条件反射な僕ら
那須儒一
1 目標は高校卒業
有名な例として、梅干しを見ると唾がでるなどが挙げられる。
僕の名前は
実家が
独学で始めたが故に、免許皆伝や基本となる構えなども一切、存在せず。当然、弟子なんて1人もいない。
この教えにより、僕は物心ついた頃から前当主であった父親に、朝から晩まで斬り掛かられていた。
時と場所を選ばない父の襲撃により、その都度、テレビのリモコンや箸といった手近な細長い物で反撃したいた。
そのせいで、僕には“ある条件反射”が身に付いてしまった。
それは細長いを持つと、反射的に間合いに入った者を“居合い斬り”してしまう。これにより、僕の学生生活は困難を極めていた。
小学生の頃、帰宅途中に複数の上級生からカツカゲにあった。その時、掴み掛かってきた上級生を、たまたま手にしていたソプラノリコーダーで反射的に居合い切りをかまし、全員病院送りにしてしまった。
その後、被害者たちが、僕が一方的に暴力を振るったと口裏を合わせ、僕は加害者となった。
被害者、加害者間で示談が成立し、大事にはならなかったが、時代錯誤の野蛮な流派として、近隣住民から酷いバッシングを受け、
もともと社会からあぶれ、道場を心の拠り所としていた父は、この件で
このことで僕は学んだ事が2つある。
1つは、力だけでは物事を解決できないということ。
もう1つは、長い物を持ってはいけないということである。
父が亡くなって、母の実家で暮らすようになった。
その後も母を悲しませない、誰も傷付けないをモットーに力を隠してきた。幸いにも母の実家は他県にあった為、ここでは僕を知っている人は誰もいない。
僕の目標は高校の卒業だ。義務教育ではない高校は、少しでも問題を起こせば、すぐに退学となる。
高校2年生になった現在も、他者とは極力関わらず、長い物はなるべく手にせず、こうして授業も真面目に受けている。
そんな中、数学教師の田中の怒号が教室内に響き渡る。
「おいコラ!
田中の怒りは収まらず、僕に向かってチョークを投げてきた。
僕の居合い斬りを封印したいという、気持ちとは裏腹に、居合いの条件反射は以前と比べ更に磨きが
掛かっていた。
幸か不幸か、飛んできたチョークを手にしていたシャープペンシルを、目にも止まらぬ居合い斬りで見事に真っ二つにしてしまった。
2つに割れたチョークは、僕の左右斜め後ろの席にいた、
一瞬何が起きたかわからない、数学教師田中は、気を取り直して授業に戻った。
黒板に向かう田中を背に、クラス内のヒソヒソ話しが聞こえる。
「田中のヤツ、最近、株に失敗したとかで、機嫌が悪いらしよ」
「ええっ~、マジで。それで生徒に当たるとか、あり得ないわ」
「なぁなぁ、今飛んでったチョーク、確実に
「はぁ?お前、よくあの一瞬でそこまで見えたよな。普通に
「でもなぁ…」
ヤバいヤバい。あいつは確か野球部エースの村上だ。
さすがの動体視力だけど、僕がシャープペンシルを振ったとこは見えなかったみたい…。
今後は、授業中にペンはできる限り、手に持たないようにしなきゃ。
僕の居合いはどんどん物を選ばなくなっており、手に持てない物が日々増えていっている。
このままでは、いずれ大きな傷害事件を起こしてしまう。
僕は無意識の内に他人から物理的、心理的に距離を取るようになっていた。
ハァ~。前途多難な自身の人生を嘆き、溜め息が漏れる。
条件反射な僕ら 那須儒一 @jyunasu
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