第20話 第七章 若手鳥使いモリオン2

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 次の日の朝早く、モリオンは起きるとすぐに洞窟に行き、樹海周辺部へ出かける準備を始める。本当なら今日は、何時も行動を共にしている仲間と村近くの大きな老木に行き、その巨樹の洞にある樹脂を取にいく予定だった。しかし薬草師が作ってくれた薬を故郷の母に渡す為に、一人で樹海周辺部に咲いている薬草を取る仕事に替えてもらっていた。

 若手鳥使いの単独行動は、本来なら避けるべきものだ。常に指導者と行動をともにする新入り鳥使いと違い、若手鳥使いには単独行動が許されてはいる。でも若手鳥使い達の樹海での活動の多くは、三人から八人ぐらいの集団で行われるのが普通だ。仲間同士で協力しながら与えられた仕事をこなし、時には鳥使いの技量を競い合いながら、村の長老から一人前の鳥使いになったと宣言されるのを、じっと待つのが若手鳥使い達の日常だ。

一人前と認められた若手鳥使いは、すぐさまそれまで住んでいた宿舎を去り、一人前の鳥使いに用意された住居に移る。そこで伴侶と住むのも自由だ。だから若手鳥使い達は、少しでも早く一人前の鳥使いとして認められるように、深緑での人前ではっきりと成果が判る仕事をしたがっていた。例えば巨樹に生息する人間の乳児ほどもある節足動物が、自らの分泌物で作った、高級な蝋燭の材料になる巣を、襲われたら大怪我をするのを承知で採って来るくるといったような。樹海周辺部での薬草取りには、長老達から高く費用かされる要素は無い。それでもモリオンが樹海周辺部に出向くのは故郷であるイナの村と鳥使い達の交流が、イナの家禽によるささやかな交易によって本格的に再開される事を、心から望んでのことだ。

モリオンは洞窟でジェダイドの世話を終えると騎乗服に身を包み、ジェダイドの背に騎乗具を着けてから外の離着陸場に出て、ジェダイドの背中に乗った。

「さぁ、いくよ。ジェダイド」

モリオンの掛け声とともに蹲っていたジェダイドは立ち上がり、大きな銀色の翼を広げると、樹海の空へと飛び出した。

 飛翔したモリオンとジェダイドは村のある山を離れ、深緑から樹海周辺部へと飛んでいく。ジェダイドが樹海周辺部に近付くにつれて、樹海の樹木は小さなものが目立つようになり、やがて巨樹がほとんど見かけなくなると、木々の間から大きな川が姿を現した。光の川と呼ばれる大河だ。モリオンとジェダイドは光の川の流れに沿って飛び進み、川の中にある大きな中州の上空へとやって来る。中州の中に在るのは、知識の塔呼ばれる。不思議な建物だ。

 知識の塔のある中州は、中州と言うよりも大河の中に置かれた巨大な岩といったようなもので、周囲のほとんどが断崖絶壁なっており、その上に中州の周囲を囲む形で、小さな建物が立ち並んでいる。知識の塔は中州の中に、円筒系の建物を地面に突き刺したような形で建てられている。この金属でできた建物の内部には、鳥使い達が大切に保存してきた様々な記録や、今は使い方も判らないような機械や道具類が仕舞い込まれている。何とも奇妙な場所だが知識の塔のある中州は、故郷の村を飛び出して樹海に入ったモリオンが、偶然出会った鳥使いカーネリアと鳥使い修行を始めた懐かしい場所でもあった。しかし今回の目的地は、知識の塔ではなく、中州の対岸にある川岸だ。

[さぁ、ここよ。着地して]

モリオンがイドの力でジェダイドに指示すると、ジェダイドはゆっくりと川岸に向かって下降し、着地するとモリオンを下ろすべく蹲った。

 ジェダイドの背中から川岸に降りたモリオンは、まずイナの村の家禽、マダラウズラのフレプの姿を探した。モリオンと共に樹海周辺部に入ったフレプは、この川岸で深緑に鳥使いの村に行くモリオンと別れていた。若手鳥使いとなったモリオンがフレプと再会したのも、同じ川岸での事たった。

