l'oiseau bleu

ohne Warum

第1話

口を閉じて。目も閉じなさい。肩の力を抜いて。息を止めたり深く吐いたりして。

そうすればこちらの世界に溶け落ちることができる。他の人間に招待状を渡すこともあったが、誰もこちらへ辿り着くことはできなかった。

当然。こちらに落ちれば、元の世界に戻ることはできなくなる。なので渡したチケットは、そこに描かれた可愛らしいブルーキャットのイラストを馬鹿にされた挙句に破り捨てられたの。

人々に期待することはたぶんもうないはず。でもあなたはすでに捨て去るものを無くしてしまった。なのであなたのような哀れな罪人の隠し持つ それ にとても信頼を置いている。

心配しないでいい。僕は人々の夢中になった風船には初めから興味もなく。人間の求めてやまないそれらを要望通りに見せてあげただけ。誰もこちらの姿を認めることはしなかった。なのであなたが話している目の前の男の子はこの世界には存在していない。

見えているようでその実、見えたものがこの世界には存在してはくれない。あなたがいつか彷徨った見知らぬ駅であなたの背後から気配のない視線を浴びせたあの子は僕の。

なのであなたにはこれからこの青い鳥と共に生きてもらう。

どう見たってこの子はただの青い鳥。氷の海やら京都駅の近所やら、子供が好きな場所であればどこにだって見ることができるはず。このフライパンプラネットで初めに死ぬのは哀れな蛙ども。透明な肌や艶かしい艶々に囚われた奴らは真っ先に溶けてしまう。お次は白熊。

なのでこの世界が消え失せるその日まであなたたち2人にはクルミごっこをしてもらわないと。

普通の人間であれば、おままごとの次にこなさないといけないのは紛れもないクルミごっこ。ロシアのガチガチコーヒーメーカーも喜びに震えているいかれた世界には戻れない。

あなたの死に場所はこの骨しか歩かない怖い場所。2人で仲良く暮らしてね。

それでも怖いことには変わりがないから、この雑草でも噛み締めていたらいい。甘みを感じようとそれに含まれた水は鼠たちから流れたもの。そこに夢を見るお歌の好きな鼠どもに話せばきっとあなたをまた夢に陥れることもできるはず。なので鼠には死をくれてはやらない。鼠にやるのはレタスと指だけ。歯ブラシで撫でてもいいけれど、それはご褒美の夜にだけ。日中のあの子たちはフライパンの熱から逃れながら過ごしているはずだけれど、油断をすれば日傘もろとも干からびてしまう。なので指から舐めさせる水はとても貴重。

あなたが鼠の真似事をしようとしても、それはもう無理な話。その鳥を大事にしておきなさい。あなたの憎しみを向けた両親や他の猿どもにはフライパンで焼いたそいつのもも肉を食べさせたらいいと思う。少し大きいはずだから焼く前にちゃんと捌かなければならないね。トレイに寝かせて上から優しく切り落とす。すると流れる流れる葡萄酒のフリしたただの鮮血。あなたがあの朝、大切な風船を割って流したものと同じだね。これ以上はきっと堪えることは難しいはずだから、何も言わないでおく。

あなたはそのぺんだんと仲良くネモフィラを毟る花園の夢にでも浸っていればいい。忘れてはならないのは、あなたの振りかざしたあの子供が遊ぶための鉛の棒は、実はただのペンだということ。英語を話す日本人なら始めに口にすること。初めから知っていることがとても重要だね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

l'oiseau bleu ohne Warum @mir_ewig

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る