下駄箱に 黒い雷神 膝栗毛

緒賀けゐす

下駄箱に 黒い雷神 膝栗毛

 ~これまでのあらすじ~

 イケイケのギャル馬連ばれん泰子たいこは、片思い中の男子の下駄箱に手作りチョコを入れようと早朝登校する。ウブな恋心に心臓をバクバクさせて下駄箱を開けると、そこでは小さな雷神が下駄箱内を日サロに改造して肌を焼いていた。それからなんやかんやあり、二人は共に雷神の片割れであり魔王・ゼルフェデウスの召喚により伊勢界に連れ去られた風神(色白)を助けるため、己が膝と東武東上線を栗毛の馬として旅に出る。そしてついに、二人は魔王城イセジングへと辿り着いたのだった……。

「端折りすぎじゃね?」


  *  *  *


漆黒稲妻ブラック・サンダー!!!」

「うぎゃああああああ!!!」


 雷神の放った黒いいかずちが、最後の四天王チョコフォンデュラスの持つ214個の心臓を同時に貫く。その際限なき再生能力から「不死身のフォン」と恐れられていたチョコフォンデュラスは、雷神の一撃により呆気なく最後を迎えた。

 ドロドロと、チョコフォンデュラスの体を構成していた物体が茶色い液体となって頭から溶けて形を失っていく。


「ヤバ」


 泰子はとりあえず動画を撮った。


「よし、これで後は魔王だけやな!」


 泰子の肩の上、四天王全員をそれぞれ一撃で仕留めたちっちゃな雷神が肩を回す。背に太鼓を輪っか状に繋げたやつを背負うその体は、日サロ通いにより見事な小麦色に焼かれていた。


「てか、雷神様めちゃくちゃ強くね?」

「こんなちんちくりんでも一応神やし、異世界のちょっと強い魔人なんかに負けてられんからのう」

「草」

「ほら、さっさと行くで泰子ちゃん」

「りょ」


 大理石の階段を登り、二人は巨大な門の前に辿り着く。

“こちらを押すと開きます”との文言の書かれたボタンがあったのでそれを押すと、門は横に音もなく開いた。


「ククク、ついに辿り着いたようだな……」

漆黒稲妻ブラック・サンダー!!!」

「え、ちょっ待っいきなr――」


 玉座に座る魔王を視認するやいなや雷撃に、魔王は為す術無く黒焦げとなった。そして風力発電の要として捕らわれていた風神を救い出し、二人は無事に元の世界へと歩いて戻り、それぞれの生活へと戻っていった。

 それから泰子が黒ギャルとなって彼ピをゲットしたり電気代が少し安くなったりしたというが、それはまた別の話。

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下駄箱に 黒い雷神 膝栗毛 緒賀けゐす @oga-keisu

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