第4話

 くだらない一幕を繰り広げる男子生徒達を尻目に、綾崎先生は構わず話を切り出す。


「小学生らしくないなぁ優斗くんは」


「……これが普通です」


「そかそか。にしても、よくこんな方法を思いついたね。先生も脱帽だよー」


「単に適材適所な生徒を引きずり出しただけですよ。僕は応援団なんかゴメンですからね」


 言葉に嘘はない。


 何か立候補を募る時、クラス内には大抵、誰かしら意欲のある者がいるのだ。そいつを炙り出すには、単純にやる気を鼓舞してやればいい。それでもダメなら公平で運に左右されない投票だ。


 推薦されたり浮上してきたヤツはクラスの中でもお調子者や知名度が高い者が多い。つまり、"満更でもないヤツ"ほど浸けいる隙があるのだ。


 クラスで目立たないヤツが指名されても、晒し者になるだけであって、投票の旨を当日に伝えたのも弱者を浮上させないための措置。つまりポテンシャルという意味でも騒がし系やお調子者系はこういうイベントに採用しない手はないのだ。


 ただ、そういうヤツほど決め事の時、弱々しくなってタチが悪くなるのは確かだが。


「やっぱり変わってるね。優斗君は」

「……そうですか」


 僕は当たり障りなく答えた。

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