【四通目】
”
こんにちは。
あなたに手紙を出すのは、これで四回目ですね。
日々、何事もなく、お過ごしのことでしょうか。
あなたは、四度目の私のことを、覚えておいででしょうか?
私は、あれから、人になりました。
人といっても、他人ではありません。
あなたが愛した人から産まれた、あなた由来の、あなたの子、人です。
手もあって、足もあって、目もあって、耳もあって、口もあって、鼻もあって、頭もあって、脳味噌があって、ものを言うことができる、嬉しくなったり、悲しくなったりすることができる、心がある、人になりました。
でも、せっかく人になったというのに、あなたの子供になれたというのに、あなたは、まだ母の中で漂っている私を、バラバラに掻き出して、殺しましたね。
私にはもう、これから強くなっていく骨も、これから身体を支えていく筋肉も、これからものを考える脳も、色んなものを触ることができたであろう手も、色んな場所へ歩いて行けたであろう足も、色んなことを感じることができたであろう心も、揃っていたというのに。
母から掻き出される直前まで、私はあなたの声を聴いていました。
あの頃には、もう、耳もできかけていましたから。
あなたは、やっぱり、笑っていましたね。
母は私の為に泣いてくれたのに。
あなたは、掻き出された私を、見ようともしませんでしたね。
私は、バラバラのまま、小さな袋に入れられて、運ばれて、焼かれて、灰になりました。
母は形が無くなった私の為に、祈ってくれました。
涙を流して、悲しんでくれました。
身体に、一生消えない傷を刻まれたというのに。
でも、あなたは、そんな母に会おうともせず、笑っていましたね。
あなたは、また、奪ったのです。
私の命を。
あなたに復讐する機会も。
その為に、あなたの元に産まれてきたというのに。
でも、私は諦めません。
命がなくとも、あなたに復讐してみせます。
もう、この世に生まれ堕ちることもないでしょう。
それでは。
”
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