第26話 2日目 領域
夕食の時間。
俺は持参していた角型飯ごう、メスティンを持ってコテージのリビングに戻っていた。
「ごめんね、師匠」
「気にするな」
カウチソファーに座る
──あの時。
ゴールを目指して立ち上がろうとした時、
「へ、ヘビ!」
「動くな!」
急な動きは、野生動物を刺激しかねない。
それに、基本的に日本のヘビはおとなしい場合が多い。
日本にいる野生のヘビで毒を持つのは三種類だ。
マムシ、ハブ、そしてヤマカガシ。本州には、マムシとヤマカガシしかいない。
マムシやハブの毒は有名だが、ヤマカガシは近年まで毒が無いと認識されてきたヘビだ。
色はマムシに近いが……。
「それはヒバカリ、だな」
「し……芝刈り?」
それは昔話のおじいさんだ。
「ヒバカリは、その日ばかりの命、が語源」
冷静に説明する
「え、毒ヘビ……」
「大丈夫だ。毒は無い」
「で、でも」
俺は、ゆっくりと足元の石を拾って、ヒバカリの前に落ちるように放り投げた。
目の前に石を落とされたヒバカリは、すぐに茂みの中へ逃げて行く。
「はぁ助かった……ありがとう、師匠」
たまたま知っているだけで、別に礼を言われるような事ではない。
ただ、大きな瞳を潤ませて見上げてくる
なら、それでいい。
「ボクも、
新井は、戦隊ヒーローを見る子どもの目で俺を見つめてくる。
もしくは買えないトランペットをショーケース越しに見る目、かな。
「知っていたら、大概のものは怖くないぞ」
知識は力。
アウトドアでも日常でも、知ることは大事だ。
だからこそ気づくことが出来た。
こんな山の真っ只中に、水辺を好むヒバカリがいた違和感を──
夕方の出来事を回想しつつ、俺は
飛び退いた先に石か何かあったのだろう。
幸いにも、我が班のメンバーは優秀だ。
火の管理は
新井は
先生たちの話では、キャンプ場の管理棟にいるらしいが。
そんな訳で、俺は炊き上がったご飯とバーベキューで焼いた肉と野菜を持って、
つか、ぶっちゃけ
『嫁の面倒くらい見なさい』
という意味はまったく分からんが、一応は俺の弟子だ。放っておく訳にもいかない。
「美味しい!」
が、それもひと口ふた口食べ進めると、箸を止めてしまった。
「……
「だな」
メスティンを膝に乗せ、
よほど
コミュ障というのは、本当に困る。
こんな時、どんな言葉をかければ良いのか。
俺にはそれが分からない。
だから、考え無しに呟いてしまうのだ。
「
「え」
「……いや、なんでもない」
言いかけて、失言と悟る。
どんな関係なのか。
俺はそれを聞く立場ではないし、聞いて良い立場でもない。
俺と
おいそれと、それ以外の
少なくとも、
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