第5話

 上の空を見ていた。


 蒼く果てしないその世界には、チョークで擦ったようなおぼろ雲が浮かんでいる。


 霞んで見えるのは寝ぼけ眼のせいかな、なんて思ったり。狭いキャンバスの中に通り過ぎる鳥達を待ってみたり。


 確かな形は無いけれど、吸い寄せられる。そんな感覚を求めているのかもしれない。


「──二行目のここ。はい、優斗くん。答えて下さい」

「……」

「おいっ、優斗。先生に指されてるぞ」


 ふと気付けば、後ろの席の二美が声をかけてきていた。


 僕は我に返って、教科書を開いた。席から立ち上がって問題の箇所を見たものの──答えは分からなかった。


「……すみません。分からないです」


 言い終えた途端、周囲から小笑いが聞こえてくる。特に気にはしないが。


態々わざわざ、謝らなくていいのよ〜。はい、じゃあここの問題分かる人〜」


 担任の綾崎先生は承知すると、次なる解答者を募り始めた。


 綾崎先生は優しい。反面、それが裏目に出てクラスの連中から、いいようにされてしまう時があるが。


 先生の声を主として、進行する授業。


 勉強が嫌いという訳ではないが、いささか退屈だ。今日は春らしい晴天だというのに。


 外に出れないのは何かおかしい。

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