静かな檻
砂上楼閣
第1話
「さぁ、今日からここが君の家だよ。家族になろうね」
そう言ってあなたは私を檻に閉じ込め、鍵を掛けた。
◇◆◇
生まれてからずっと檻の中で生きてきた。
檻にあるものと、隙間から見える外の景色が私の全てだった。
親の事はよく覚えていない。
覚えているのは大きな手と、包み込まれるような温かさだけ。
◇◆◇
今日、私は売られたらしい。
前よりは少し広い部屋に変わった。
檻に入れられたままなのは変わらないけれど、今度の部屋には色んなものがある。
前までいた場所には仲間がいたけれど、ここには私しかいない。
騒がしいばかりの場所だったけれど、今はそれが懐かしい。
◇◆◇
私は囚われの小鳥。
鍵のかかった小さな部屋で、ひたすら1日を退屈に過ごす。
ここに連れてこられた時はとにかく怖くて、ずっとないていたけど、今では慣れてしまった。
寝て起きて食べてちょっと動いて。
そんな退屈な毎日を重ねていく。
窓から見える景色だけが変化する日々。
ああ、あの窓から外を飛び立ちたい。
◇◆◇
食事は朝と晩に少しだけ。
水は自由に飲める。
こんな狭い部屋じゃ動き回るにも限界があるし、元々そんなに活発な方じゃないからちょうどいい。
暇つぶしのおもちゃはいくらでもある。
貴方が帰ってくるまでの時間。
私は一人で孤独と遊ぶ。
◇◆◇
夜になると笑みを浮かべた貴方がやってくる。
私が逃げないように全身を包み込むように抱きしめる。
最初こそ怖くて仕方がなかったけれど、今では慣れた。
私がどんなに不機嫌でも、貴方は笑顔で話しかけてくる。
たまにイライラしてひっかいたり、お行儀は悪いけど噛み付いたりしてみる。
驚いたような声はあげるけど、怒ったりはしない。
今ではされるがまま。
正直撫でられるのは気持ちいい。
パシャパシャ音を立てレンズを向けられるのは好きじゃないけど。
◇◆◇
いつも穏やかなあなたの横顔。
それを遠目に見る私は檻の中。
たまに檻の外に出されるけれど、遠くへは行けない
窓の外から空が見える。
自由に空を飛び回りたい、そんな事を想う。
◇◆◇
騒がしいのは嫌い。
静かなのは落ち着く。
でもあなたが立てる音は好き。
私が独りじゃないって思えるから。
あなたの足音、声、静かに聞いてる。
◇◆◇
夜になると掛けられるカーテンが嫌い。
暗いのは怖い。
そして何よりあなたを見れないのは不安。
カーテンを開けてくれるあなた。
あなたは私の朝日。
1日はあなたで始まる。
◇◆◇
ここは静かな檻。
全ては貴方の思うがまま。
貴方がいなければ私は生きていけない。
だから、ねぇ。
私を一人にしないで。
温かい貴方の手のひらを感じさせて。
◇◆◇
静かな檻 砂上楼閣 @sagamirokaku
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