第31話 奇妙なチームの活動

 警察は、亡くなった果林の交友関係を調べ、事件前に揉めていたとされる果林の所属していた事務所スタッフ村井勇太を取り調べていた。


 「だから、俺はやっていないって」

 「じゃ、どうして、揉めていたんだ」

 「だから、何度も言ってるじゃないか。果林が、急に辞めたいって言うから、引き止めていただけなんだって」

 「さぞかし、果林の存在が疎ましく思えたんだろうな」

 「何だよそれ。そんなことで殺すか、冗談は、よしてくれ」

 「ほぉ~、そんなこと、ねぇ~。じゃ、どんな事なら行動に移すんだ。なぁ、話して楽になれよ、隠していないでさぁ」

 「そ、そうだ、じゃ、その証拠はあるのか、俺が隠しているって言う」


 その時、突然、取調室のドアが開き、一人の男が入ってきた。


 「あっ、鳥羽警部」

 「いけませんねぇ~。押しつけは。後ろめたさがなければ、話しますよねぇ。あっ、後ろめたさがあって言い訳を探しているとか」

 「何だよそれ!」

 「おや、僕はあなたの事を思って助言させて頂いてるつもりなんですけどねぇ」

 「何だよそれ」

 「いやね、あなたが別の隠し事を突き通している内に、身に覚えのない犯人にならないようにと思いましてね」

 「そ、そんなの冤罪だろうが」

 「おやおや、親切心からなんですがねぇ」

 「そうだ、弁護士、弁護士を呼んでくれ」

 「その必要はありませんよ、もうお帰り頂きますから」

 「警部、まだ…」

 「いいじゃありませんか、さぁ、どうぞ」

 「言われなくても帰るさ」

 「あっ、もう、ひとつだけ」

 「な、何だよ」

 「これも助言なんですけどね。ここで過ごした何時間かがあなたの立場を危うくしなければいいんですがねぇ」

 「ど、どう言う意味何だよ」

 「いやね、あなたが隠している事ですがね」

 「…」

 「あなたのお仲間は、どのように思われるかと思いましてね」

 「…」

 「いや~、隠し事がある訳ですから、我々としては、それが何だか興味がありましてね。お邪魔をしないように、隠密に行動するつもりなのですがほら、人はミスを犯しますでしょ。お仲間に私たちが、マークしているのがバレやしないかと、どうも、そこが、僕としては、心配なんですよ」

 「脅しているつもりか」

 「とんでもない、あなたの事を心配してるんですよ。お仲間に変な目で見られたり、有らぬ噂を立てられたり、仲間はずれにならないかとね。そうそう、信用を失って、閉職に回されるかも。ああ、考えれば考える程、心配で心配で」

 「…」

 「僕がお仲間と同じ立場なら、警察にマークされているあなたを放っておきませんよ。そうでしょ、放って置けば、探られたくない隠し事を掘り当てられるかも知れない。ほぉ~怖い。僕ならあなたをどこかに隠すか隠し事の大きさによっては、うううう、いけません、恐ろしい想像を…」

 「さっきから、何を勝手なことばかり…」

 「そうでしょうかねぇ、満更ではないと僕は思いますよ」

 「…」

 「そろそろ、話して頂けませんかねぇ、本当の事を」

 「だから、言ってるじゃねぇか、やってないって」

 「それは、果林さんを殺していないが、他に言えない犯罪を隠しているってことですか?」

 「勝手に思ってろ」

 「そうですか。では、お帰り下さい、くれぐれもお仲間にお気を付けて」

 「…待て、待ってくれ」

 「おや、どうされました。帰れるんですよ」

 「仲間って…」

 「どうされました?」

 「…」

 「そうですか、では、お帰りください、さぁ、どうぞどうぞ」


 村井は、机の上で両手を組み、その手は血色が変わる程強く握られていた。同時に貧乏ゆすりが激しくなり、机がガタガタと静かな部屋に鳴り響いていた。緊張感が高まる村井を嘲笑うように平然と鳥羽警部は、


 「どうしました、こんな所、長居は禁物ですよ」

 「…」

 「あなたの仲間も私たちも同じですよ、疑うって点ではね。でも、お仲間の疑いは猜疑心でどんどん膨らみ、限りなく黒にされるでしょうねぇ、お気の毒に。まぁ、私たちなら疑いますが、ちゃんと裏付けを取って、白黒を付けますよ。どちらが、あなたの身を守る事になるのでしょうねぇ。僕、忙しいから先に帰ります、では」

 「ま、待て、待ってくれ。はな、話す」


 村井は、窮鼠猫を嚙むの趣きで意を決した。

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