竹取戦記~輝夜姫奪還~

高井カエル

第1話

 今は昔、竹取の翁(おきな)といふ者有りけり。野山にまじりて、竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり――『竹取物語』


 牢獄の窓から射しこむ一筋の月光。

 それを静かに見守る一人の男。


「月か――」


 男はそっと目を閉じた。

 やがて、衛兵たちが一人の青年を連れてきた。

 青年は男と同じ牢に入れられ、手足を鎖で繋がれた。

 男はそっと微笑んだ。


「運命というものは、不思議なものだ。そう思わないかい? 浩然」


「どうして俺の名を?」


「知っていたさ。ずっと前からね」


 月が雲に隠れ、辺りは再び暗闇に包まれた。

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