな。それでは私たちはこれで……」

 そうしてそそくさと去っていく神官たちに、鶴吉は憮然とした顔で言った。

「本当に腹に据えかねる奴らだ。呆れて物も言えん。我々と市民とで対応を変えているのだな。神職に胡坐をかきおって。なんという日和見どもだ」

「咎めるべきなのでしょうか……けれど、あの様子ではいくら言っても暖簾に腕押しの感でございますね」

 亀蔵も兄に続いて憂うようにため息を吐いた。万兎羽は神官たちの去って行った方を見て舌を出す。

「奴ら、きっと向こうで、今度は俺の悪口でも言ってるよ。全く、幾らへいこらしたって、他人への態度を見れば、きっと俺にだって裏で同じことしてるって分かるのに」

 そんなやさぐれた後輩の言葉に、鶴亀兄弟はその肩を叩く。

「そうだろうな。しかし、奴らの戯言など気にするな」

「そうですよ、万兎羽。虎丸さんを巻き込んだことはともかく、街の異変を収めようとした貴方の行いは、警官として間違っていません」

 けれど、とうの万兎羽はけろりとした様子で言葉を続けた。

「もちろん、気にしませんよ。俺が懲らしめてやろうなんて思わなくったって、近い内奴らにゃ天罰が下りますから」

「天罰……? ええ、でも、神様はどこで見ているか分かりませんものね」

「ええ。思っている以上に近くで見ているもんですよ。今から取り繕って、ご神体を大事にしたって無駄。神の意向を無視した宮移し、選りにも選って善悪を見極める神の社で悪だくみ、挙句の果てに、神の差し添えに喧嘩を吹っかける始末。三拍子も揃ってるんだから、早ければ今夜あたりにも」

 そう言うと、万兎羽は虎丸に向けて、あるいは彼の腕の中の仔犬に向けて、ぱちりと意味ありげな目配せをくれた。

しかし、そこで蛇介が一歩歩み出た。

「まあ、神が罰してくれるって言うなら、そっちは任せるとして。とは言え、人にできることはやっておきましょう。先に肝試しの方、言っておいてください。すぐに終わらせて追いつきますので」

 そう言うと、蛇介は神官たちを追っていこうとする。虎丸は警戒したように、そんな彼を引き留めた。

「おい、何するつもりだ? まさか、喧嘩とかしないよな」

 蛇介は、警官たちをちらりと見遣ると、虎丸と龍之進に顔を寄せ、二人にだけ見える様に悪い顔をすると、二人の耳元で囁いた。

「そんな頭の悪いことはしねえよ。殴る蹴る仕置くは俺の仕事じゃない。それこそ神にでも任せるよ。俺は、罰するんじゃなく、取り立てるのさ。具体的には、手間賃とか、迷惑料とか、詫び料とかを」

 そう言い残すと、蛇介は今度こそ、止める間もなく颯爽と走り去っていった。相手が暴力と無縁そうな老人のせいか、生き生きとしている。

亀蔵が、「蛇介さんはなんと?」と聞いて来たので、虎丸は曖昧に笑い、龍之進は「帳尻合わせだな。あいつが勘定の締めに何時もやる奴だ」と、あっている様なあっていない様なことを言った。

 そうして、本当に蛇介は、ほんの一時のうちに結構な額を携えて帰ってきた。いったい何と言って丸め込んだのかと聞けば、「弟が危険な目に遭って怒り心頭の兄貴を演じてやって、これは宥めないと他所でも神官の不正を吹聴して回りそうだ、と思わせてやったのさ。後は向こうから口止めのつもりで、詫び料だと払って来たよ」と得意げに言った。虎丸は、なんだか神官の方を哀れに思ったくらいだった。

 そうして、警官三人組と藤野屋三人組は、二人一組を作って肝試しに参加した。適当に小枝で作ったくじを引いて、組分けをした結果、鶴吉と虎丸、亀蔵と龍之進、そして、万兎羽と蛇介の組が出来上がった。

