第3話

「にしてもよく決まったよなー応援団」


 他人行儀な声を漏らすのは四年生の時から友達の二美つぐみだ。


「お前、また先生に何か吹き込んだだろ」


 懐疑的な視線を送る二美に対して僕は、「別に何も」と返した。


 ああ、そうだ。僕は何一つ実行しちゃいない。


 今日程、学活の時間が有意義だったと思った事はなかった。開幕、先生の煽りという名の助言に始まり、鼓舞された数人の生徒が立候補。それでも足りない人員は紙ベースの投票によって推薦された生徒を起用した。


 男子二人に女子二人。選ばれたのはクラス内のムードメーカーや騒がしい連中ばかり。応援団に向いている者たちだった。


「にしてもよぉ、大抵クラスでなんか決め事する時、雰囲気悪くなるけど今回はそんな事なかったな」


 呆けた口調の二美もはたから見ればムードメーカー的存在なのだが、大枠から見れば対して目立つヤツという訳でもない。


 ♢ ♢ ♢


 放課後の事である。


 いつも通り二美と下校しようとすると、背面越しに声がかかった。その主はクラスの担任、綾崎先生。


「いやーまさかこんなに上手くいくとは思わなかったよー」


 感謝を述べた先生。その様子を見て、二美が意味ありげな視線を送りつけてくる。全く、コイツは……。


「やっぱり優斗が何か提案したんだな。お前まさか先生狙ってんのか?」


「はぁ?お前何言ってんだ。そんなわけねーだろ」


 男子生徒のやり取りを微笑ましく思ったのか、綾崎先生が柔和な笑みを浮かべていた。


「じゃ、俺は先に帰るからー!お幸せにー!」


 二美はからかいながら教室を後にする。


「あの野郎……」

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