第31話 これで一緒に高みを目指そうぜ

 今日は良い気分で帰れると思ったら、嫌なやつに会ってしまったな……それにしても俺は凄いやつと付き合ってたんだな。良い意味じゃなくて悪い意味で。恋は盲目って言うけど、俺は全然彩花の事が見えてなかったのかもしれないな……もう正体というか裏側が見えたから良いんだけどね。

 なんか最後に「後悔するよ……」なんて言われたけど、俺は全く後悔してない。むしろ彩花と別れてから、倉敷さんだったり、只野だったり、色んな人と交流できたし、色んなことに挑戦できた。正直彩花と付き合ってた頃よりも何十倍も楽しい。これがリア充かな?


 * * *


 家に帰り、1年の頃の教科書を探した。ちゃんと整理した気がするんだけど。ま、まさか……流石に捨ててないよな――


 ここらへんだったような。


 あ、これは昔ハマってたゲーム……

 こっちは、漫画かぁ〜。懐かしいな……まだ連載してるのかな。

 っと、脱線してしまった……


 あった、あった〜。1年の教科書はもう使わないと思って奥の方にしまってたんだった。


 大きな文字で「高校1年」と書かれたダンボールの中に教科書一式が入っていた。目的の数学の教科書はだいぶ使い込まれており、所々、ピンクのマーカーで線が引いてあった。

 あ、これこれ! というかこの時の俺なにも考えてなかったかもしれないな。重要だと思った文章にマーカーで線を引いてるんだけど、全文に線を引くという暴挙を……これじゃあ、どこが重要か分からないよな笑

 おっと、このページもピンク過ぎる……


 これを使って、早速、数学の要点をまとめることにした。

 今回は彩花の為じゃなくて、倉敷さんの為に頑張る。これで良い点数を取って、アルバイトができるようになると良いな。教科書を軽くペラペラと見たが、まだ覚える必要がある公式は少ない。今のうちに基本となる公式を覚えておくのが良いと思う。


 あ〜、ここやったな〜。因数分解とか、三角比とか懐かしいな。

 やっぱここは、たすき掛けだよな! たすきって、なんか数学っぽくない言葉だから覚えやすい。


 ふむふむ……


 かきかき……


 ・

 ・

 ・


 ふぅ〜こんなところかな。1年の内容を久しぶりに見たけど結構忘れてる部分があったな。数学って日常生活だとほぼ使わないから忘れちゃうよな。


 ふとスマホを見るとランプが点滅していた。メッセージが来てるのかも。


 え〜と、お、グッドタイミング! 倉敷さんからだ。


『今日はありがとうございました。今週もう一度おじゃましますので、ご指導お願いします! 堂道君のお陰で、今度のテストは良い点取れそう! いぇい! いぇい!』


 倉敷さんって結構律儀だよな。礼儀正しくていい子だ。可愛いくまがピースサインをしているスタンプも送られてきた。


 えっと――


『了解! アルバイトが出来るように勉強がんばれ〜!』


 っと。あとは、変なオジサンが敬礼してるスタンプでも付けておくか。


 ピロン


 返信はや!


『私も持ってます』


 というメッセージとともに変なオジサンが土下座をしているスタンプが送られてきた。


 くく、なんで同じの持ってんの笑

 これってそんな有名じゃない気がするけど、倉敷さんって、おじいちゃん子な感じだし、オジサン系のキャラクターが好きなのかも。


『ナイス、オジサン』


 よし! 今度は自分の勉強を頑張ろ〜。


 眠くなるまでひたすら勉強をした。


 * * *


 今週は勉強漬けの毎日だった。学校で勉強して、放課後図書室で勉強して、家に帰って勉強……。でもそこまで無理はしていない。寝不足になるまで勉強しても効率は良くないからな。

 来週のテストの点数が楽しみだ。自己ベストを更新したいな。


「只野おはよ〜」


「あ、昇くんおはよ」


「もう金曜だな〜。今週は早く感じたな〜」


「そうかな? 僕は長く感じたかも。今日はようやく、僕が好きなアニメの放送日なんだ。楽しみ過ぎて待ち遠しかったよ……待ってる時は長く感じるよね」


 確かに連続ドラマとかアニメって、終わり方が上手いんだよな。ちょうど良いところで終わるし……来週も楽しみ! 早く来週にならないかなって思っちゃうよな。俺はそれが嫌で最後にまとめて見るようにしてるけど。


「あ〜、それはあるかもだな。今度そのアニメも詳しく教えて」


 只野の話を聞いてると、アニメが見たくなるんだよな。説明の仕方が上手いと言うか、熱量が凄いというか……。実際に見ると普通に面白いんだよな。


「うん! ぜひぜひ〜。絶対にハマると思うよ」


「あ、そうだ。これ。次のテストの要点をまとめたノートなんだけど、これ見る?」


 周りに聞こえるように少し大きな声で話をした。ちらっと彩花の視線がこっちに向いたような気がした。


「え、いいの?」


「おう、いいぞ〜。いつもお世話になってるし。これで一緒に高みを目指そうぜ」


「ありがとう!」


 今日頑張れば、明日は休みだぁ〜。


 ・

 ・

 ・


 放課後になった。今日は金曜日なので教室に残っている人は少ない。そういえば、倉敷さん、図書室に来るって言ってたな。早く行こう。


 机の中の教科書をバックにしまって、図書室に向かう準備をしてると――


「昇くん……」


「ん? どした?」


 只野を見ると悲しそうな顔をしていた。


「ごめんなさい!」


「え? なにが?」


「あの……朝、昇くんに借りたテスト対策のノートなんだけど……菊池さんに取られちゃった……」


 早速彩花のやつ、やりやがったな。人のノートを奪うとか最低だな。まぁ別に良いんだけどね。


「気にしなくても良いよ〜」


 軽い調子で返すと――


「気にするよ! せっかく昇くんが頑張って作ったノートなのに……」


「マジで気にしないで大丈夫。あれな、1年の時にまとめたノートだから」


「え……なんで1年の時のノートを僕に?」


「だって、基礎は大切だろ? だからあれで基礎を固めて高みを目指そうぜって」


「な、なるほど……」


只野は、俺の変なテンションに圧倒されてるようだ。


「っていうのは冗談で、俺と別れてから初めてのテストだから、なにかしてきそうかなって思ったから、適当なノートを只野に渡したって感じかな。とりあえず、あのノートが身代わりになってくれて良かったな」


「そ、そういうことだったのね。色々考えてくれてたんだね」


「只野の為ってのもあったけど、ちょっとしたいたずらみたいなところもある。だけど、あのノートの内容をやれば、基礎は勉強できるかもね」


 ただし、1年の時の基礎だけど……


「でも助かったよ。今日は早く帰ってアニメを見ないといけないから」


「あ、ちょっと待って、はい、これ」


俺は別のノートを只野に渡した。


「これは?」


「こっちが本当のノート」


「え、いいの?」


「おう。もう来週テストだし、土日は勉強しないって決めてたから」


「そうなんだ。ありがとう!」


「おう! ちょっと変なことに巻き込んで悪かった」


「ううん、全然大丈夫! じゃあ、またね〜」


 只野は元気よく教室を去っていった。

 ちょっと、只野に悪いことしちゃったな。反省、反省。


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 ここまで読んで頂きありがとうございます。


 高校で勉強した数学を思い出しながら書きました。テスト前は夜遅くまで勉強してましたね〜。一夜漬けってやつですね。次の日までは覚えてるんですが、ちょっと経つと忘れちゃうんですよね笑


 多くの評価を頂きありがとうございます。おかげさまで「★」が1900を突破しました。書くモチベーションが上がりました! 引き続き「★」を頂けると嬉しいです!!


 最後にツイッターも行っていますので是非フォローの方宜しくお願いします。


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 改定

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