第31.5話 本当に幸せになれるのかな? 〜みのり視点〜

 堂道くんに勉強を教わった日の夜、私は早速数学の復習をしていた。


 あ、この問題! 今日教えてもらったところだ! 確かこの公式に当てはめれば、簡単に解けるんだったよね。


 うんうん。これでオッケー。次は……どれどれ?

 前まで苦戦していた問題がすらすらと解けるようになってきた。ちょっとしたコツで簡単に解けるようになるんだね。

 数学って問題が解けるようになると面白く感じてくる。こういう風に考えられるようになったのも、やっぱり堂道くんのお陰。教えるのはあまり上手じゃないとか言ってたけど、分かりやすかった。


 大学の先生に教えてもらっていた時は、数学が面白いって感じたことはなかった。先生には、他の教科も習っていたけど、難しい話をただただ聞いているだけって感じの授業だった。勉強になったところもあったけど……思い返してみれば、大学の講義みたいだったよね。流石は大学の先生(褒めてない)。


 その点、堂道くんは、私が分かるようになるまで、丁寧に教えてくれた。大学の先生と比べるまでもなく堂道くんの方が、断然分かりやすい。おじいちゃんが堂道くんを気に入っているのも分かる気がする。面倒見が良いというか、頼りがいがあるというか。

 うちのおじいちゃんは見る目があるね!


 失礼な話だけど、初めて堂道くんに会った時は、おじいちゃんに近づいてきた怪しい人! という印象だった。

 なんでそんな印象を持ったのか。それは私の家が関係してくる。

 倉敷家は、元々倉敷財閥くらしきざいばつと呼ばれていて、海外への貿易や日本国内のインフラ事業で成功を収めていたらしい。昔の話だから、私もよく分かってないんだけど……

 今では財閥っていうのは解体されて、倉敷グループという名前に変わったけど、大企業を傘下に置いている巨大グループになっている。そのグループのトップが私の父。そういう理由もあって、私の家は裕福だ。それも想像以上に裕福ということが分かってもらえたと思う。


 そういう家に生まれた宿命なのかもしれないけど、私達家族に近づいてくる人が多かった。

 私も例外ではなく、小学生の頃、友達だと思っていた子が、私の家目当てで、私に近づいていたということがあった。その事がショックで、不登校になっていた時期があった。


 そういうことがあって、おじいちゃんに近づいてきた、堂道くんを怪しい人と疑ってしまった。だって、おじいちゃんに若い人の知り合いがいるなんて思わなかったし……

 後でおじいちゃんから、ゲームセンターで起こった話を聞いて、学生でそんな勇気がある行動出来る人がいるんだ、と感心した。私だったら怖くてなにもできないと思う。

 今では、友達? として仲良くしてもらってる。委員会でも一緒に仕事をしたし、勉強も教えてもらったし、もうお世話になりっぱなしだね。


 ……というかおじいちゃん! 前にゲームセンターなんて行くところじゃない! なんて言ってたのに自分は行ってたんだね。最近おじいちゃんと一緒に出掛けてないから、今度連れて行ってもらおうかな。


 あ、そうだ。堂道くんにお礼言わなきゃ。


 なんてメッセージ送ろうかな。女の子らしいメッセージってどんな感じかな? 前メッセージでやり取りした時は、特に気にしてなかったんだけど……


 う〜ん。これだと、ちょっとね〜。これでどうかな?


『今日はありがとうございました。今週もう一度おじゃましますので、ご指導お願いします! 堂道君のお陰で、今度のテストは良い点取れそう! いぇい! いぇい!』


 もうこんな感じで良いかな? 男子とやり取りなんてしたこと無いから全然分からないよ〜。ちょっと、硬い気もするけど、これで送っちゃえ〜。


 あ、これも送ろう! 

 最近、お気に入りの可愛いくまさんのスタンプも送った。


 私はベッドに倒れこんだ。ふぅ〜なんか疲れた〜。


 ・

 ・

 ・


 ピロリン


 あ、堂道くんからだ!


『了解! アルバイトが出来るように勉強がんばれ〜!』


 続けて、オジサンが敬礼してるスタンプが送られてきた。


 ふふ、これって私も持ってるスタンプだ! このオジサン可愛いよね。堂道くんセンスあるね!


