情が移り、妙な良心を働かせたがために呪いに触れる話。
異界と通ずるタイル画の違和を感じ取りつつも、犯人が捕まっただけで老婆の無念が晴れると考える浅はかさもある語り手は、所謂英雄ではない。呪いを際立たせるための掻き回し役でしかなく事物を解決させるような力は持たない。ただ傘を差し伸べたあの瞬間によって彼の安全は担保され、もう一歩といった危うさで逃れを得る。
人の無念が罪を逃さないというのは迷信だ。ただこの話を通して感じるのは無邪気なままに亡くなったが故、矛先を見紛う呪いが、語り手の持つ、現実では問われないような罪を炙り出したように「怖さ」は誰かの戒めとして根付くということだ。