第25話 奇抜過ぎる潜入捜査、開始!

 「気のせい、気のせい」

 「あのさぁ、慎司の友人のほら…あの…阿笠徹さんの調べてくれた、匂い袋のデータはどうするのよ。匿名でもいいから、警察に提出する?」

 「まだ、早い。今、渡せば、果林さんと怪しい匂い袋は、別件として処理され兼ねない。捜査班が別になれば、意思疎通は難しいだろうし、互が手柄を競い合って、繋がるものも、繋がらなくなるかも知れない」

 「それは、不味いわね」

 「ああ」

 「それに、こちらのことを根掘り葉掘り、探られるのもいい気分じゃないからな」

 「…」

 

 尤もらしいことを言う慎司に対して、調べられたら、実質プータローで怪しすぎる私生活を暴かれて、誹謗中傷される自覚があるから、警察と関わると煩わしいと言うのが本音でしょう、と、花は思っていた。


 「取り敢えず、花は、練習だ。まずは、相手の懐に潜り込むのが課題だ」

 「そうね、絢香さんを守るためにも、頑張らなきゃ」

 「敵は味方の振りをする、いや、敵は味方になるやも」

 「そうね、可能性は低いかも知れないけれどね」

 「分からないぜ、今回のグループ結成は、絢香さんの一存だろう、それだけ、思い入れがあるってことさ。その熱意が、上手く働けば、可能性はあるぜ」

 「そう上手く、行きますかねぇ~」

 「行かせるんだよ、花が」

 「おい。他人の褌を借りて相撲をとるつもり」

 「花の褌姿…、いいね~」

 「あっ、エロ想像罪で、検挙する、はい、罰金ね」

 「お許し下さいませ、お代官様」

 「もう、ほんと、慎司は、真剣なのか、アホなのか、分からないわねぇ」

 「お褒めに預かり、伊丹十三」

 「褒めてない!」


 いつものボケ・ツッコミが花にとっては、楽しかった。そんな時に花のスマホに、佐伯日菜子から連絡が入った。


 「おっ、日菜子さんからだろう?」

 「チェッ、何で分かるのよ」

 「分かるさ、日菜子さんは仕事が早いからな」

 「はいはい、私は、のろまな亀で御座います」

 「亀は、文句を言わないから、可愛いがけどな」

 「もう、いい!」

 「それで、何だって」

 「動画サンプルとして、MMDと踊ってみた…それと、ダンスポジションが書かれたメールだ」

 「痒いところに手が届くねぇ~、日菜子さんは」

 「はいはい。でも、困ったなぁ、僕、ダンスなんて…」

 「確かに想像はつかないな。それなら、ほら…広瀬すずに名前の似た…広瀬いすずちゃんに連絡、取ればいいじゃないか、彼女は、京都だろ?」


 広瀬いすずは、京都精安女子短期大学の一年生だった。佐伯日菜子は、大学を卒業後、岡山に帰郷し、実家の農家を手伝っていた。

 鬼龍院花と佐伯日菜子は、大学を卒業した経歴を詐称し、Cat's-Cat'sのオーディションに応募していた。幸い、花と日菜子は、見た目より、ずっと幼く見えた。犬タイプの日菜子と猫タイプの花は、遠からず近からずのいい関係を築いていた。

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