第19話 奇抜過ぎる潜入捜査、開始!
「三人のコスチュームは、こちらで考えるは。著作権とかで後で揉めたくないから。でも、安心して、相談しながら、三人の意見は聞きながら、作るから。時間もお金も掛かる。その予算も何とか捻出するから、任せて」
「はい、よろしく、お願いします」
「ほほほほ。いすずは本当に元気ね、いいわよ」
「すいません、ネクラで」
と、日菜子が、いつものノリで返した。
「うん…?おもしろ~い」
絢香は、満面の笑みで、三人を見ていた。
「じゃ、私に束縛する権利はまだないから、あなた方で自由に決めて。じゃ、一ヶ月後に連絡を、そうね、いすずちゃんにメールします。花ちゃん、日菜子さんは、それを受け取って。当日、早めに会場に入ってもらって、一ヶ月の成果を見せてくれる。直せる箇所があれば、時間が許す範囲で直しましょ」
「はい」
「あっ、それと今回のオーディションの事は誰にも言わないで。ある事情で、運営側に関心を抱かせたくないから。それに一ヶ月後は、私の権限でゲリラライブであなたたちに時間を作る。もし、そこで、私の目から、やっぱり無理、と感じたらその場で解散よ。失敗してもいい、やりきって欲しいの、期待しているわ」
「じゃ、今日はお疲れ様、解散」
そう言うと、絢香は颯爽と立ち去っていった。さっきまで泣き顔だったいすずが嘘のように生き生きとして見えた。
「ねぇ、打ち合わせしないとね」
「じゃ、お茶でもしばきますか」
「お茶をしばく…、何、それ」
「お茶、しましょ、って、神戸での言い方なの」
「いすずは、神戸だったの?」
「京都で~す」
「何、それ」
「あははははは」
三人は、女子会宜しく、賑やかに連絡先を交換し、今後の予定を話し合い、解散した。帰り際、まだ終わっていないCat's-Cat'sの次期メンバー選考会を横目に見ながら、優越感のようなものが沸き上がってきていたのは、三人とも同じだった。
花と日菜子は、取り敢えず慎司の事務所に向かった。歩きながら花が話し始めた。
「…でもね、どうも違うんだな」
「何が?」
「綾小路絢香の人間像が…」
「どう、違和感があるんだ?」
「ボクのイメージは、冷酷って感じ、写真のイメージだけどね」
「確かに、他人に関心がなく、猟奇的な冷たさを感じたな」
「でも、実際に会っってみると、まっすぐな人って感じ。今回のグループ結成も、絢香さんのやりたいことが組織の中でやれずに、ストレスを溜め込んでいた。それが投げ槍で、冷たさを感じさせているんじゃないかって」
「百聞は一見に如かず、ですか」
「それに何か、私たちと同じような匂い…ううん、もっと深刻な問題を抱えているような感じだったかなぁ」
「私たちって…」
「まぁ、日菜子の彼女に対する警戒心は薄らいだね」
「そうか同じ匂いね…、となると、彼女は、利用されただけだった云う事か、にしても、解せないな」
「何がよ」
「青い傘の女の果林が飲んだペットボトルは、栓が閉まっていた。これは、簡単な謎解きだ」
「どう言うこと?」
「ラベルの下方部分の一部を剥がす。そこに注射針で毒物を混入。ラベルを戻す。多少の水滴漏れがあっても、温度差により発生する雫として誤魔化せる」
「綾香さんは誰かにペットボトルを渡され、何も知らずに渡しただけなの?」
「そう考えていいだろう、だとすると疑問が残る」
「疑問って?」
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