第8話 第三章 旅立ち2
2
銀色の鳥達は、空を舞いながら眼下の小屋を見張っていた。その小さな小屋には、鳥達の仲間である生まれたばかりの雛が、彼らの背に乗る鳥使い達と一緒にいる。上空からその雛を守るのが、今の彼らの仕事だ。何しろ彼らと鳥使い達は、その雛を探して旅をしていたのだから。やっと見付かった雛を、彼らはしっかりと守ろうとしていた。鳥達は感覚のすべてを研ぎ澄まして、地上の様子を見る。怪しい者が、雛の居る小屋に近づかないかと。そして鳥達の鋭い感覚は、小屋に近付く小さな人影を捕らえた。茶色い髪の見た事の無い人間だ。
[クルナ、クルナ。ソチラニ近付クナ]
鳥達はさっそく、鋭い声でその人影を威嚇する。しかしその人影の人間は、威嚇をものともせずに、立ち止まって巨鳥達を見詰め返した。その様子を見ると、鳥達は人影の頭上近くまで急降下し、さらにその人物を威嚇してみせた。そして鳥達の目が相手の姿を捉え、その鋭い声で威嚇した時、一人の少女の姿が鳥達の眼に焼きついた
[オマエハナニモノダ]
黙って自分達を見詰める少女の姿に、鳥達は大いに戸惑った。鳥使い以外の人間で巨鳥の威嚇に怯えない人間など、今まで出会ったことが無い。それは銀色の巨鳥達にとっては、大きな脅威だった。
[ナニモノダ、ナニモノダ……]
銀色の巨鳥達は、黙ってこちらを見る少女に向かって、問い掛けの思念を送った。この少女の正体を、是非とも知りたかったのだ。
[ナニモノダ……ナニモノダ……]
少女と巨鳥達との間を、緊張した静けさが流れる。そしてその静けさの中から、一つの光景が鳥達の意識に浮かんできた。
[オオ、コレハ……]
それは、巨鳥達がよく知っている人物の光景だ。黒い髪の、緑色の服を着た若い男……しかもその若い男は、彼らの卵をしっかりと抱いている。間違い無く、鳥使いの一人だ。しかもこれから生まれる彼らの仲間を、守ろうしている鳥使いだ。どうやらこの少女は、この鳥使いとゆかりのある人間らしい。しかも鳥使い達と同じように、小屋にいる雛を守ろうとしている。不思議だ。鳥使い以外の人間が、自分達に興味をもっているのが。
[ワカッタヨ。ナカニハイッテモイイヨ]
真下にいる少女の心を知った鳥達は、すぐに威嚇をやめ、再び高い空へと昇っていく。空を貫く、銀色の光となりながら。鳥たちが飛び去った後には、一筋の銀色の光が残されていた。空から舞う、銀色の羽が作る光だった。
鳥達が残した光の筋をモリオンはしばらくぼんやりと見ていた。今までここで起こっていたことが、全て夢のような気がする。しかしこれは現実に間違いないのだろう。これが夢でないことを確かめられたらと、モリオンは思った。その時銀色の羽毛が風に流され、モリオンの目の前を漂っていた。モリオンは手で空中の羽毛をすくい取ると、ぎゅっと握り締めて、羽毛の感覚を確かめる。そしてズホンのポケットから、もう一枚の羽毛を取り出した。薬草の丘で拾った、銀色の巨鳥ネフライドの羽毛だ。フレプの物入れの袋に入れていたのを取り出して、いつもズボンのポケットに入れて持ち歩いているのだ。やはりここでさっき起こったことは、紛れも無い現実だった。掌をくすぐる羽毛の感触がそう告げている。モリオンはもう一度、二枚の羽毛を握り締めるとズボンのポケットにしまいこんだ。そして鳥小屋へと走って行く。鳥小屋にいる、生まれたばかりの雛を見るために。
