第30話 奇妙なチームの活動
「無理を言って、巻き込んだのさ」
いすずは、すっかり、アイドルに邁進するだけでなく、慎司たちの思惑に巻き込まれていた。
「じゃぁ、何かあれば、日菜子さんを介せばいいってこと?」
「そうだ。少なくとも君達は、絢香さんにに期待されている。だから、心証を悪くしないことだ」
「絢香さんが期待している?」
「いすずちゃんは、そう思わないのかい?」
「確信が持てないです」
「絢香さんの捨て台詞さ」
「分かるように、言ってよ~」
と、花は、前置きの長い慎司の癖に釘を刺した。
「ほら、幻滅させるなよって、言ってたじゃないか」
「ああ」
「幻滅させるなって、ことは、期待を裏切るなよってことだ」
「そうか。期待してるからこそのエール?」
「そ、いすずちゃん、分かってきたみたいだね」
「何よ、僕だって…分かったから」
花は、少し焼餅を焼きながら、いすずを見つめていた。そんないすずは、目を輝かせて喜んでいるように思えた。それが、絢香さんに期待されてのものか、慎司に褒められたことなのか、判断し兼ねていた。
「あはははは。それなら、絢香さんの発する言葉と気持ちは必ずやイコールじゃないってことが分かったんだろうな」
慎司は、負けず嫌いの花がマウントを取り損ねた焦りを感じて、思わず和んだ。
「そりゃ…ね、うん」
「怪しいなぁ。まぁ、実際、行動を共にすれば段階を経て分かるさ。それまでは、一言一句に感情を波立たせないように注意しな。女のプライドは一度傷つけると厄介だからな」
「それをあんたが言う?」
「はいはい」
三人の笑いが狭い事務所に響いた。いすずが帰った後、しばらくして、ネットサーフィンをしていた花が叫んだ。
「びっくりしたぁ、どうしたんだ、急に」
「SNSを見てたら、事務所の誰かが、果林ちゃんの事件のことで、警察に連れて
行かれたらしいって」
「出処不明の噂話か?他にも何かあるのか?」
「どうも、果林ちゃんと揉めていたらしく、そのスタッフの怒涛と果林ちゃんが泣いている姿が目撃されていたらしい、ってこと」
「捜査は、難航しているみたいだな。交友関係からやっと、目撃証言を得た段階か」
「まだぁ、匂い袋には辿りついていないみたいよ」
「ああ、ペットボトルを渡したのが絢香さんであることもまだ、知られてないようだな。もし、尾行が付いてついていたら、花たちが気づいただろうからな、変態親父が居たってね」
「そうね」
「そう言えば、あれから、俺の所にも警察から何の連絡もないな、俺、容疑者から外れたのか?」
「分からないわよ、重要参考人だけに何かボロを出さないかって、泳がされているのかもよ~」
「目覚めの悪い予想をするなよな」
花の予想は、可笑しな形で現実になった。
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