第32話 これ以上、倉敷に近づくな

 図書室に入ると、すでに倉敷さんは勉強を始めていた。美少女が図書室で勉強している姿っていうのは、なんというか絵になるな。と倉敷さんを眺めてると、周りに男子が多い事に気づいた。

 今週はずっと図書室で勉強していたが、こんなに男子はいなかった。もしかしてこれは倉敷さん目当てで男子が集まったのかもしれないな。というかお前らテスト近いんだから、ちゃんと勉強しろよ。

 以前、図書委員会の手伝いをしたとき、倉敷さんと話をしただけで、周りの男子に睨まれたのを思い出した。モテるっていうのも大変なのかもしれないな。

 また睨まれるかもしれないが、ここで見ててもしょうがない。行くか。


「倉敷さん、お待たせ」


「あ、堂道くん!」


 声を掛けると、倉敷さんは笑顔で迎えてくれた。こんな可愛い笑顔をされたら、男子は勘違いしちゃいそうだよな。倉敷さんは後輩、倉敷さんは友達、これでオッケー。


「あ、あいつ抜け駆けしやがったぞ」

「くっ、新人か」

「教育係! なにしてんだ!」


 周りからそんな声が聞こえてきた。

 抜け駆けってなんだ? 他にも気になる言葉が聞こえてきたぞ。倉敷さんのファンクラブみたいなのがあって、会員規則みたいなのがあるのか?

 周りからの視線を感じるが、俺はファンクラブの会員じゃないので、無視することにした。


「勉強の調子はどう?」


「ん〜〜。数学以外は調子いいよ。やっぱり数学が難しいよ〜」


「てことは数学以外は、オッケーってことね。じゃあ、もう他の教科は勉強しなくて良いんじゃないか? 点数が取れてる教科を勉強しても点数が上がりにくいと思うし」


「確かにそうだよね。問題の数学をなんとかしないとね!」


 倉敷さんは随分と気合が入っているようだ。


「あ、そうだ。はい、これ」


 俺はバックから、ノートを取り出して倉敷さんに渡した。


「え、これは?」


「すごく簡単にだけど、1年生で習う数学の要点をまとめてみたよ。ここらへんの内容が理解できれば、多分80点は余裕で超えると思う」


「もらっちゃっていいの? 簡単にって言うけど、だいぶ細かく書いてあるよ。これは、数学の教科書より分かりやすいかも!」


 ぱらぱらとノートを見てそう言ってくれた。


「それは作った甲斐があったよ」


「でもどうして、そこまでしてくれるの?」


 どうしてかぁ。


「友達だからかな? 良い点取ってもらいたいしね。それに後輩に頼られて、嬉しくなったってのもある……ちょっとこれ自分で言うの恥ずかしいな」


「恥ずかしいことなんてないよ。私の為に準備してくれてありがとう。あ〜あ、堂道くんだったら良かったのに」


 倉敷さんの顔が少し暗くなったように見えた。


「ん? なにが?」


「うんん。なんでも無いよ。これで、もう80点以下の点数は取れないね」


「あ〜、プレッシャー掛けちゃったか?」


「このプレッシャーのお陰で、気合が入ったよ。よし! 今日もよろしくお願いします」


「良かった。じゃあ、今日も頑張るか! じゃあスパルタでいくぞ〜」


「え、お、お手柔らかに……」


 ・

 ・

 ・


「ここは合ってるんだけど、こっちのやり方のほうが解きやすいぞ。簡単に解ける問題は早く終わらそう」


「ふむふむ、なるほどです」


「この問題は、ひたすら基礎問題を解いて覚えるしかないね。基礎が出来てれば必ず解けるから」


「なるほど〜」


「で、こっちは……って感じで解いてこう。大丈夫か?」


「……」


 返事が聞こえなかったので、ふと隣を見ると、倉敷さんと目があった。


「ん? どうかした?」


「い、いや、な、なんでも無いよ」


 慌ててどうしたんだろう? もしかして倉敷さんとの距離が近かったから驚いたのかもな。ちょっと距離感気をつけないと。


「そっか、分からなかったら言ってな」


「うん」


 それから俺達は1時間ちょっと勉強をした。1人だと30分くらいしか集中力が続かないが、2人で勉強しているせいか、いつもより集中できた。周りを見てみると、さっきまでいた男子達はいなくなっていた。というか俺達と図書委員しかいなさそうだ。

