第27話 2日目 思い
林間学校二日目の夜は、キャンプファイヤーだ。
フォークダンス的なアレもあるようだが、パートナーはおろか友人すらいない俺には無縁のイベントであり、遠い世界の絵空事である。
何より、仮にも自分がリーダーを務める班に負傷者がいるのに、そんな余興にかまけていられない。
つまり俺は、
「まだ、痛むか?」
「もうだいぶ良くなった感じ。腫れてもいないし」
よかった。
つか
あとその格好な。
いくらなんでも、そのショートパンツは無防備過ぎるだろ。
ふと、夕方の
──あいつ、しつこいのよ。
あの時現れた三年生、
やけに実感がこもったその言葉が、その時の
その弟子に何かあったら、俺は──
「師匠……なんか怖い顔してる」
──どうする、のだろう。
じっと俺の顔を覗き込む
さすがにキャンプ場最奥に位置するここからでは、キャンプファイヤーの灯りは見えない。
微かに届く声だけが、その炎の存在を示すに過ぎない。
キャンプファイヤーには
そして昨夜されたという、
……考え過ぎだろうか。
すべてに違和感を覚えてしまう。
それとも普通の高校生にとっては、これしきの出来事は日常の一部なのだろうか。
「な、なあ、
「なんですかー」
「昨日お前に告白したっていう男子って──」
言いかけて気づく。
これは、越権行為だ。
師匠だからと踏み込んではいけない領域。
またしても俺は、そこに足を踏み入れようとしていた。
「すまん、忘れてくれ」
両手で顔を覆った。
今の俺がどんな表情をしているかは分からない。けれど、なんとなく今の顔を
かっこわるいな、俺は。
自ら閉ざした視界の向こう。
かすかに衣擦れの音がする。
次第に大きくなって。
音が止んだ。
「師匠、安心して」
何を?
なぜ?
頭の中にハテナが飛び交う。
しかしそのハテナも、突然感じた温もりにいとも容易くかき消された。
「私、他の人からの告白は、全員断わるつもりだから」
ちょっと待て。
意味が分からない。
他の人?
誰のほか、なんだ?
つか何故。
何故俺は、
「だから、安心して」
意味が分からない。
筋さえ通っていない。
その筈なのに。
安心してしまう。
ああ、そういうことか。
今までは無縁過ぎて、気づかなかった。
一人で何でもやってきたから。
ソロキャンプにのめり込んだのも、一人でいたいから。
誰にも邪魔されず、誰も気にせず。
そうして平和な日々を過ごしていたかったから。
しかし、気づいた。
気づいてしまった。
こいつは、何でも真剣だった。
真剣に、楽しんでいた。
俺は、そんな
相変わらずファイヤースターターだけは下手だけど。
それも何処か安心できて。
もう、認めてしまえよ。
認めれば、ラクになれる。
そうだ。
そうだよ。
俺は、
影響したい。
尊敬されたい。
すごいと思われたい。
他者からの影響を嫌ってきた俺が、
我がままで、独善的。
なんだよこれ。
全然理想の自分じゃない。
けれど、その裏の心理は分かってしまった。
俺は、
だから、関わる
あくまでキャンプというひとつのジャンルのみの、師匠と弟子。
そこだけの明確な関係性に特化させようとした。
自分の中に枠を作りルールを作り、それを厳格に守る事で防御壁とした。
だけど、そんなもん。
なんてあっけない。
結局、俺なんてそんなもんだ。
弟子入りを
でも嫌われるのは怖くて。
いつか
ダメな自分を見せたくなくて。
そんな恐怖も不安も、全部包み込まれて。
ああ、勝てない。
もう認めろ。
師匠と弟子の関係だけでは満足出来ないと。
自分で作ったルールすら守れないと。
だから俺は。
「……誰に、告白されたんだ?」
断崖絶壁から、一歩を踏み出す。
コミュ障ソロキャンパーの俺の弟子っ娘は、ビッチと噂のギャルでした 若葉エコ(エコー) @sw20fun
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