4#風船が運んだ奇跡の勝利
≪なんと!!奇跡です!!これは驚いた!!
最低人気のスプライトが、いちばん最後方の離されたポディションから最後の直線で一気にゴボウ抜きして、更に他馬を突き放してゴールしました!!
なんていう剛脚だ!!≫
スプライトは結局、コースを縫って飛んでいく黄色い風船を追いかけるのに夢中になって、いつの間にか他馬の馬群をすり抜けて、風船の紐をやっと捕まえたとこが、丁度ゴールだったのだ。
「何あいつ。風船くわえてるよ。」
「あの風船、レース中に馬群の中に飛んでたよな。」
「俺は気にしなかったけど?」
他の出走馬達は、黄色い風船の紐をくわえて悠々と装鞍場に戻る勝利馬のスプライトを見て、ヒソヒソ話をした。
スプライトは、ウイナーズサークルの口取りの時も終始口に黄色い風船の紐をくわえていたのだ。
しかも、レース後の検査の時も、最後の手入れの時も、馬運車に乗ってトレーニングセンターに帰ってくる時もずーーーっと。
唯一風船を口から離してるのは、飼い葉を食べている時のみだった。
「ああ・・・ママ・・・
ありがとう・・・ママ・・・
ママがくれたんだよね、この風船・・・
ママが勝たせてくれたんだね、この風船で。」
黄色い風船はその後、スプライトの居る厩舎の馬房に飾られていた。
「ママ、今日も稽古を私は頑張るよ。またレースに勝てるようにね。」
~バルーン・イン・ザ・ターフ~
~fin~
バルーン・イン・ザ・ターフ アほリ @ahori1970
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