第17話 奇抜過ぎる潜入捜査、開始!

 同人誌に興味があった花は、幕張のイベントに出かけた時、余りにの別世界に花は驚きを隠せないでいた。その中でも堂々とアニメキャラになりきっている日菜子に興味を持ち、普段の花から想像も出来ない位、日菜子に積極的に話しかけた。撮影会の後、花は日菜子を追いかけ、どうにか話をすることに成功した。日菜子も若い女性が熱心に注ぐ視線を新鮮に思え、この娘、何なの?って興味が沸き始めていた。花は日菜子を見て、心と体の奥底から沸き上がる何かを一生懸命説明した。日菜子は、花に自分と同じ匂いを感じ、好感を抱くようになり、その日、付き人として日菜子は、花を連れまわした。花も満更でもなく、楽しんでいるように日菜子には映った。馬が合った、単純に言えば、そんな関係が僅かな時間で成立したのだった。

 日菜子は、コスプレに興味を持つと言うか常習者であり、コスプレの大会や会場の常連で在り、露出度の高い「島風」のコスプレでファンも多かった。


 「花、今度、大きなイベントがあるから来ない」

 「うん」

 「じゃ、連絡先を交換しよ」

 「うん」


 数日して日菜子からメールが来た。花はその日を待ちきれないでいた。


 東京都江東区の東京ビッグサイトで開催されるコミックマーケット通称コミケが、間近に迫っていた。日菜子は、「あなたも参加しなよ」と花を誘った。花は興味深々で承諾、でも、コスチュームがない。花は、日菜子にコスチュームはどうするのかを聞くと「私の制作現場に来る?これたら、そこで花もコスチュームを創ればいい、助けてあげるから」と提案され、承諾した花は、すぐさま日菜子の住む岡山に向かった。その期間が、花の親からすれば行方不明の期間となった。

 日菜子の実家に着くと既に日菜子は、コスチュームの仕上げに時間を惜しんでいた。花は、実際、目にし、コスチュームづくりに、大いに興味を持った。とは言え、花は全てにおいて初心者、作業に追われる日菜子には、花は正直、邪魔な存在でしかなかった。そこで、もう着なくなったコスチュームを花に与え、サイズ直しをさせることにした。

 元々、パソコン好きな花は、日菜子のよく訪れるサイトや作業動画を聞き出し、独自で検索し、参考資料を集めた。花は日菜子より、小さく、サイズ直しを始めたもののキャラクターのイメージを壊さないようにアレンジするのに楽しい苦労を味わっていた。同時に撮影対象になった時、ポーズの取り方が分からないから踊っちゃえと気軽に考え、MikuMikuDance通称MMDの動画を見て、参考にした。

 花は、水を得た魚のように作業に没頭した。何かに打ち込む自分が花にとっては、清々しい驚きとして興奮さへ覚え始めていた。

 どうにかこうにか日菜子に手伝って貰い、コスチュームは完成した。いざ、試着となって初めて花は、十六夜咲夜のコスチュームのきわどさに顔を赤らめた。


 「ねぇ、これをボクがきるの?」

 「そうよ」

 「恥ずかしい…な」

 「花が着るんじゃないの、キャラに失礼だよ、それ。恥ずかしがる花は、そのゴミ箱に生地の切れ端と共に捨てな」

 「うん、分かった…」


 姿見に映る自分の姿を日菜子と共に花は鑑賞していた。


 「似合うじゃない」

 「ありがとう…」

 「後は、慣れるだけよ」

 「うん」

 「今日から、ず~とそのままの格好で一日を過ごすのよ。外に行くときもね」

 「外?」

 「大丈夫、外と言ったて、見ての通り農家だから人には滅多に会わないし、会ってもじっちゃん、ばっちゃんばかりよ。そのじっちゃん、ばっちゃんは私を見て慣れているから心配ないよ」

 「本当に大丈夫?

