第28話 奇妙なチームの活動

 「花、前に言ったことを覚えているな」

 「覚えているよ、一言一句、相手の言ったことを再現しろ、でしょ。身振り手振り、口調の抑揚も」

 「そうだ、俺がそこにいたかのようにな」

 「わ、わかってるよ、早くしてよ、忘れちゃうよ。いすずちゃん、補足があったら、遠慮なく言ってね」

 「うん、分かった」

 「じゃ、どうぞ」

 「まず、絢香さんがいきなり現れて、やってるわねって」

 「その時の絢香さんの表情は?」

 「え~と…右唇の端と右目尻が引っ張り合うような表情で目は笑っている感じかな…」

 「口角が上がっていたってことか。それなら、満足感の現れだな。絢香さんは、自分の本質の感情が顔にでるタイプだ。愛想笑いや他人を気遣うことが出来ない。だから、誤解されやすいんだろうな。自分が選んだ娘達の頑張りが嬉しかったのさ。正確には、自分の選択が間違っていないことにね、じゃ、次に進んで」

 「それから、噂になっているはよ、河川敷でのダンス。それから、日菜子のことを聞かれて当日合流です、と答えると、大丈夫?まっ、いいかって」

 「そこから読み取れるのは、連絡はしなかったが気にはなっていた、と言うことだ。これは綾香さん自身の行いから、自分ならこうするはずとアンテナを張っていたところで、SNSか何かで花たちの事を知った。自分と同じ匂い感じて嬉しくなって、自分の目で確かめたくなった。日菜子さんについては、安心しているのが分かる。既に、日菜子さんは綾香さんの信頼を得ていると言うことだ。これも孤独な者の嗅覚ってやつさ、で…」

 「そして、前座の日程を伝えられ、当日、遅くても午後一時に公演場所に来てくれる。そこで、ダンスを見せて。 チェックしつつ、修正すべき点は改善させるわよって。えーと、それから、衣装は間に合わないから、以前の衣装で宜しく、じゃ、当日ね。…あっ、幻滅させるなよって」

 「一気に突っ込んで来るな…まぁ、いい。ダンスチェックは心配と期待の現れ。ぶりっ子ダンスじゃないのは見て分かったから、あとは完成度。間違いなく、Cat's-Cat'sのようなぶりっ子を嫌い、ショーダンスのような華やかさ色気を期待しているんだろうな。流石、日菜子さん、それを見抜いてのダンス構成ってことだな。衣装に関しては、予算獲得と、手配に手間取っているってことか。でも、さらっと流した点から解決策があるから余裕を持っている感じを受けるな。慎重さから下手を打てないと言う絢香さんの本気度と期待が伺えるな。幻滅させるなよ、は、期待通りの現れで励ましの言葉だ。自分の感情を伝えるのが苦手な者は、照れから言い方が偏屈になり、思ったことの逆の言葉で表現する場合が多いからな。言い方に棘を感じるのは、自分の大切な領域に土足で踏み込まれたくないと言う警戒心・距離感の表れだ。で、日傘をくるくる回して、去っていったんだね」

 「そう」

 「傘を回す時って、どんな時だ、いすずちゃん」

 「えっ、私、え~と、ウキウキしている時」

 「そうだ、正解」


 いすずは、照れくさそうに笑顔を浮かべた。

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