神と仏

佐野心眼

神と仏


え〜、どうも、鬘雲助かつらくもすけと申します。


人ってぇのは誠に自分に都合のいいもんで、何か困ったことや危ないことがありますとすぐに神様や仏様にお祈りをいたしますな。

大雨が降ってあちこちにドカンドカンと落雷がありますと、途端に震えながら手を合わせて「神様仏様、どうかお助けを」となるもんです。

私の場合、最近はカカァの雷が怖くて「神様仏様奥様」なんて唱えるのが常なんですがね。


まあ、神様仏様にも色々おりますようで、一席お付き合いを。



あるとき仏様が雲海を旅しておりますと、向こうの方から長〜い白髪に真っ白な髭を蓄えた老人が杖をつきながら近づいてまいりました。


仏「もしや、あなたは神様じゃありませんか?」


神「おや、あたしを知っているのかい?この辺じゃ見かけない顔だねぇ」


仏「わたしゃ『仏』ってもんです」


神「ああ、あんたがあの有名ないつも喉元にいる方ですか」


仏「……それは喉仏!」


神「じゃぁ酔っ払いが絡んで来たときの…」


仏「それは!わたしゃ仏」


神「ああ、仏さんね。死んだら誰もがなれるでお馴染みの」


仏「あれ、ずいぶん上から来やがったな。神様だってあちこちいるじゃねぇか。八百万やおよろずの神っていうだろ」


神「あれ?あんた知らないの⁉︎あたしゃ一人だけだよ」


仏「そんなことあるかい。山にも川にも海にも神様はいるんだよ。便所にだって神様がいるくらいなんだから」


神「ああ、それね。あんた間違ってるよ。便所にはじゃなくてだよ。トイレットペーパーっつうの。あたしゃ全知全能で唯一神だから、分かんないことがあったら何でも聞いてちょうだい」


仏「ずいぶん偉そうに言いやがったなぁ。よし、じゃぁ知恵くらべといこうじゃねぇか。ギャフンと言わしてやるぞ、こんちきしょうめ!」


神「ギャフン!」


仏「早いよ!まだ問題出してねぇじゃねぇか。じゃ、問題。『無知の知』とはこれ如何に」


神「何言ってんだ、あんた。で打たれたらが出るべ?」


仏「そのじゃない!」


神「いいから次の問題」


仏「『考える葦』とはこれ如何に」


神「あんたさっきから何訳の分からんこと言ってんだ?考えるのは頭!足じゃないよ。そんなことも知らないの?」


仏「そんなことは分かってるよ!じゃぁ次、『我思う、ゆえに我あり』とは如何に」


神「当たり前でないの?あたしが思わなかったらあたしはいないもの。あたしがいるからあたしが思うんでしょ」


仏「やめたやめた、坊主に髪(神)はいらねぇ」





m(_ _)m










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