第19話前夜祭打ち上げ②

「お前……今なんて言った?」

杏果さんが止まったまま動かなくなってる。

「なんだ聞こええなかったのか?万屋部の出し物だが部室を開け放って喫茶店、まあメイド喫茶だな。それをしようと思う」

杏果さんが絶句のままなにも言わなくなっちゃった。

「まぁ聞けまぁ聞け。受付注文取りの担当は冬馬くん美月ちゃん、料理担当は言わずもがな優斗だ」

「部長と杏果さんはなにするんですか?」

「俺は時折料理の手伝いだ」

「琢磨くん料理できたっけ?」

「バカにするなよ、お前ほどじゃないにしろある程度はできる。教えてもらいながらになるだろうが人手がないよりマシだろ?」

「まぁ…そうだね」

流石の優斗先輩もなんかがっくしきてる。やっぱり知らされてなかったんだろうな。

「優斗はそれで納得してくれ。それで杏果だが…おまえは最重要人物だ」

「わ、私になにやらすつもりだ!」

人差し指を部長に向けて力強く聞いている、が、指先がプルプルしてる。

「杏果には看板娘になってもらう」

「なんだよ、看板娘ってなにするんだよ!」

「前の撮影会みたいに可愛い服着てメイクして看板持って宣伝したり撮影されたりするだけだ」

「い゛や゛ーーーーーーー!!!!」

なんてこと思いつくんだろこの人…

「料理を食べてくれた人には杏果のチェキをあげるシステムを組む。そうすると来てくれる人は確実に食べてくれる。だから忙しくなるがみんな頑張ってくれ」

「まて!やるわけないだろ!!」

「何のための焼肉だと思ってるんだ?」

「それは今日のご褒美で…」

「今日の褒美は確かにこれだが全部俺の奢りだ」

「だからなんだよ…」

「多少は言うこと聞いてくれてもいいんじゃないか?」

にんまり笑う部長に杏果さんはなにも言えなかった。

まぁもういっぱい食べちゃったし…従うしかないのかな…

「服はどうするんだよ!そんなにないだろ!」

「安心しろ、この日のために美月ちゃんにいろんな種類を作ってもらっていた」

「みーちゃん!?」

「すみません…まさかこんなことになるなんて…でも私も杏ちゃん先輩の可愛い格好みたくって」

てへっと笑った女神様はすでに悪魔の手に落ちていた。

「冬馬くんの服は前の撮影会の燕尾服、優斗は新しく美月ちゃんが作ってくれてるから安心してくれ」

「まって、僕まだ美月ちゃんに採寸されてなかったと思うんだけど…」

「見た目と目測で大体ですけど作れてるんですよ。部長さんに内緒で作って驚かせてあげてと言われてたんですけど…」

「そ、そっか…」

服って目測で作れるっだっけ?

それってどんな天才なの?

「俺はこのあと部室の改良にはいるからな、みんなはゆっくりしてくれてもいいし明日に備えて早く帰ってくれてもいいぞ」

「あの…もし来なかったら…」

「ん?今後のご褒美なしだぞ?」

さらっとすごいこと言ってきた。

(優斗先輩なんとかならないんですか?)

(無理だね…今回はまんまとはめられたよ。僕も教えてもらえなかった…琢磨くんが決めたことでここまで用意されてるともう修正は無理だろうね)

優斗先輩もお手上げとなると諦めるしかない。

杏果さんも放心状態。

部長はのりのり。

美月ちゃんも案外乗り気。

うん…明日どうなるんだろこれ…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お困りごとは万屋部へ! soul chiter @chiter

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