第12話 軍神・諏訪大社も信濃




 ところで。

 信濃にはもうひとつ、諏訪大社という有名な霊地がございます。


 古来より龍を祭神とする諏訪信仰が全国的に広まったのは大和朝廷の時代のことで、蝦夷えみし征伐に向かう坂上田村麻呂が東国一の軍神として祈願したのが初めとか。


 鎌倉時代に進みますと、源頼朝、その妻・政子の実家の北条家も深く帰依され、頼朝は配下の御家人に「諏訪大祝すわおおはふりの命令は諏訪明神のお告げ」と申し渡しました。


 さらに戦国時代に入りますと、壮絶な陣取り合戦の勝利を願い、全国各地の武将たちが、こぞって軍神として諏訪大社を崇拝するようになったそうにございます。


 川中島で戦った上杉謙信と武田信玄はその筆頭で、わけても、信濃各地の豪族を攻め滅ぼし、念願の信濃守護の座を獲得した信玄は、くノ一・望月千代女を棟梁に「信濃巫しなのみこ」と呼ばれる諜報集団を組織し、行脚の合い間に各地の新鮮な情報を集めさせるなど、諏訪信仰を通じ、地味豊かな信濃の支配を試みたそうにございます。


 信玄没後、息子の勝頼と戦った織田信長は、天正10年(1582)3月3日、武田氏が尊崇する諏訪大社上社をおそいましたが、それから3か月後の6月2日、本能寺で明智光秀に討たれたのはその神罰と、もっぱらのうわさになったようで。

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