鳥小屋に入り、まずモリオンの目に飛び込んできたは、銀色の小さな生き物の姿だった。マダラウズラの足元にある寝藁の上で、懸命にうごめいているその生き物は、薄暗い中で光り輝いている。まるで自分から、銀の光を放っているかのように。そしてそれとは対照的に雛が出た後の卵の殻は光を失い、ばらばらになって家禽の囲いの外に投げ出されている。おそらくラグが捨てたのだろう。モリオンはその卵の破片を拾い、捨てられる予定の寝藁の中に押し込んだ。役目を終えて弱くなった卵の殻は、藁の中に押し込むとさらに粉々に崩れて、形が無くなっていく。これで卵の殻が、村人に見つかることはないだろう。卵の殻を隠し終わると、モリオンは改めて小屋の中を見回した。銀色の雛のいる小屋は、中いる全てのものが、その小さな命に敬意を表しているかのようだった。仲間の雛が生まれると、暫くは無き騒ぐ他の家禽達も、静かに生命の誕生を見守っている。生まれたての命は、寝藁の上に立つマダラウズラがしっかりと守っている。さらに二人の鳥使いが、鳥達と人とを分ける囲いの前で、家禽と銀色の光とを見詰めていた。さらにこの鳥小屋の外では、巨大な銀色の鳥が上空を飛び回っている。これだけのものに見守られて、雛は無事に生まれたのだ。
「ああ、よかったぁ」
雛を見て喜ぶモリオンの心に、何とも言えない感情が湧いてきた。全身を包み込むような暖かな感情……。いつの間にか、涙が目から溢れ出す。どうしたって言うのだろうか? 急に泣きたくなるなんて。まるで、自分で自分の感情の制御が出来ないかのようだ。心の内から湧いてくるものに突き動かされ、モリオンは自分でも思ってみなかった行動を起こしたのだった。
「どうした、モリオン!」
モリオンが起こした行動を見て、鳥使い達は顔を引きつらせた。モリオンは柵の扉を開けると、家禽の寝藁に入っていく。そして家禽と銀色の雛に近付こうといていたのだ。鳥使いではない人間が、彼らの鳥の、生まれたての雛に近付こうとしている。それは取り使い達にとっては、とんでもないことだった。生まれたての雛は、この世で初めて見た人間と心を寄り添わせ、成長するとその人間を背中に乗せて空を飛ぶ。その雛が初めて見た人間が、鳥使い能村以外の人間だとは……。
「モリオン、待て!」
男性の鳥使いオリビンは、モリオンが策の中に入ったのと見るとモリオンの腕を摑み、柵の外に出そうとした。だがモリオンは、少女をとは思えぬ力でオリビンの手を跳ね除けると、柵の扉を閉ざしたのだった。
「ベヌゥの雛に触れられるのは、鳥使いの一族に生まれたものだけだ、モリオン!」
オリビンはモリオンに向かって、大声をあげる。モリオンがこれからやろうとする事を、なんとか止めさそうとして。しかしもう遅すぎた。モリオンが鳥使いの声に振り向いた時には、もう雛はモリオンの腕に抱えられていた。こうなれば鳥使い達には、これ以出来る事は無い。柵から身を乗り出し、家禽と雛、そしてモリオンを見る以外には。
「カーネリア、オリビン……」
雛を抱えたモリオンは、ひどく小さな声で鳥使い達を呼ぶ。しかしそれだけでもう十分だった。モリオンと雛とに、何があったのかを知るのには。
「オリビン」
何時の間にかオリビンの隣に並んだカーネリアが、オリビンに囁きかけてくる。
「もしかしたらこれでよいのかもしれない。あの子のために……。あの子がモリオンを選んだのよ。間違い無いわ」
そう話しながらカーネリアは、モリオンに抱かれた雛を指差す。
「ほら、見て。あの雛の羽毛の色を」
カーネリアの指先は、雛の柔らかな、虹の光が浮かぶ産毛に注意を促していた。
「あの娘と雛が、パートナーになったのよ、確かにね。この光がなによりの証拠よ」
カーネリアは、厳かに言う。
「それ、どういうことですか?」
モリオンは光に包まれた雛を抱きながら、厳しい顔をしたカーネリアに尋ねる。
「貴方がこの雛と一生を共にする事になったと言う事なの」
「えっ、どうして……」
