夢のサンドウィッチ
ohne Warum|
第1話
川の氾濫もやみ、長く続いた騒ぎの数々も、遠くの国へと置き去りにして、ここには新たな文化が生まれるものですから、みんなで仲良く、暗い木材の組み立てた家に置かれた、クリスマスのトナカイたちのモチーフにしたテーブルに座り、朝食を始めます。皆さん、普段とは大違いで、穏やかなようでいながらも、新年への楽しみに心を震わしているようですね。テリヤキチキンのサンドイッチはどうか一人で食べさせてください。あの子と一緒に食べるはずでしたが、あの子は既に川の底。何かあれば、いつも描いたあの山に乗った、丸い岩にびっしりと生えて、毎回その姿形を変化させる“苔“たちを、ご覧になられてみては如何でしょう。遠くからでもよくもまあ、こちらの場所まで届くものですね。ずっと向こうの丘から見下ろす、その谷で繰り広げられる、色とりどりの閃光の暴れる様は、異世界で繰り広げられる魔法戦争のよう。とても、僕らには参加できるような試合ではございません。 静かに丘の上から谷底の一部まで、光の玉をゆっくりと到達させて差し上げます。ベテランの魔法使いには敵いません。そうするうちに、クリスマスの透き通った朝が到来しました。あの河岸に囚われた可愛らしいとぼけた古代人形たちも、普段とは異なり、両目をまん丸にして、何をしたらいいのかを戸惑うことなく、席に着いて皆と談笑するのをやめません。さあさ、我々も覚めないうちに、そのサンドイッチの包装を破りましょう。隅のテーブルに荷物を置きましたが、椅子に腰掛けることなく、川まで歩き去ってしまいました。食事場の楽しい雰囲気は、ここまで届くことはありません。あなたの消えた川のしぶきを眺めることもできないので、皺々になって硬く冷えてしまったサンドイッチの封を破きます。音もなく齧り付いた“それ“の味は、夢から醒めてもわかりません。夢で口にするパンなので仕方のないことです。
夢のサンドウィッチ ohne Warum| @mir_ewig
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