第69話 片瀬の地蔵堂の「踊り念仏」
たちまち、うわさが広まったのでございましょう、片瀬の地蔵堂に移りますと、わたくしたちは思ってもみなかった賑わいに巻きこまれることになりました。
――かたせの浜の地蔵堂にうつりゐて、数日をくり給けるに、貴賤あめのごとくに参詣し、道俗雲のごとくに群集す。 (『一遍聖絵』)
鎌倉武士、念仏僧、禅僧、被衣姫、市女笠の女房、野良着の百姓、子守の老人、琵琶法師など、いろいろな立場の人びとがたくさん集まってまいりますので、下屋の軒を張り出して、にわか造りの場所をつくらねばならないほどでございました。
付近の豪族のご供養で踊り舞台を設け、連日連夜「踊り念仏」が行われました。
佐久伴野荘のときと同様に、「踊り念仏」の道場に紫雲が立ち、天から花が降り注ぐという奇瑞があらわれました。驚き騒ぐ民衆をよそに一遍上人さまはどこまでも冷静沈着であられ、それがまたさらなる人気を呼ぶというふうでございました。
――花のことは はなにとへ 紫雲のことは 紫雲にとへ 一遍しらず
さけばさき ちればをのれとちるはなの ことはりにこそ みはなりにけり
はながいろ 月がひかりと ながむれば こころはものを おもはざりけり
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