カーネリアの言葉にモリオンは絶句し、頭を混乱させた。この雛と一生を共にするとは、どういう意味なのだろうか? 自分は何か、雛にとってよくない事を仕出かしたらしい。生まれたばかりの雛を抱く事が、いけない事だったのだろうか? 私それにしても何故、雛を抱き上げてしまったのだろう? それはモリオンにも説明の出来ないことだった。ただこの世を見たばかりの雛の傍に、自分はどうしても付いていないといけないと思ったのだ。それには何の根拠も無いのだが。そして今、その気持ちのまま銀色の雛を抱きかかえてみると、ひどい混乱状態に陥ってしまった。
「さぁ、早く柵がら出てきて、話したい事があるから」
カーネリアに促され、モリオンは柵から出て雛を鳥小屋の床に置くと、柵の前に座り込む。
「カーネリア、オリビン……」
床に座り込んだモリオンは、か細い声で取り使い達を呼ぶ。助けがほしいのだ。
「私……どうかしたみたい? こんな事をして。いじめるつもりじゃないのに」
モリオンは懸命に言い訳をする。鳥使い達に嫌われないように。彼らに嫌われたら、もうどうしようもないと思ったのだ。そしてそれ以上に、これから自分がどうなっていくのかが不安だった。
「落ち着いて、モリオン。あなたは何も間違ったことをしていないわ」
そんなモリオンに、カーネリアはモリオンの傍にオリビンと腰を降ろすと、静かに話しかける。モリオンの目をみながら、落ち着かせようとして。しかしそれだけでは、モリオンの混乱は収まらなかった。
「いじめているんじゃない! この子には私が必要なのよ! この子には……」
この子には私が必要……混乱したモリオンの口から、こんな言葉が出てくる。そしてその言葉を、カーネリアは聞きのがさなかった。
「そうよ、モリオン。この子にはあなたが必要なのよ。ほら、この子をよく見て!」
モリオンの傍まで近付いてきたカーネリアは、真っ直ぐに雛を見据えた。それにつられて、モリオンも銀色の雛に目を移す。
「さあ、よく見て、分かった?」
モリオンは改めて腕の中の雛を見る。生まれたばかりの雛は少しだけ見ると、さっきとは変わらないように見えた。しかしモリオンはすぐに、何かが違うのに気付く。雛を取り巻く銀色の光が、いつの間にかモリオンをも包み込んでいたのだ。
「カーネリア……」
「これはね、モリオン。あなたこの子のパートナーに選ばれた証しなのよ。あなたは鳥使いにえらばれたのよ」
びっくりしたモリオンがカーネリアを呼ぶ前に、カーネリアはモリオンの疑問に答えるように話し出す。
「ベヌゥはねえ、モリオン、生まれるとすぐに行動を共にするパートナーを選ぶの。自然のベヌゥだと、雛は親や先に生まれた兄弟、あるいは他の成鳥をパートナーに選ぶわ。しかし私達と暮らすベヌゥは、人間をパートナーにするの。そしてベヌゥのパートナーの人間は一生涯を、鳥使いとして働くの」
「一生涯を?」
衝撃だった。こんなことで、自分の人生が決まってしまうなんて……思いもしなかった。これから自分はどう考え、行動していけばいいのか……気持ちが混乱したまま、モリオンは銀色に輝く雛を抱き続けた。
銀色の鳥ベヌゥの雛は、その大きさにしてはとても軽い。しかもモリオンの腕の中で、とても静かにしている。それがかえって、モリオンの不安をかきたてた。
「私……これからどうしたらいいのかしら」
モリオンは不安にかられて鳥使い達に訊く。
「わからない。でも、鳥使いの修練を受けなければならないのは確かね」
モリオンがやった事は、鳥使いたちにとっても大変らしい。
「モリオン」
カーネリアは暫く何を考えた後、口を開いた。
「これから私の言うことを、しっかりと聞いてね。あなたにとっては、とても大事なのだから……」
カーネリアは、モリオンの目を真っ直ぐ見据えながら語りだす。
モリオンに語り掛けるカーネリアの目には、何ともいえない光があった。あの雛と同じ光だ。カーネリアの目には、銀色の巨鳥と同じ色があった。
