第32話 念仏房をめぐる嫉妬の妄念





 そうこうするうちに、もうひとつの問題が生じてまいりました。

 娘のことではなく、わたくし自身の心根に因を発すること……。


 念仏房さまとわたくしは姑と嫁でありながら、年齢は5つしか差がありません。

 いたって控え目なお方ですから、実年齢よりはいくぶん年輩に見られるきらいはございましたが、墨染めに隠されたそのお身体はまぎれもなく女の盛りであられることを、一緒に湯浴みや水浴をするとき、存分に思い知らされておりました。

 

 ――あの豊満なお身体が上人さまの目に映らないはずはない。

 

 ひとたび疑念を持ちますと、ささいな会話や視線にも疑いが湧いてまいります。


 わたくしと上人さまは超二房を挟んで親子3人、川の字に休んでおりましたが、わたくしが知らぬ間に念仏房さまと……疑心暗鬼はますますひどくなりました。


 自分の内の葛藤に耐えられなくなっていたわたくしは、とうとう絶対に口にしてはならぬことまで上人さまにぶつけ、妄想の不実を責め立てるようになりました。


 念仏房さまや超二房がそばにいないときを見計い、しつこく、口汚く責め立てるわたくしに、かつての千都さまとの確執を、ありありと思い出された上人さまは、さぞかし、げんなりなさったに違いありません。


わたくしの気鬱きうつは、季節が梅雨に移ろうころ、ますます激しくなりました。

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