12. アンドロイドな私

「うぬぬぬ……、ふぬっ!」

 朝、ガレージで補給してから戻ってきたところ、洗面所で何やら背伸びをしている

ミサト様の姿がドアから覗いていました。足が少しぷるぷる震えています。

 どうやら、棚の高い位置に入れてしまっていたハンドソープの替えを、

取り出そうとしているようですが……。

 ミサト様の後ろから、ひょいと手を伸ばします。

「おお?」

「ちょっと待ってくださいね、今やってしまいますから」

 手早く詰め替えパッケージからプッシュタイプのボトルに移し替えて、

ミサト様に洗面台を譲りました。

「すみません、気がつかなくて」

 普段自分で使わないものが無くなっていても、気がつきにくいですね。もう少しまめに

チェックするのと、ストックは取り出しやすい場所に置いた方が良いでしょうか……。

他の雑貨類も含めて、後で考えておきましょう。


「言ってくれればやりましたのに」

 ミサト様が手と顔を洗い終わったところで、ハンドタオルを差し出します。

「まあ、それほどでも無いかと思ってな」

「いいんですよ、遠慮しなくて。ミサト様に呼ばれれば、すぐにでも飛んできます!」

 私は胸の前でガッツポーズ。ミサト様はそれをみて小さく笑いました。

「あはは、ありがとう」



                ◆ ◇ ◆



 私たちは、相変わらず穏やかで少し賑やかな日々を送っていますが、

少しだけ変わった部分もあったりします。


「ご主人、そろそろ時間だワン」

「ああ、わかってる」

 手早く朝食の片付けをして玄関へ。ミサト様は先に靴を履いて私を待っていました。

「すみません、お待たせしました!」

 トートバッグを脇に置いて、私も靴を履いて……、準備完了です!

「では、いってきます」

「いってらっしゃいだワン」

 ミサト様とともに外へ。今日は、ミサト様のお供で少し離れたところにある大学へと向かいます。

ポチさんはお留守番です。「どうせバッテリーが切れるワン」とやさぐれていました。


 暦の上ではもう秋になりましたが、まだまだ残暑も厳しくて、暑い日が続いています。

「今日も暑いですね」

「早く涼しくなるといいんだがなぁ」

「そうですねぇ」

 キャンパスは市街地からは少し離れているので、駅前からバスで移動する必要があります。

なので、まずは駅前まで歩いて移動します。

 家から駅までもバスがあれば良かったのですが……。逆に少し遠回りに

なってしまうので、仕方が無いでしょう。


 今日は、AIを専門としている教授の講義も受ける予定になっています。

 名目上はまだ学生ではないのですが、気になる授業があればと言われたそうです。

大学としては、よければ来年からは正式に学生扱いでということでした。

ミサト様はあまり気にしない事にしているようですが、大学としてもミサト様には

注目しているのでしょう。


 駅が近づくと、学生の姿も増えてきます。このまま、彼ら彼女らに交じって

二人でキャンパスを歩くと、少し目立ってしまうでしょうか。

 ミサト様から同行を求められたときは、少し悩んだのですが……。ミサト様ひとりでも、

この容姿でどのみち目立ってしまうのだと思います。そう考えて、

結局ついて行くことにしました。少々、過保護と言われてしまうかもしれませんね。

 「ミサト様は、私がお守りします!」と言ったら、ミサト様とポチさんには

苦笑されてしまいました。


「そろそろ、バスが来るみたいですよ。少しだけ急ぎましょうか」

「ああ」

 ミサト様に手を差し出します。ミサト様は、また仕方ないなって顔をして私の手を

取ってくれました。

「では、行きましょう!」

 私たちは少しだけ早歩きになって、バス停へと向かうのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

目が覚めたらアンドロイドになってたので、天才ロリご主人様のお世話します! 蓮沼 硝史 @hasunuma_shoji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