巨鳥の心を映し出す色をした瞳が……。
「私達鳥使いはね、樹海に住む人間なのよ。樹海の中に村を作り、そこから樹海中を飛び回るのよ。べヌゥの力を借りてね。それはあなたももう知っているわね」
「はい」
「鳥使いの暮らしが、この村の暮らしとまったく違うと言う事も、理解出来るね。」
「はい」
質問に答えているうちに、カーネリアが何を言いたいのかモリオンにも判ってきた。カーネリアは、モリオンを樹海に連れて行こうとしているのだ。それもモリオンを鳥使いにするために。おそらく、モリオンがベヌゥの雛に選ばれたのは宿命だったのだろう。そうだとしたら、おそらくいずれは、鳥使いの村にはいかなければならないだろう。しかし、モリオンが実際に鳥使いになれるかどうかは、別の問題だった。なにしろモリオンは生まれてから一度も、イナの村から出たことが無い。そんな自分が、いきなり環境の違う場所に行って暮らすことができるだろうか? いやその前に、どうやってこの村から出て行くのかが問題だ。
「私、この雛と出会えて良かったと思っているのです。でも、それと私が樹海の村に行く事とは別の話しです」
モリオンは真剣だった。正直な気持ちをカーネリア達に伝えたいと思っていた。今はどうしたら良いのだか判らないが、正直に話せば何とかなると考えたのだ。
「私は、今までこの村から出たことがほとんどありません」
モリオンは鳥使いたちに話し続ける。
「ここの生活以外の生活を、私はまったく知らないのです。こんな私が、鳥使いの村で何が出来ると言うのですか?」
モリオンの質問に、鳥使い達は答えようとはしない。その代わり、モリオンの目をただしっかりと見詰めていた。
「モリオン、心配ならば私達の村を今ここで感じさせてあげるわ」
「村を感じさせるって……どうやって?」
いぶかしむモリオンに、カーネリアはただ微笑んでみせるだけ。だがすぐに、村を見せると言ったカーネリアの言葉の意味を、モリオンはすぐに理解させられたのだ。
なんとモリオンの意識が、鳥使い達の村へと飛んでいったのだった。
樹海の奥深くにある、鳥使いの村へと。
モリオンの頭に、いったこともない鳥使いの村の様子が、現実のもののように浮かんでくる。それはただ意識を通じ合わせているだけのものとは完全に違っている。
「驚かないで。貴方は私の意識と繋がっているのよ。私達の村をもっと詳しく知って貰う為にね。イドを使い慣れればこういう事も出来るの」
鳥使いたちには驚かされることばかりだ。カーネリアは自分達が住む村の景色を、自分達が見たとおりにモリオンの心に伝えているのだ。
樹海の中の、周囲がすべて切り立った絶壁になっている切り株状の山。その平らな山の上に鳥使いの村……。それは鳥使い達とであった時、モリオンの心に浮かんだ光景と同じたった。しかし今見ている光景は、前にみたのとは違う感覚を伴っている。ただ光景が心に浮かぶだけでなく、音や匂い、味覚や皮膚感覚までこちらに伝わってきているような感じだ。しかも、鳥使いの村について詳しい情報が、次々とモリオンの頭に入って来た。
周囲を人が近寄れない森に取り囲まれた切り株の様な山……その山に鳥使い達の祖先は、彼らを襲うもの達から逃れる為に村を築いたのだった。遥か昔の事だ。簡単に人間が訪れることの出来ない場所に、自分達の村を作った鳥使いの先祖達……しかし彼らは、その村を孤立させなかった。樹海の鳥使いは、樹海が生み出す富を樹海の外の民と分かち合うことで、外界との接触を保ったのだった。
このような情報が、モリオンの心に容赦なく伝わってくる。それはただ単純に自分の見た光景を相手の心に送るだけのものではない。今までにない体験に驚くモリオンの目に、さらに新たな景色が見えてきた。鳥使いと樹海の宝を乗せて、樹海の上空を飛び交う何羽もの銀色の巨鳥の姿が見えたのだ。そして今度はただ見えるだけでなく、モリオンは巨鳥に乗って飛ぶ、鳥使いの一人になっていた。