 蛇介は万兎羽を嫌っているのだから、これは波乱万丈だと龍之進と虎丸は顔を見合わせていたが、意外にも肝試しを優勝したのはこの二人の組み合わせであった。

 途中で予定を変更した肝試しは、捻りの無い先着順の一位を競うもので、夜に不気味な場所でやること以外は普通のかけっこの様相を呈していた。そうすると、足の速いものが有利なのだが、近所の子供に韋駄天と称される蛇介はもちろん、万兎羽が以外な俊足を見せたのだ。ちなみに最下位は、龍之進と亀蔵だった。

 そんな訳で、優勝者に金一封を渡すときの神官の顔は、苦虫を嚙み潰したようという言葉がよく似合った。

 そうして、肝試しの立役者を挟んで、藤野屋三人組と警官達は四方山話に花を咲かせた。

「万兎羽、足速いんだな。ちょっと意外だ」

「そりゃあ、脱兎だからね」

「でも、蛇介の方が速いと思う」

「事あるごとに比べてくるじゃん。はいはい、自慢のお兄さんでよろしいことで」

「しかし、足には自信がありましたし、着いてこられたのは素直に驚きました。振り切ってやるつもりで走ったんですけどねえ」

「会計さん、俺に対して取り繕うのやめてません? 先輩先輩、絶対蛇介さんって性格悪いよ」

「貴様が厭われるような事ばかりするからだ。自己の振る舞いを鑑みてみろ」

「確かに心当たりしかないけれど」

「万兎羽の身軽さは、捕り物に重宝いたします。足が速いだけでなく、蹴り技も見事でございますよ」

「しかし、脱兎だと逃げる方ではないのか?」

「おや、本当ですね。これは、どういたしましょう、兄様」

「どうもせんだろう、本当に兎な訳でもあるまいに」

 そんなくだらない話に花を咲かせてから、ふと蛇介が警官たちに問う。

「警官の皆さんは、この後はどうするんですか? うちは商品も売り切りましたし、懐も温かくなりましたので、後は祭りを楽しむだけですけれど」

「私たちも見回りを兼ねて、あちこち歩き回るくらいでございます」

「ああ。あとは、この後に神楽の演奏があるから、その手伝いに駆り出されている」

「警官って、そんなことまでするんですか?」

「職分ではないが、してはいけないという決まりも無いからな」

「市民の方に頼られましたら、お答えするのがお仕事でございます故。兄様は声が通りますから、歌い子に呼ばれているのでございます。万兎羽は、琴の嗜みがございますので」

 亀蔵の言葉に、藤野屋三人組は納得した様な感心した様な、曖昧な相槌を打つ。

「確かに、鶴蔵の声は良く通るな。多少きんきんしているが」

「私は鶴吉だ。そろそろ覚えんか。というか、貴様覚える気はあるのか?」

「微塵もないが?」

「琴なんて弾くのか……雅だな、お前」

「一般教養の範囲でしょ」

「亀蔵さんは何をするんですか? 歌? それとも楽器ですか?」

「いいえ、私がやると、どうにも調べが遅れてしまいますので」

「何もしないんですか?」

「こいつは舞をやる。拍子の遅いものなら、この鈍間でも十分役目を果たせるからな」

「亀ちゃん先輩は平衡感覚がしっかりしてるから、ゆっくりした動きが得意なんだよね」

「へえ、すごい。そりゃちょっと見てみたいな」

「ひやかしに行ってみるか」

 藤野屋三人組がそういうと、亀蔵が良いことを思いついた、というような顔で言った。

「あ、でしたら、藤野屋の皆さんも、一緒に参加しませんか? 確か、歌い子さんは増えても良かった筈ですよね、兄様」

「そうだったな。多いに越したことは無いと言っていた」