 「いい事を教えてやるよ。会場では人だかりができるさ、カメラを片手にね」

 「やっぱり、いざとなると恥ずかしい…」

 「奴らは、花に従うしもべだと思えばいい。自分を気持ちよくさせてくれるね。花が恥ずかしがっていると奴らは、奴隷のように無理難題を要求してくるものさ。嫌な思いをしたくなければ強くなれ。恥ずかしがる自分を捨て、誇らしげ自分のキャラをアピールすることさ。そのためにもコスチュームと一体化しないとね。生地の皺とか弛みを実際に動いてみて、直すべきところは直す。小さめにね。弛むより食い込む、程度が丁度いいんだ」

 「うん、わかった」


 言われた通り、着続けていると体の一部のように思えてきて、人と会っても動じなくなっている自分に気づき始めていた。それからと言うもの花の闘争心に火が付いたのか、日菜子の毅然とした態度がそうさせたのか、恥ずかしい思いは、見せつけてやると言う気持ちに変わり、早くもいっぱしのコスプレイヤーに花は変貌していった。

 日菜子が花に興味を持ったのも、その素質に気づいたからだった。 


 着替え終わった花と日菜子は、並んで姿見の前に立った。


 「花、太った。何かエロさが増し増しって感じなんだけど」

 「日菜子だって、ほら、このお尻、エロさ、プリプリじゃん」

 「お互い、熟成したってことで、よしとしよう」

 「そうね、ブランクがあるってことで」


 花は、十六夜咲夜、日菜子は、艦これ、島風だ。


 「そうそう、そもそも、日菜子が何故、ここにいるのよ」

 「あら、迷惑」

 「そうじゃないけど…」

 「ほらあの、慎司って人から連絡を貰ったのよ」

 「えっ、あいつから、何て?」

 「花が危機に晒されそうなんだ、是非、力を貸してくれ、って、いきなりよ。殆ど初対面の私によ、面白」

 「御免…」

 「でも、花の危機と言われれば、田舎に引き籠っている場合じゃないものね」

 「とか言って、暇な日々に刺激が欲しかっただけじゃないの」

 「卓球~」

 「はい、日菜子は、オヤジになりました」

 「まぁ、ああ見えて、慎司って人、花のことかなり心配してたわよ。あっ、もしかして、付き合ってるとか」

 「…、ないないないない」

 「花の本心、受け取ったぜ」

 「勝手に受け取らないでよ」

 「まぁ、ここまで来たんだ、あとは、流れに任せようぜ」

 「そうね」

 「で、二人の仲だけど、知り合いと言うのは不味さを感じる。とは言って、知らなすぎるのも態とい、で、何度か会場で顔を合わせている程度にしておきましょう。お互いの詳細は知らない。実際そうだからさ」

 「日菜子、相変わらず、仕切るわねぇ~」

 「気にすんな、そんなこと」

 「はいはい」

 「返事は、一回」

 「はい」

 「よろしい」

 「あ、ははははは」

 「あれ、何がおかしいの?」


 と、廊下にいた、いすずが扉を開けて顔を覗かせてきた。


 「何?何?私だけ、避けもの?まだ、出会って数分しか経っていないのに?」

 「違うって、コスチューム着て確信したんだけど、私たち顔見知りだったって」

 「それで、お互いふっくらしたって…ね」

 「そうそう」

 「そうだったんだぁ、じゃ、二人とも用意はできたわね。さぁ、行きましょ。あっ、その前に」

 「えっ、何よ?」

 「この先、どうなるか分からないけれど、お互い頑張りましょう。じゃ、円陣組んで」

 「ええええ」

 「はいはいはい。じゃ、手を出してぇ~、コスプレイヤーとチアダン、ファイト~」

 「Oh!」

 「この部屋、暑くない?」

 「いいじゃないの、何だか青春って感じで」

 「そう言うことにしておくか」


  キャラが際立った三人は、変な打ち解け合いを挟んで、綾小路絢香が待つ、教室に入って行った。

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