目の前にある景色ではないのに、モリオンにはその景色がはっきりと見えているのだ。それもベヌゥに乗り、空を飛んで行く感触を伴って。
「カーネリア、あなたなのですか? こんなことをしているのは。村を感じさせるっていうのは、このことなのですか?」
モリオンの言葉に、カーネリアは静かに頷く。
「驚くことはないわ。これもイドの力一つよ、鳥使い同士はお互いの意識を繋ぎ合わせることができるの。意識が繋がるとお互いの感覚を共有するような感じになるのね」
「それが鳥使いの力なのですね」
「そうねぇ……鳥使いの力と言えば力ね」
「何故、こんなことが出来るのですか?」
「解らないわ。でもどうしたわけか、鳥使いにはこの力が備わっているの」
モリオンとカーネリアがそんなやりとりを続けている間にも、村の様子がモリオンの意識に映し出される。村を取り囲む崖の上に止まっていたか巨鳥達が、次々とピティスの輝く空へと舞い上がり、樹海の遥か彼方を目指して飛んでいく。何とも言えない、美しい光景……。しかし巨鳥達がひときわ高く、ピティスの輝く空を飛ぶのが見えた時、モリオンの意識はイナ村の鳥小屋へと戻ったのだった。
モリオンの目に、鳥小屋の中にいる二人の鳥使いと家禽のラグの姿が映る。そしてモリオンの足元には、銀色の巨鳥の雛が蹲っていた。
完全に意識は、現実に戻ったらしい。
自分の意識が現実に戻ったのを確認するとモリオンは、大きく溜息をついた
「びっくりした?」
「私達鳥使いは、この能力をイドと呼んでいるわ。イドはね、鳥使いの意識と意識とを還元に繋いでいるものなの。わかる?」
カーネリアはこの特異な能力、イドの説明を続ける。
「私達が鳥使いをやっていられるのは、このイドの能力があるおかげだわ。イドを使って私達は樹海のあちこちにいる仲間とさまざまな情報をやり取りすることが出来るのよ。さっき、私があなたにやったように」
そしてこう続けたのだった。
「そしてあなたにも、何故かイドの力があるみたい。」
カーネリアの言葉を聞き、モリオンはごくりとつばを飲む。
何てことだろう、私にこの人達と同じ能力
があるなんて……。
「それに私はね、あなたが鳥使いとしてやっていける能力を持っていると確信しているの。何故だか知らないけどね」
「でも、私は鳥使いの一族ではない」
モリオンは、すかさず鳥使いに反論する。
「あなた達の一族でない私に、何故あなた達特有の能力があるのですか?」
「解からない」
鳥使いの答えは、あっさりしたものだった。
「私達以外にイドの能力ある人間がいるなんて、村の記録には無いの」
カーネリアからは、モリオンが納得できる答えは返ってこない。モリオンの頭は、ますます混乱するばかりだ。
「モリオン、この謎を解くのが彼方に課せられた役目かも知れないわね」
「私の役目?」
「私達鳥使いと、彼方達との繋がりを見つけ出す役目ね。多分、彼方なら見つけ出せると思うわ」
どうやら、鳥使いは、自分達とイナの村人とには、なんらかの繋がりがあると思っているようだ。しかも鳥使いとイナの間に横たわっている謎を、モリオンが解くのを期待しているらしい。モリオンには、何の手掛かりも無いのに……。重苦しい空気が周囲を流れ、銀色の雛のか細い鳴き声が小屋の中に響きわたる。この謎を解く為には、鳥使いにならないとだめ……ってことなのだろう。モリオンがそう考え始めた時、そして突然、大きくて鋭い鳴き声が無数の鳥達が作る大きな羽音と共に、鳥小屋の外から轟いてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます