第7話「愛おしい女の子」

「あっ…!?」


 目の前にいる女の子は驚いていた。

 自分で作ったそのチョコを俺が食べたことに驚いた女の子はゾンビちゃんだ。

 ゾンビちゃんは死んでいる。

 確かに死んでいるのに動く女の子、それがゾンビちゃん。

 俺は身体から異臭を放つゾンビちゃんと同じくらい異臭を放つそのチョコを一気に全て食べた。

 そのチョコは甘くて苦かった。

 そのチョコは臭くて不味かった。

 気がつくと俺は涙していた。

 ゾンビちゃんは俺の涙を見て慌ててハンカチを渡してくれた。

 俺の涙はどんなにハンカチで拭っても止まることはなかった。

 こんなにも優しく、こんなにも愛おしい女の子がくれた、俺の人生初のバレンタインチョコの味は涙の味がした。

 そのチョコは哀しい味がした。

 哀しくて、悲しくて、悔しくて、狂おしくて、俺は涙が止まらなかった。

 目の前にいる女の子は、ゾンビちゃんはこんなにも生きているのに、死んでいることが辛くて堪らなかった。

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