囚われの身のお兄様

七八一二三

第1話

「ハハ…ハハハ……アハハハハハハハハっ!」

少女の、血にまみれた手と持っていた包丁は静脈のくすんだ色になっていた。

「あたしが、この手で、やったんだ、もう、これで、大丈夫です、お兄様…」

少女のその時の感情は一体どんなものなのだっただろうか。

復讐を晴らして清々しい気持ちになっているか、はたまた安堵しているのか。

義兄に執着し、人殺しになったその少女は今何を思っているのだろう。

「お兄様、私もすぐにお兄様の所へ行きますよ…」

少女の持っていた包丁の切っ先はやがて、彼女の頸へと傾いた。

「…っ、お兄様…お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様…」

その言葉を挟む度、少女の心は精神安定剤を投与したように一時的に軽くなる。

「これでもう、危険なものは無い…」

グサッ

頸を直接包丁の切っ先で裂いた音はそんな風に鳴った。

再び、部屋の周りは新たな鮮血によって汚された。

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囚われの身のお兄様 七八一二三 @eipipipi

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