最終話「ゾンビちゃんは生きている」
「ごめんなさい…やっぱり不味かったですよね…ごめんなさい……」
その女の子は涙が止まらない俺を見て謝っていた。
表情筋が動かず、どんなに感情を爆発させても顔に出ることはないその女の子はゾンビちゃんだ。
死んでいるために表情を変えることができない女の子、それがゾンビちゃん。
俺は表情も変えられず、顔色も変わらないままで謝った女の子の手を握った。
その手は冷たかった。
俺が握ったその手は冷たく、小刻みに震えていた。
俺はその手を握り締めてこう言った。
「おいしかった!ありがとう!今までの人生でこんなおいしいもの初めてだ!」
俺の声は震えていた。
俺の顔は涙で濡れていた。
そして、震える女の子の瞳からは決して流れるはずのない涙が溢れ、頬を伝っていた。
目の前の女の子の心は確かに生きていた。
俺はその涙を指で拭い、ゾルバルディ・ン・ビリエッタちゃんのくちびるに自分のくちびるを重ねた。
女の子のくちびるはほのかに温かかった。
即興小説「チョコレイトラプソディ」 貴音真 @ukas-uyK_noemuY
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