のどかへ キングより




 俺は今、スクワットをしている。

 それも、街のど真ん中で。


 でも大丈夫。俺たちは今、人間には見えない人の姿になっているから。誰にも見られない開放感を味わっているんだ、俺は。


「ちょっと……もう少しでのどかの身に危険が迫るっていうのに、なに、スクワットなんてやってんの?」

 と、純斗が言ってきた。


「別に、いいじゃん! どうせ誰にも見えてないし……」


 すると、「ねえ、ママー、あの人変な動きしてるよー?」と小さな女の子がこちらを指さして言っている。その子のお母さんは「そんな人いないよ?」と言った。


「うわぁ~、ビックリしたぁ。見える子いるんだな。初めて見た」

 と、俺は言った。


「ほかにもいるかもよ」

 と、亮が言った。


「こわっ」

 と言い捨てた後、俺はのどかを見つめた。



 のどか、今でも教えた筋トレをやってくれて、ありがとーう! 


 本当にのどかはお利口さんだね。


 (・_・D  


 あ~あ、俺ものどかに告ってみたかったなー! 


 ……いや嘘です。男ですが、そんな勇気ないと思います。


 い、いや~、もっとぉ~? 一緒に居たかったな~ってこと。


 だって……のどか……早いじゃん……。


 俺だってもっと、のどかと一緒にいたかったよ。


 いや、泣きそうになるので、この話、やめます。


 俺はてっきり、のどかと亮が付き合って、幸せな顔をしているのどかのことを見る


 ことになると思っていた。でも、亮はのどかに告白しなかった。


 気持ちはわかるよ。


 のどかに悲しい思いっていうか、のどかを苦しませたくなかったから、


 そうしたんだろうなって。わかる。すごくわかる。


 それが俺でも、もしかしたらそうするかもしれない。


 ま~、両想いすらなってないけどぉ~!


 でも、俺は、のどかには幸せになってほしい。


 もしかしたら、俺とか、亮とかより、もっといい男が現れるかもしれないけど。


 そのときは、何も言わず、ただ今までみたいに、のどかを守り続けるよ。


 のどかのパートナー以上にのどかを守る。


 守る! 守る! 守る! 守る! 守る! 守る! 守る! 


 絶対に、これからも、永遠に、永久に! 


 これからも、あの筋トレやってよ? 風邪ひかなくなるからね。


 ……じゃあね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る