 図書委員を見ると早く帰りたそうにしてるな。


「キリもいいし、今日はこれくらいにしようか」


「そうだね。疲れた〜」


「お疲れ様」


「疲れたけど、濃い1時間だった気がするよ。後は土日に復習すれば完璧かも!」


「そうだな。とりあえず、要点は教えられたと思うから、あとは倉敷さんの頑張り次第ってことで」


「が、がんばります!」


「よし! じゃあアルバイト先が決まったら教えてね。遊びに行くから!」


「それは早いし、教えないよ!」


「ですよね〜。じゃあ、俺は、ちょっと後片付けしてから帰るから」


「あれ? いつもみたいに聞いてくれないんですか?」


「え〜と、あっ! 家まで送ろうか?」


 普通に忘れてたわ。最近、毎回言ってた気がするわ。


「いえ、大丈夫です」


「ってなんでやねん!」


 遠回しに一緒に帰りたいって言ってんのかと思ったよ。はずい。


「今日もありがとうございました。また来週です〜」


 倉敷さんって結構おちゃめだよな。お笑いとか好きそう。今度聞いてみようかな。


 ・

 ・

 ・


 倉敷さんが図書室を出たのを確認して――


「本棚の後ろに隠れてる人。俺になにか用ですか?」


 勉強している間、ずっと視線を感じていた。監視されているような感覚だ。俺達が座っていた椅子の近くの本棚から見ていたんだと思う。


「……」


「用が無いなら帰りますけど」


 なにも危害を加えてこないんならなにもしない。倉敷さんも変なやつに付きまとわれてるんかな?


「おい、お前」


「はい、なんですか?」


 本棚の後ろから現れたのは、見たこと無い女子生徒だった。眼鏡を掛けてマスクをしているのであまり顔は見えないが、髪は茶髪で、特徴的なイヤリングをしているのがちらっと見えた。あとでどこの誰だか調べておこう。


「これ以上、倉敷に近づくな」


「なぜ? まさか君は、倉敷さんのファンクラブのやつか? もうファンクラブとか止めてあげな。本人は喜んで無いと思うぞ」


「なんだそれ」


 あ、違ったか……


「あ、ごめんなさい。というか友達と一緒にいて、なにが悪い。ってことでこれからも仲良くしていくと思う」


「……あたしは、お前の為に言ってる」


「俺の為? どういう」


「……」


 だんまりか。


「クソ野郎がいるからだよ。分かったな。じゃあな」


 そう言うと図書室から去っていた。

 クソ野郎? 俺のことか? なんか俺に向かって言ってなかったような気がするんだよな……謎すぎるな。でも考えるまでも無いんだよな。友達だから話もするし、勉強だって一緒にする。他人にとやかく言われる筋合いは無い。とりあえず、あいつのことは、保留ってことで。


 そろそろ、帰りますか。図書委員に挨拶をして、廊下に出ると――


「ちょっと、離してよ!」


 倉敷さんの叫び声が廊下に響いてきた。誰かと言い合ってるのか? もしかして、さっきのやつか! こんなことなら学校を出るまで一緒にいるんだったよ!


 ====================

 ここまで読んで頂きありがとうございます。

 

 リアルで学校にファンクラブとかあったら面白そうですよね。でもどんな活動をするんだろう? なんか良い活動しない気がしてきた……ってことで却下で笑


「フォロー」「応援」「★」を頂ければ、書くモチベーションが上がりますので、宜しくお願いします。

 最後にツイッターも行っていますので是非フォローの方宜しくお願いします。


 ====================

 改定

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る