 これでよしっと。応援してもらってることだし、勉強頑張らないとね。


 トントン


「はーい、どうぞ〜」


「みのり。少し話があるんだが」


「な、なにかな? お父さん」


 珍しくお父さんが、部屋にきた。倉敷グループのトップであるお父さんはいつも忙しくしている。最近、あまり会話ができていないせいもあって、ぎこちなく返事をしてしまった。


「それなんだが……」


 なんだろう? 言いにくい話なのかな?


「えーとな。お見合いの話なんだが……」


「え、お見合い?」


「ああ、少し早いかもしれないけど……相手は、知り合いの社長の息子さんだ。とてもお世話になってる社長で、いい人なんだ。きっとみのりも幸せになれると思う」


「……う、うん」


「それにみのりが通ってる高校の3年生だそうだ」


「そ、そうなんだ」


「凄い偶然だろ? で名前は、稲垣勇斗いながきゆうとくんと言うんだけど、会ったことあるかい?」


 3年生は関わりが無いから全然知らない。


「多分会ったこと無いかな……」


「そうか。来週会う予定だから、そのつもりで。勇斗くんいい人だと良いね」


 そう言うと、お父さんは、部屋を出ていってしまった。


 こういう家に生まれたから、いつかそういうことがあるかもと思っていたけど、急にそんな話がきたからびっくりだ。

 お父さんが直接私に言ったってことは、お母さんやおじいちゃんも知ってることなのかな? みんな私にお見合いして欲しいの?


 それで私は、本当に幸せになれるのかな?


 * * *


 さっき、お父さんに言われたことが頭から離れない。色々考えすぎて中々眠れない。

 お見合いか……高校生のうちからお見合いをするなんてね。


 ブーブーブー


 はっ、びっくりした。

 机の上に置いてあったスマホが急に震えだした。


『はい、もしもし』


『あ、倉敷』


『玲美ちゃん? こんな時間にどうしたの?』


 電話の相手は上月玲美こうづきれみちゃんだった。

 玲美ちゃんは、小学生の頃からの付き合いだ。友達だと思っていた子に騙されて、不登校になっていた時、毎日私の家に来て、その日あった授業のことだったり、学校でのことを話をしてくれた。そのお陰もあって、私は徐々にだけど学校に行けるようになった。

 玲美ちゃんがいなかったら、私はずっと学校に行かずに家で過ごしていたと思う。


『ああ、今日はメッセージが無いなって思って電話したんだけど……なんかあったのか?』


 私は玲美ちゃんと毎日のようにメッセージのやり取りをしてる。今日あったこととか、なにも無くてもおやすみ〜だけでもメッセージを送っていた。


『うん……』


 玲美ちゃんにさっきお父さんに言われたことを全て話した。


『はぁ? お見合い?』


『うん……』


『ていうか高校生でお見合いって早すぎんだろ! お前の親父はなに考えてるんだろうな』


『やっぱり、早いよね。でも私の為を思って言ってくれてるんだと思うんだけど』


『倉敷の為って言ったってな……で相手はうちの高校の先輩なんだよな?』


『うん』


『じゃあ、あたしがそいつを見ておいてやるよ。変なやつかもしれないしな』


『玲美ちゃん、ありがとう』


『ついでに堂道ってやつも見ておくよ』


『え、なんで?』


『だって、最近、倉敷の話によく出てくるし、単純に気になって……』


 そんなに堂道くんのことを話してたのかな?


『ど、ど、堂道くんは変な人じゃないから大丈夫! 玲美ちゃんは気にしないでいいよ』


『え〜〜、気になる〜』


『絶対にだめだからね!』


 可愛く言っても駄目なものは駄目だからね。


『ちっ、わ、わかったよ。あとでこっそり見ようかな(小声)』


 堂道くんに迷惑掛けちゃうよ! まったくもう!


『で結局のところ、倉敷の気持ちはどうなんだ? お見合いは納得してるのか?』


『私は……』


 私は、漠然と将来のことを考えていた。学校で好きな人が出来て、その人と一緒に学校に行ったり、デートしたり。そして、最後は……

 でも、家の事も考えると……


『……まだ分からないかな』


『そっか』


 私はどうしたいんだろう? すぐには答えが出そうにない……


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 この作品で初めて別視点、倉敷みのり視点を書いてみました。お嬢様でした。

 親の言う通りにしていれば、幸せになれるのでしょうか? 難しいですね。

 

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 改定

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浮気されたけど特になんとも思ってません!! みず @mizuZZZ

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