忘れないで、守るから ～五人の小人～

のどかへ 創より

　街の中。

　俺は、のどかの横を知らん顔して通りすぎた。

　のどかはスマホを見ながら歩いてて、もしかして彼氏なんかと連絡とっているのか、と考える。俺は立ち止まって後ろを振り返り、より女性らしくなったのどかの背中を見つめる。俺はのどかへの気持ちが込み上げた。

　のどか……俺はあの時、あの言葉を言っていればと後悔してるよ。

　俺は毎日、カメラばっかり見てて、それはカメラが大好きなんじゃなくて、恥ずか

　しくて、のどかをまじまじと見れなかっただけなんだ。だから俺は、

　純斗とか、亮とかのほかの奴らが羨ましいよ。だってあいつらは、

　毎日のどかのことを見てた。話すときものどかの目をじーっと見て、

　顔を近づけて……。あぁ、自分が情けない。俺には、そんなこと出来ない。

　あのときこうしてればっていう後悔は、いくら思っても、もう、

　二度とできることはできないんだから。

　俺はカメラ越しでしか、のどかと目を合わせたり、見たりすることができない。

　ただの弱い男だ。

　性格めっちゃキツいくせに、馬鹿だよな俺。

　そんなことも出来ないなんてさ。

　だた俺は、のどかのことが好きだった。

　本当に好きだったんだ。

　のどかと一緒に座ったベンチ。

　のどかと一緒に見たクラゲ。

　 のどかと一緒に話したあの店。

　もう一度、一人で座ってみても、行ってみても、見てみても

　心の中が苦しくなるだけだった。小人に、タイムトラベルっていう魔法を

　新しくつけてくれないかな。……なんてさ。

　俺はこれからもずっとのどかを見守るし、助けるし、そばにいる。

　君は分からないかもしれないけどね。

　俺たちは、のどかが死んだあとでも、のどかの味方だってこと、忘れないで。

　幸せにね、のどか。

　じゃあ。

　創は、一回息を吐いた後、「のどか……」と言い捨てて、また自分の進む道を進んだ。その時、のどかが後ろを振り返って創を見たことを、創は知らない。