第14話 首斬り事件の犯人VS無冠の五帝

「オラァッ!!」


 掛け声と同時にかなりのスピードで犯人は攻撃をしかけてくる。


 長い腕から放たれる大鎌の切り裂く攻撃は速く、鋭い。


「ッシ!!」


「ふんっ!!」


 そんな攻撃を剣狼がロングソードで受け止め、その間にサージュが口に咥えていた短剣で斬りかかる。


 しかし、その攻撃は犯人の闇魔法によって塞がれてしまった。


巨人ティタンラマン


 剣狼とサージュが下がった瞬間、奇術乙女は水魔法を発動。


 3m級の水の手が地面から出現し、犯人を捕まえた。


 奇術乙女の左手が目一杯開いたと思ったら、次の瞬間にはギュッと閉じられる。


 その動きに合わせて、巨人の手が犯人の身体全体を潰しにかかった。


「こんなもんーーーー!?」


 犯人が身体に力を入れて脱出を図るが、その瞬間に1


 手応えは完璧だ。 普通ならここで脳震盪を起こして失神とかしそうなんだけど……。


「くっそ……いてぇじゃねえか!!」


 俺の攻撃を喰らった犯人は痛みこそ感じているが、あまりダメージが入っていないように見えた。


 なら威力を上げていく!


「邪魔クセェ! 乱乱乱舞らんらんらんぶ!」


 犯人は俺が攻撃を仕掛ける前に鎌で暴れ回る。


 水の中にあるから動きにくいはずなのに、地上にいるかのような鎌捌きで巨人の手を斬り崩し、脱出した。


 その瞬間にフードが捲れて犯人の顔が露わになる。


 その顔を見た瞬間、俺と奇術乙女は目を見開いて驚いた。


「やっぱりか……こいつ、


 犯人の顔は少し紫色で、スッキリとした顔からは想像できないぐらいの傷跡が顔に刻まれていた。


 特に目を引くのは右頬に刻まれた大きくて長い十字の傷跡と、頭に生えている1


 魔族には大抵2本の角が付いている。


 それが1本ってことは……!!


「まじか……!! 半魔はんまか……!!!」


 文字通り半魔とは、人間の血と魔族の血を半物ずつ受け継いだ者のことだ。


 半魔になるパターンは2つ。


 人間と魔族が子を宿した場合と、魔族が人間に血を渡し、契約した場合だ。


「なるほど。 だから顎に完璧に入っても失神しなかったわけか」


「剣狼。 さっき言いかけてたのってこれのことだったんだね」


 俺たちは警戒レベルを上げる。


 半魔は普通の人間よりも耐久力、魔力量、生命力などが高い。


 それに今までの攻防からかなり強いことが分かる。


 これは……かなり厳しい戦いになるかもな。


「ちっ、バレちまったか。 お前ら『無冠の五帝』だろ? その顔と狼王の組み合わせってことはお前が剣狼で、そこの悪趣味な仮面を被ってる女が奇術乙女。 そんでさっき見えない攻撃をしてきた仮面の男が雷拳か。 なんだっけお前の技?…………あぁ、確かって言うんだっけ? もしくは無音拳」


 犯人は首をコキコキ回しながら話しかけてくる。


 犯人の言う通り、俺の十八番は居合い拳だ。


 魔力によって拳速を極限まで高めて、拳圧で攻撃をする超速拳。


 音もなく予備動作もほとんどないことから、感知するのは困難な技。


 中〜遠距離技として便利だし、初見殺し、不意打ちには適した技なので、俺はよく使っている。


「こりゃどうも。 で、あんたはどこのどなたさん?」


 俺が聞くと、犯人は口を開けてポカーンとした表情を見せる。


 すると、次には腹を抱えて笑い始めた。


「あはははは! まーじか! 俺ってお前みたいな若い奴にはもう知られてない歳なんか! いや、でもしょうがねぇか。 俺が冒険者として最後に活躍したのは7年前。 お前ら『五彗星』と同い年なら15歳だろ? なら、7年前ってことはお前ら8歳か!! そりゃ知らねぇか!!」


 冒険者として最後に活躍したのが7年前?


 半魔の冒険者がいたなんて聞いたことねぇけど……。


「オレは知ってるぞ。 お前、『黒蛇くろへび』だろ? 元SSランク冒険者で闇魔法を得意としていた」


「おっ♪ 同じ属性のお前は知ってたか! いや〜先輩嬉しいよ」


「調べたことがあるからお前のことは少しは知ってるつもりだ黒蛇。 お前は7年前、ある任務にてしたはずだ。 確か証拠となる遺品もあったはず」


「確かに証拠となる遺品は、あの時の生き延びた仲間が持ち帰ったんだろうなぁ。 でも、あの任務で俺は死にかけたが、のおかげでこうして今を生きている。 ま、人間から半魔には変わっちまったがな」


 ある方……? それは誰だ?


「元々お前は人間だった。 そんなお前が半魔になったってことは、ある方ってのは魔族か……」


「おっといけねぇ。 これ以上は契約違反になっちまう…………殺されない為にも、今ここでお前らには死んでもらわねえとなぁ!!」


 そう言って黒蛇はドス黒い魔力を身体に流す。


 あれは闇の魔力じゃない……魔族の魔力だ!!!


「居合い拳・さんの型 たか!」


狼狼斬波ろうろうざんぱ!」


水螺旋アクアスパイラル!」


 俺達は危険性にすぐに気づいて、威力が高い遠距離技を放った。


 しかし、魔族の魔力で魔法を強くし、肉体を強靭にした黒蛇に攻撃は届くことはなかった。


闇螺旋ダークスパイラル守護闇陣しゅごあんじん


 水螺旋と闇螺旋がぶつかり、相殺。


 鷹と狼狼斬波は守護闇陣を破壊したが、そこまでとなってしまった。


「ふふ……!! 人間ではありえなかったこの筋肉隆々とした肉体!!」


 身長は平均的だったのが4m程まで伸び、大きな岩をたくさんくっつけたと思えるぐらいムキムキになった肉体。


「ドス黒くも心地よさを感じる魔力! 見た目は化け物みたいになってしまったが、やはり最高だ!!!」


 濃いインクに更に黒を加えたような、目にハッキリ見えるほどのドス黒さを醸し出す魔力。


 その姿は人間からかけ離れていた。


「さぁ、殺ろうか! お前らも俺に見せてくれ!! 死ぬ間際の色々な感情が駆け巡っている顔!! その美しい顔をォォ!!!!」


 黒蛇は大鎌を持って猛スピードで俺たちに近づく。


 元人間、現半魔の元SSランク冒険者は、嬉々とした表情で悪意を持って俺達に襲い掛かってきた。


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雷拳と呼ばれる無冠の五帝。 雷帝を目指す。 @raitiiii

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