第9話 桃太郎 その9

「なんだ?人間たち言うからきてみれば薄汚いヤツ1人だけではないか」


長の一言に他の鬼たちは一斉に騒ぎ始めます。

「分かりませんぜ、後からくるということもありえます」

「ええい、誰か確認してこいや」


バタバタと鬼たちが右往左往している間に桃太郎たちは島に上陸しました。

そして


「俺は桃太郎。村を代表してきた。俺以外誰もいない。話しがしたい」


乗り込むなり大声で叫びました。


「何をいう。卑怯な人間も多いと聞く。本当に1人なのか」

「信じてくれというしかないが。もしもワシの話しが嘘ならば後ろに舟がもう1つ2つあってもよいと思うがの」

「確かにな。何の用事できたか」

「大事な話しじゃ。分かるヤツをお願いしたい」


色めき立つ鬼を抑え、長が前に出てきました。こっち、という仕草をし桃太郎を奥へと連れて行ってしまいました。


「そこで待っててくれ」

と桃太郎に言われたため、お供の一行は静かに舟の近くで待機しました。


お日様は既に頭の上を通り越して行ってしまってもまだ桃太郎は出てきません。


「遅いの、誰か様子を見てこい」

と鬼の1人が言い出した頃、桃太郎は長と2人浜に出てきました。


「一晩ここであかして明日帰ることになったからな」

桃太郎はそういうと舟に乗り込みそのまま寝てしまいました。


「そういうことだ。ついてきたお前らも腹が減っておろう。口にあうかはわからんが良かったら食べにこい」


そうしてその日は静かに過ぎていきました。


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新視点新釈昔噺 神稲 沙都琉 @satoru-y

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