《第拾玖話》親密

《コンコンコン》



「失礼します。

169陸上作戦部隊中隊長ライブラです」



「ご要件のほう………………」



「おぉ久しぶりだな ライブラ、キャンサー、元気してたか?」



そう言いながら、ラボの奥から白髪混じりの大柄な元気のいい じぃさんが話を割り込んで出てきた。



「お久しぶりです、デガード開発長。

お陰様で、戦場でも無傷でやらせてもらってますよ」



「それは良かった、元気そうで何よりだ。

ところで、今日は何の用事で来たんだ。

あぁもしかして、例の武器のメンテナンスか?

それならいつもの所に置いてあるよ。

それにしてもお前さん、聞いたよ。

また零式で戦場を荒らしたんだってぇ。

全く……ライブラといい、キャンサーといい、普通じゃ考えられない事ばっかやりやがる、まったくだぜ。

頼りにしてるぞ!俺らの期待の星!!」



「いつもいつも銃のメンテナンスありがとうございます」



「改まって挨拶なんていぃって。

俺とお前らの仲なんだから、気にすんな。

その代わり、戦場で死んだら俺がお前らぶっ殺すからな。

覚悟しとけよ」



「ふっ、始まったよ ガー爺の意味わからない話、矛盾してるだろうが。

死んでんのにどうやって殺すんだよ」



そうするとカールがレオの耳元で……



「技術は確かなんだけどね……可哀想だけど老いは止められないから、そこは聞き流せればいいよぉ、面倒臭いし」



「おぉ、結構言うなぁ、カールも。

まぁ、確かに面倒臭いからもう行くか………じゃあ、ガー爺また後で。

俺たちもう行くわ 」



「おぉ、そうか。

今後の活躍 楽しみにしてるからな!」



「デガード開発長もお元気で!!」



そうして2人は、半ば強引にデガード開発長のいるフロアを後にして、零式プラズマ狙撃銃の置いてあるいつもの場所に進む。




元々デガード開発長自身 軍で扱う武器のメンテナンスに関してはかなりの実力者で、開発長が少し機械をいじっただけで数十年も若返ったと、国内外からはかなりの評価を受けている。



しかし、その馬鹿正直 馬鹿真面目で少し頭の悪い性格 故に、多くの人からは好かれてはいなかった。



だが、そんなデガード開発長もレオやカール達にとっては、武器をメンテナンスする上ではとても頼りにされていて、特にカールは零式プラズマ狙撃銃のメンテナンスで、1年前から戦場に出るようになって、数え切れないほど世話になっている。



そして、デガード開発長は軍内部でも数少ない、Dr.キールに続く信頼出来る人だ。



先程も言った通り、デガードは馬鹿正直なところがある。



嘘をつかない味方ほど信用出来るもはない……その性格が幸をそうしていたのだ。





「やっぱり悪いことしちゃったかな……」



「大丈夫だって、向こうも大して気にしてないだろうよ。

だから、そんな気にすんなよっ!

それより、もうすぐでヘレナの所に着くぞ」



そう言いながら、レオはカールを肘でつっつく。



「も〜うやめてよー。

別に僕はヘレナが好きってわけじゃないんだから、変に言うと照れるだろぉ〜」



「何照れてるんだよ、カール。

お前ってやつは…やっぱり可愛いなぁ。

別に恥じる事はねぇよ。

堂々としてれば、ヘレナも自然とついてくだろうよ」



「もぉ、レオったら、僕を虐めないでよぉ……」



「よぉお前ら、相変わらずだなぁ。

そう言えば、知ってるかレオ、カール。

最近敵国の間で、お前ら2人とも《西の悪魔》って呼ばれてるらしいぞ。

笑えるよなぁ。」



「よっ、久しぶりだなヘレナ。

お前もいつも通り、バカっ面してんじゃねぇかよ」



「なんだとぉ貴様、喧嘩うってんのかぁ」



透き通るような薄紫色の髪にポニーテール、煤で汚れた顔に光る柔らかい瞳。



造形の整った美しくて可愛い女の子が、そこで仕事をしていた。



しかし、その容姿とは裏腹に少しオラついた口調で…………《黙っていれば可愛いのに、、》と、つい思ってしまう、残念な女の子だった。



「いつもの事だけどさ……しっかりご飯食べてる?

少し痩せたように見えるけど。

ヘレナって真面目で良いんだけどさ、ひとつの事に集中すると周りが見えなくなるから、すごく心配なんだよね。

サンドイッチ持ってきたから、良かったら暇な時食べてよ」



「おぅ ありがとな、助かるぜ。

カールの零式そこに置いてあるかんな、後で持ってけよ。

お前、それ戦場に持ってかなかったら役立たずだからなぁ、あっはっはっはぁ」



大きな笑い声が、辺り一面に跳ね返り機械たちを振動させる。



「うっせんだよ、いい加減その下品な笑い方止めろって。

お前のせいで鼓膜破れるだっろっ。

カールも迷惑してんだよ」



「あぁん?なんでお前にどうこう言われなくちゃいけねぇんだよ。

まぁ、カールが困ってるって言うんなら、やめなくもないけど……勘違いするんじゃねぇぞ」



「レオも喧嘩うんのやめなよ…………

それにしてもさ、ヘレナもヘレナで本当に意地悪だよね。

僕だって零式なくても、ちゃんと戦えるよ」



「バカ言えー。

初陣の時 お前の部下が、(ライブラ中隊長 戦場でべそかいて、まともに敵倒せてなかったんですよね)って笑いながら言ってたぞ」



「あぁ、確かに基地に戻ってきた時、泣いて寄ってきたよな、お前」



「も〜2人して僕を虐めないでよ。

一応、僕だって気にしてるんだからさぁ」



「ごめん、ごめん、嘘だよ。

気ぃ悪くすんなって、後で零式の調整付き合っあげるからさ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ボクタチの戦争日記 琥珀kohaku @motoyakohaku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