「フレプ……フレプ」

モリオンは川岸から周囲の森に向かいって、フレプを呼んでみる。樹海周辺部にいるときのフレプは、光の川の川岸にいる事が多い。

「フレプ!」

もう一度呼んでみると、森の中からマダラウズラの鳴き声が聞こえてきた。やはりフレプは、この近くにいる。声がした方向に目をやると、森の木を揺らす音と共に、首に物入れの袋を下げた大きな鳥が、森から川岸へと飛び出してきた。灰色と薄茶色の斑模様の羽毛に覆われたずんぐりした身体と、太い二本の足と先端に鼻が付いたやや長めの嘴、そして飛べない鳥の特徴である小さく退化した翼を持った大きな走鳥、マダラウズラだ。マダラウズラのフレプはモリオンの傍まで走ってくると、首をモリオンの肩に乗せた。

「よく来たね、フレプ」

モリオンがフレプの首を撫でると、フレプモリオンに嬉しい時の鳴き声を出して甘え、それに合わせてジェダイドも一声鳴いてみせたジェダイドからフレプへの挨拶だ。モリオンはフレプから離れると、二羽の種類の違う鳥たちの挨拶を見守る。

「さぁ、フレプ。これをイナまで届けてほしいの。解るよね」

ジェダイドとフレプの挨拶か終わるとモリオンは、上着のポケットから貝殻で出来た薬草の容器を取り出し、フレプが首に下げている袋に入れる。

「さぁ、行ってらっしゃい」

袋の口をしっかり締めるとモリオンは、フレプの背中を押しながら声を掛ける。イナへ向かうようにと言う合図だ。合図を受けたフレプはモリオンに背を向けると、そのまま森の中へと消えていく。

「頼むね。フレプ」

イナへ向かうフレプを見送りながら、モリオンはフレプの無事を祈った。最もモリオンが祈らなくても、フレプは無事に薬をイナの村に届けてくれるだろうが。何しろフレプは、体格が大きくて野生に使い性質を持ったマダラウズラなのだから。それに、これまで何回も樹海とイナの村とを行き来している。

「さぁ、行きましょう」

鳥使いの村で作られた薬をフレプに託し終えたモリオンは、再びジェダイドに乗って上昇すると、今度は薬草取りへと向かった。

 モリオンとジェダイドが次に向かったのは、樹海周辺部でも深緑の近くにある、瞳の湖と呼ばれる場所だ。此処は二つ並んだ湖を取り囲むように草地や灌木の林などがある場所で、結構薬草が採れる場所だった。薬草取りは若手鳥使いにとっては、まったく評価されない仕事だが、薬草の勉強をしているモリオンには、勉強した事を実践する場でもあった。モリオンは瞳の湖の一つ、右目と呼ばれている湖近くの草地にジェダイドを着地させると、ジェダイドから降りてパートナーを自由にした。

「さぁ、暫く自由にしていなさい」

モリオンが声を掛けると、ジェダイドはゆっくりと再び空に舞い上がり、ジェダイドが樹海の彼方へ飛び去るのを見送ったモリオンは、さっそく薬草取りを始める。

 湖の傍に広がる、草地の中に灌木の林が点々あるこの土地には、種類は少ないが春の終わりから夏の盛りにかけて生える薬草が、あちこちに姿を見せている。どれもこれも、村の薬草師に効能を教えてもらった薬草だ。故郷のイナで採れる薬草については母から教わっていたモリオンだが、樹海で採れるものに関しては初めて見るものばかりで、一から学び直さねばならなかったのだが、それでもイナで教わった薬草の知恵は新しい知識を得るのに役立っている。イナの村での体験を役立てようとして始めた樹海の薬草の勉強は、今のところ順調だ。

 モリオンは早速薬草を摘み始め、騎乗服のポケットの一つから携帯用の袋を取り出してその中に薬草を入れ始める。薬草取りはモリオンがイナの村にいたころからやっていた事で、袋に半分以上の薬草を取るのは、とても簡単だった。これで一応、薬草師が必要としている量の薬草は集められたのだが、モリオンはこの仕事に物足りなさを感じていた。わざわざ深緑での仕事を変えてまでする仕事にしては、薬草取りは簡単すぎる。でもこれ以上やる事はなさそうだ。早く鳥使いの村に帰って摘み取った薬草を、早く薬草師に渡した方がいいだろう。

「ジェダイド」

モリオンはジェダイドを呼び、ジェダイドがやって来るのを待つ。ところが、ジェダイドが来る前に、モリオンは思わぬものを目にしてしまった。首の長い獣、騎乗獣に乗った商人の格好をした男……モリオンがよく知っている男の姿を。ジェイド……イナの薬草の丘でモリオンと出会い、後にジェダイドが誕生する卵、卵泥棒に盗まれていたモリオンに託し、姿を消した鳥使いだ。今はパートナーのベヌゥ、ネフライドを失ったうえに心と身体に深い傷を負い、だれにも心を閉ざしたまま樹海周辺部をさ迷っていた。そして久々に見るジェイドは騎乗獣に乗っているだけで無く、ずんぐりとした身体に材木の束を背負ったに荷役獣を従えていた。

「ジェイド」

モリオンは灌木の間を騎乗獣に乗り、ずんぐりとした荷役獣を従えて進むジェイドに思わず大声で呼びか聞けた。

「ジェイド,そこで何しているの」

モリオンの声に騎乗獣に乗ったジェイドはモリオンに顔を向ける。しかし上空にジェダイドが現れると、ジェイドは騎乗獣の速度を速め、荷役獣と共に灌木の群れの向こうに走っていく。まるでジェダイドから逃げるように。

「ジェイド……」

ジェイドの姿が消えると、モリオンは暫く茫然と立ち尽くした。頭上ではジェダイドが、輪を描くように飛び回っている。

[ジェダイド、おいで]

モリオンはイドの力でジェダィドに呼び掛け、ジェダイドを自分の傍に着地させた。

「よーし、よし」

モリオンは地面に蹲ったジェダイドの首のあたりを撫でながら、イドの力でジェイドの意識を働かせてみる。もしかしたら、ジェイドの意識と繋がれるかも知れない。そう思ったからだ。しかしジェイドの意識は、一つも感じられなかった。やはりまだ、ジェイドの心は閉じたままなのだ。

 ジェイトは、かつては鳥の一人だった。しかベヌゥの卵を盗んだ連中を追い、卵と取り戻したものの卵泥棒を追いかけて行き、行方不明になったのだ。たまたま出会ったモリオンに、大事なベヌゥの卵を託しておいて……。

その後、ジェイドとパートナーのベヌゥに何があったのかはわからない。その次にパートナーのベヌウを失ったジェダイドと会ったのは、モリオンが盗まれたベヌゥの卵から生まれたベヌゥ、ジェダイドと、鳥使いの修行を始めてから。モリオンが鳥使いの仕事である商売を学ぶため、樹海周辺部の町に行ったときの事だ。その時樹海周辺部の町にいたジェイドは、ならず者に羽交い絞めにされていたモリオンを助け、姿を消した。その後は樹海周辺部や樹海周辺部に隣接する町に行った鳥使いが、それらしい人物を見かけたという話を聞くだけで、詳しい消息は判らないままだ。ただわかるのは、ジェイドがパートナーのベヌゥを失い、深い悲しみの中にいるという事だけ。

誰にも癒せない深い悲しみ……モリオンに出来るのははただ黙って、ジェイド心と身体が癒されるのを待つだけだ。

「ジェダイド。帰りましょう」

ジェイドが完全に姿を消したのを確認すると、モリオンは薬草の袋をジェダイドの騎乗具の物入れに収納し、ジェダイドの背中に乗る。

[さぁ、村へ]

モリオンが操作綱でジェダイドに合図を送ると、ジェダイドは空へと舞い上がり、深緑目指して飛んでいく。


 モリオンが鳥使いの村に帰り、取ってきた薬草を製薬所に届けに行った時には、殆どの鳥使い達が、瞳の湖でモリオンがジェイドとあった事を知っていた。それにはモリオンがイドを使い、ジェイドを見かけた時の事を知らせたこともあるのだが、その日モリオンがジェイドを見かける前に、樹海周辺部の町に商売をしに行く途中の鳥使い達が、騎乗獣に乗ったジェイドを見掛ていたのだ。鳥使い達は他の鳥使い達にイドでその様子をイドで伝えていた。しかもジェイトを見掛けたのは、瞳の湖のすぐ近くだ。ジェイドを見掛けた鳥使い達は鳥使いの村の長老達に、早くジェイドを保護するよう言い残して、町への商売に向かい、連絡を受けた鳥使い達は早速ベヌウの休憩用の洞窟に集まると、ジェイドについての話し合いを始める。

 鳥使い達には仲間について話し合いが必要な事態が起こると、村にいる鳥使い達がこの広い洞窟に集まり、話し合いをする習わしがある。この時も二十人ほどの、モリオン達若手も含めた鳥使い達が洞窟の奥に集まり、ジェイドについて話し合っていた。もっとも若手鳥使い達は意見を求められた時以外は発言せずに、先輩達が意見を言い合うのを聞くだけだったが。

「みなさんはもうご存知でしょうけど、ジェイドについて重要な話が伝わってきました。ジェイドが樹海周辺部の瞳の湖に、騎乗獣と荷役獣を連れて現れたというのです」

話し合いは、まず進行役の女鳥使いカーネリアの言葉から始まった。カーネリアはジェイドとは双子の兄弟で、モリオンを樹海に導き、樹海周辺部で鳥使いの基礎を教えてくれた人物でもあった。

「まずジェイドを目撃したモリオンに、その時の様子を説明してもらいます」

いきなりカーネリアからジェダイドを見掛けた時の説明をするように言われ、モリオンはぎくりとする。若手が真っ先に発言するなど、めったにない事なのだ。しかもモリオンは鳥使いの村の出ではない。大勢の鳥使い達の前で発言するなど、考えられない立場の人間だ。しかし発言を求められたからには、ちゃんと発言しなければなるまい。洞窟にいる鳥使い達全員の視線を感じながらモリオンは、時々言葉に詰まりながらも、ジェイドを見かけた時の事を説明した。

「そうか……ジェイドはジェダイドを見て姿を消したのか」

「はい」

モリオンがようやく説明を終えると、現役鳥使いの長老ビルカが考え込むように呟き、それに続いて若手の教育係であるユーディアがある懸念を口にした。

「それにしてジェイドが騎乗獣と荷役獣を手に入れていたなんて、もう鳥使いの村には戻らないつもりなのかしら」

「そう、しかも荷役獣は材木を運んでいたというではないか。住み家でも立てるつもりだろうか」

ユーディアに続いて女性鳥使いの一人も、ジェイドが村に帰らない可能性を指摘した。

ジェイドが鳥使いの村に帰らない決意をする。それを鳥使い達は恐れていた。パートナーのベヌゥを失ったといっても、ジェイドには鳥使いの能力がある。鳥使いの村にいれば、その能力を何等かの形で生かす事が出来るはず。どうしたらジェイドが鳥使いの村に帰って来るのだろうか? 鳥使い達は夜になるまで話し合い、鳥使い達が一人ずつ毎日交代で瞳の湖に行き、ジェイドを探し出す事が決められた。そして最後に鳥使い達が瞳の湖へ行く順番が決められ、最後に長老ビルカが重要な事を鳥使い達に伝え、話し合いはお開きとなった。

「ジェイドを早く見付けて、村にもどるように全力を尽くそう。ただしこれ以上努力してもジェイドと接触でなかったら、ジェイドは戻ってこないものとして諦めよう。これで話し合いは終わりにする」

ビルカが伝えたのは、長老達の下したある決断だった。これ以上ジェイドが戻る気配がなければ、ジェイドを鳥使いの村にいないものとする、重い決断だ。モリオンは長老達の決断を聞いたカーネリア顔が、一瞬歪むのを見逃さなかった。

 話し合いが終わると鳥使い達は洞窟を出て、思い思いの場所に向かう。モリオンも山頂にある若手鳥使い達の宿舎に帰ろうとしたものの、足取りは少々重かった。若手鳥使い達はジェイドの捜索から外されたので、ジェイドの捜索に加わりたいというモリオンの希望は消えていた。仲間達と若手鳥使いとしての仕事をしながら、捜索に出た鳥使いからの良い知らせを、待つしかないのだろう。そう思いながら山頂の集会所に通じる階段を上り、集会所の中に出ると、誰もいない集会所に佇むカーネリアと出くわした。

カーネリアは一人、集会所の壁にもたれて目を瞑っていた。他の鳥使い達は、もう自分達の住処に帰ったのだろう。窓から入ってくるピティスの明かりだけが、がらんとした集会所の内部とカーネリアを照らしている。ここで何をしているのだろうか? じっとしているカーネリアの表情は、イドを使っているようにも見える。

「あぁ、モリオンなのね」

モリオンがそっと、カーネリアの傍を通り過ぎようとすると、カーネリアは目を開けてモリオンに話し掛けきた。

「すみません、邪魔しちゃったみたいで……」

カーネリアの、モリオンは思わず謝ったが、カーネリアは気にしていないというように、モリオンに微笑んで見せた。ただし相変わらず壁にもたれたままで、目は笑わずにいる。

「えぇ、ちょっとジェイドの様子をさぐろうとしたの」

やっぱり、カーネリアはイドを使っていた。それもジェイドに。でもジェイドとは、意識を繋ぐことが出来なかったのだろう

「ジェイドとイドで、繋がろうとしていたんですか?」

「えぇ。でもいくら呼び掛けてみても、音沙汰無しだわ。もう諦めた方がいいのかも」

長老達の決断がよっぽど響いたのか、カーネリアはいつになく弱気になっている。

「でも今日私は、みんなの前で話した通り、はっきりとジェイドの姿を見たんですよ。瞳の湖で。ジェイドがそこに住んでいたら、村に帰って来るように、毎日説得できるはず」

モリオンは懸命にカーネリアを励まそうとするが、モリオン自身、長老達の決定には衝撃を受けていた。カーネリアを励まそうとしているのも、半分以上は自分を励ますためでもあった。

「有難う、モリオン、もう気を遣わなくてもいいわ。ジェイドの事を考えてくれるのは在り難いけれどね。でもあなたがまず、考えなければならないのは、一人前の鳥使いになることよ」

「はい」

納得いかないが今のモリオンには、カーネリアの言う通りにするしかなかった

「さぁ、もうここを出ましょう」

カーネリアは壁にもたれるのを止めると、集会所の外へと歩いていく。モリオンもカーネリアに続いて集会所の外へと出ていき、扉の無い集会所の出入り口をくぐったとたんに、空半分が黒い雲に覆われているのを目にした。嵐を呼ぶ雲だ。モリオンとカーネリアは集会所の外で立ち止まり、嵐の雲を観察する。雲を観察して、これからの天気を予想するのも

鳥使いには欠かせない素養だ。

「明日の夕方には、嵐になりそうですね」

モリオンは黒雲を観察した結果を、カーネリアに伝える。

「確かにこの雲の様子だと、明日の夕方から嵐になりそうね。モリオン、よく勉強したね」

「ありがとうございます」

日ごろの勉強の成果をカーネリアに褒められ、モリオンは心がほっとするのを感じる。だが今の空の様子は、明日からの波乱を予想させた。明日からジェイドの本格的な捜索が始まるというのに。

「明日は大変な日になりそうね。さぁ早く家に戻って、明日に備えましょう」

「はい」

明日が大変な事なるのを確信したモリオンとカーネリアは、互いにお休みを言うと、モリオンは若手鳥使い達の宿舎に、カーネリアは伴侶を持つ鳥使い達に用意された住居へと戻っていく。

  

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