「文句も調子も簡単だし、飛び入りでも問題ないと思いますよ」

 警官たちに口々に誘われて、藤野屋の面子は顔を見合わせる。

「じゃあ、ちょっと行ってみるか?」

「ああ、楽しそうだな。声を出せばいいのだろう? 何時も客の呼び込みでやっている奴だな」

「加減しろよ。歌は怒鳴れば良いってもんじゃねえんだから」

「うむ、承知している。何度か聞いたことがあるからな」

「なら良いが……けど、歌ばっかり人数が増えても、良いんですか?」

「ああ。実は、楽器が足りないらしく、不足分を声量で補いたいそうだ」

「楽器の数が足りないんですか?」

「いや、楽器自体はあるが、弾き手が足りないそうだ。毎年有志が演奏しているそうなのだが、今年はめぼしい弾き手が軒並み蛍に噛まれて寝込んでしまったらしい」

「ああ、なるほど……」

 鶴吉の言葉に、蛇介は合点が行って頷いた。

「それで私たちにお声が掛かったのでございます。特に笛と琴が足りないらしく……万兎羽に心得があって助かりました」

「笛も足りないんですか? でしたら俺、吹けますけれど」

 亀蔵の言葉に、蛇介が手を上げる。そんな彼を虎丸と龍之進が驚きの目で見る。

「蛇介、そんな特技があったのか」

「素人に毛が生えた程度だがな。なんか好きなんだよ、特に夜に聞くと気分が上がるだろ」

「ああ、夜に口笛を吹くと蛇が寄ると言うな。あれは笛の音が好きだからか?」

「迷信じゃねえか。あと、俺は蛇じゃねえよ。名前に字が入ってるだけで」

「龍之進は、太鼓とか似合いそうだよな」

「ああ、あの殴って音を出すやつだな。まあ、打ち破ってもいいのなら」

「良い訳あるか。弁償代で折角の金が吹っ飛ぶわ」

 そんなこんなで、三人は神楽に参加したり、大道芸を見物したり、出店を回ったりと、めいいっぱい祭りを楽しんだ。

 虎丸は念願かなって飴屋の細工を楽しむことができ、満足げだった。三人があれこれ屋台の飯を味見しては、藤野屋の品目に加えられないかと話し合ったりする足元で、そのお零れをたらふく味わった一狼もご満悦だった。

 そうして祭りの夜は更けていく。


 その数日後、すっかり祭りの気配と共に夏の気配まで薄れきった昼下がり、警官たちが揃って藤野屋に飯を食いに来た。すっかり常連の鶴亀兄弟はもとより、万兎羽もその後ろに続いて店に入って来たのを見て、蛇介と龍之進は顔を見合わせた。

 虎丸だけが、何処か嬉しそうな表情でその様子を見ていた。廃寺の下で交わした約束を、一応律儀に守りに来たらしい。

 この数日のうちに、すっかり店の入り口辺りを定位置に決めた一狼が、警官たちを見て歓迎するように吠えた。祭りの日に一緒に居たことで、顔を覚えたのだろう。

 そうして、今回は大人しく、鶴吉や亀蔵に勧められるままに飯を注文した万兎羽の食事の様子を、藤野屋三人組は囲んで見守った。「何これ、めちゃくちゃ気まずいんだけど……」と悪態を吐きながら、白身魚のみぞれ煮を口に運んだ彼は、しかして目を見開いて一言言った。

「……美味しい」

「だろ?」

 虎丸が、いつになく得意げに胸を張る。その後ろで、何故か鶴亀兄弟も得意げだった。後輩が自分たちの御用達の店を気に入ったことが嬉しいのだろうか。

 万兎羽は、にやにやと自分を見つめる周囲の視線に気づいて、居たたまれないような顔をする。それから、最終的に一番強気に出れるところに強気に出ることにしたらしく、虎丸に向かって拗ねたように言った。

