第17話 秘め事の馴れ初め





 思い返してみれば、実有とわたくしは不思議な縁で結ばれておりました。


 幼いころからの遊び友だち。どういうものかわたくしはふたつ年上の実有が好きで、いつもあとをついてまわるので、腕白坊主たちから揶揄からかわれておりました。


 年頃になると、さすがにふたりとも、あからさまな親しみを見せないようにしておりましたが、それでも好意を持ち合っていることに変わりはありませんでした。


 あるとき、実有は京へ上ることになりました。

 父親の勧めで仏門に入ると人伝ひとづてに聞いたときは少し驚きはいたしましたが、世間知らずのわたくしは、出家がそう大した出来事とは思わなかったのでございます。


 むんと蒸し暑い真夏の夜、わたくしは実有に呼び出されました。

 生まれて間もなく母親を亡くし、そのあと父に嫁いで来た継母は相次いで弟妹を産んでおりましたので、家内にわたくしを気にしてくれる者はおりませんでした。


 実有は思い詰めた表情をしておりました。

 いままで見たこともないような昏い目をわたくしにひたと据える細身の肢体に、なにか得体の知れぬ凶暴なものが潜んでいる、そんな気がしきりにいたしました。


 自分で呼び出しておきながら、実有はなぜか、むっつりと黙っておりました。


 草いきれがひときわ強く匂って、沈黙に耐えられなくなったわたくしが口を開きかけたとき、大きな力がわたくしに加えられたのでございます。あとは夢中……。


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