第6話

 体育の時間だ。


 ウチの学校は活動をより活発化させる為か、ニクラス合同で取り組むルールとなっている。


 体育館を緑色のネットで半分に区切り、男子と女子がそれぞれ分かれてワンマンサッカーをする事となった。


 これは相手クラスの谷脇たにわきという奴が考案したゲーム形式である。


 ルールは至ってシンプルなものだった。


 それぞれのクラスメイトが一人ずつミニサッカーコートに入り、中央に置かれた一つのボールを使ってゴールを奪い合うという、タイマン形式。要は一対一の攻防。


 一点でもゴールした方が勝者であり、以後ローテーションで同じ組にならないようにしている。


 非常に独自的な発想で面白いが、問題は最終的な得点の集計が"クラス単位"で行われる事だった。


 つまり、連帯責任である。


 弱い奴はローテーションで相手が変わろうとも、負け続けることは明白なのだ。


 一部の人間が得点を大きく落とす事により、そのクラスの欠点が浮き彫りになる。それを踏まえて、得意な奴が不得意な奴に手を差し伸べ、改善の道へと切磋琢磨する──そんな綺麗事は残念ながら起こり得ない。


「おぃぃ!お前が沢山負けたせいでウチのクラス敗北したじゃねぇか!どうしてくれるんだよ!」


「そ……そんな事言われても……俺体育苦手だし……」


「知るかァ!そんなもん!」


「まあまあ……」


 クラス内には必ず不満を垂れる奴がいて、言い返せない奴もいる。状況を見計らって、場を収めようとする奴もいる。


 そんなウチの殺伐とした雰囲気を見ず知らず、


「そうだぁ!勝った奴は負けるまでゲームを続けられるってのはどうだぁ!?」


 などと、更なるゲーム形式の向上をほざく谷脇。こいつは相手クラス、五年二組の中でもスポーツ万能な男として見られているようで──


「アイツ、サッカー部の吉野よしのじゃねぇか……勝てる訳ねぇよ……」


 ウチのクラスメイトが口々に言うのは、吉野という男。


 この提案は逆にクラスの戦力を浮き彫りにしたようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

小さな学校 ARuTo/あると @IIARuToII

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