「なんだよ、その鬱陶しいにやけ顔は」

「いいや、別に?」

「言いたいことがあるなら、言えばいいじゃん」

「うちは蛇介も龍之進も料理はからっきしだから、お前が美味しいって食ってる飯は、全部俺が作ったものだけど、良いのか?」

「……ああ、それね。まあ、とりあえずは保留。不甲斐ないけど助けられたし……それにまあ、同じ化け物に噛まれたよしみだ。一旦忘れてあげるよ」

「何様だ貴様」

 横柄な物言いの後輩に、鶴吉が呆れたように言う。虎丸は、彼の奇妙な言い回しに、首を傾げた。

「同じ化け物……? ああ、蛍か」

「それも含めて、ね」

 そんな意味の分からないことを言いながらも、万兎羽はしっかり飯を完食した。そうして食後に、警官たちは揃ってすまんじゅうやら団子やらを一つずつ頼んだ。

 そうして、警官たちはそれぞれ甘味を嗜みながら会話を続ける。

「しかし万兎羽。お前、甘いものは嫌いだったのではないか?」

「くどい味や濃い味が嫌いなんで。でも、ここのは平気です」

「藤野屋さんのお菓子は、甘さが控えめで美味しいですものね。美味しさの秘訣は何かしら」

「それは秘伝なんで、教えられませんよ」

「左様でございますか、残念です」

「教わったところで、どうせお前は全て焦がして、同じ味にしてしまうだろう」

「炭味ね。亀ちゃん先輩の定番の味付け」

「付けようと思って付けている訳ではないのですけれど……」

 しょんぼりとする亀蔵を置いて、ふと万兎羽が藤野屋の三人に目を遣った。

「ああ、そうだ。一応君たちにも無関係じゃないし、言っといた方が良いかな。真神神社の神官達が夜逃げしたそうなので、ご報告です」

「夜逃げ? なんでまた」

「蛇介、お前、破産するほど搾り取ったのか?」

「してねえよ。俺はあくまでも、妥当な謝罪を受け取っただけだ」

 蛇介は龍之進の問いに、当たり障りの無い様な返答を警官たちにも聞こえるように言った後、龍之進と虎丸にだけ聞こえるように囁いた。

「せっかく弱みを握ったのに、そんな金の生る木を切り倒すような真似するか」

 ああ、なるほど、と龍之進は頷いた。そんな二人を無視して、万兎羽じゃ軽い調子で言う。

「いやあ、なんでもね。毎晩夢枕に怖い野犬が立って、一晩中夢の中で追いかけまわされるらしいよ。それで、げっそり窶れて、もう犬なんて、実物も木彫りも石造りも御免だって、逃げ出しちゃったんだって」

「ああ、あの神社は、狛犬も犬だったからな」

「天罰だろうな」

 鶴吉の言葉に、亀蔵も同調する様に頷く。そんな先輩の横で、万兎羽は怪しい笑みを浮かべて呟いた。

「そう、文字通りの神罰さ」 

 その時、突然一狼が、火が付いたように吠え始めた。何事かと一同が仔犬の方へ目を向けると、入り口付近で仔犬に吠えたてられて、たじたじとしている若い男が目に入る。

 蛇介がにっこりと笑みを深くして男の側に擦り寄り、その肩を叩いた。

「失礼ですが、お客様? お会計がお済でないようですが、どちらに行かれるおつもりで?」

「あ、いえ、違うんです。ちょっと忘れてただけって言うか……払います、払いますから!」

「そうですか、良かったです。お勘定はあちらです」

 蛇介が男を勘定場所まで引っ立てていくのを見守って、仔犬は虎丸の足元まで歩み寄って来る。そうして、小首を傾げて飼い主を見上げる太々しい様子からは、「おれはよくやったのだが、ごほうびは?」と聞こえてくるようだった。

「賢いなあ。こいつ、食い逃げを防いだぞ。よしよし、あとでおやつをやろうな」

 虎丸がそう言うと、仔犬は満足したように尾を振った。

「しかし、警官の前で無銭飲食を試みるとは不届きな。顔を覚えておこう」

「私たちが藤野屋の皆さんを引き留めていたから、好機と思ったのですね。私たちも気をつけなくては」

 鶴吉兄弟が真剣に反省しているところへ、きちんと勘定を済ませた蛇介が戻って来た。

「いやあ、助かった。やるじゃねえか、一狼」

 しかし、蛇介が近寄るとたちまち仔犬は牙を剥く。蛇介は苦々しい顔をする。

「ちっ、凶暴さが玉に瑕だな。客に噛みつかなきゃいいが……」

「確かに。お客さんに対しては、今のところ懐っこいけど、噛んだらことだ。きちんと教えておかないとな。でも、お前のご所望通り、番犬もできる優秀な犬だ。飼って良かっただろ」

 虎丸は、嬉しそうに言った。

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