第11話 アイドルに何が?
「調べて見てわかったことは、彼女たちには、ライブごとに500円~1000円がチェキ撮影と、前売り券を予約してもらうことで発生するチケットパック。これも、500円~1000円ってとこかな」
「週一回としたら、バイトの方が割がいいな」
「彼女たちは夢を追いかけてるのよ、夢を」
「夢をみるだけじゃ、飯は喰えないぜ」
「そう、だから、噂か真実か分からないけれど、枕営業が囁かれて、止まないのさ」
「なるほどねぇ、でも事務所は何らかの手を打たないのか?」
「打つにしたって、資金や業界に太いパイプがなければ、何もできないでしょう」
「それじゃ~、お先真っ暗な夢じゃないか」
「分かってないなぁ、慎司は…」
「何がだよ」
「仮にも人前で歌って、踊って、ファンが付いて・。この場だけは、彼女たちが輝けるんだ」
「確かに」
「事務所が何もできなかければ、自分たちでやろうと思っても不思議じゃないと思うよ、ボクは」
「引きこもっていた花の内面を見たような気がする」
「五月蝿い」
「すいません」
「事務所も、地下アイドルやインディーズアイドルが集う企画に積極的に参加して、ライブハウス代や宣伝費を浮かせているみたいだけど、そう都合よく、そんな企画はない。予算もないしね。仮に参加できても、資金や人気のあるグループがトリを飾ることになる。最初の方に出演すると、トリの前座のように思われる。だから、気の強い子、負けず嫌いの子は、イベンターと寝たり付き合って、トリを取りに行くって」
「自分の身を削って迄、やりたいかね~」
「競争相手がいる。それが大きいと思うよ。一時の恥より、束の間の優越感。それが、彼女たちの生きがいになるんじゃない。実行者は、当然、グループの中で頭角を現すだろうから、益々過激度に対して、麻痺するんじゃない」
「そんなもんなんだ」
「あるイベントではトリから五番目までが全員イベンターと寝た子だったというのもあったらしいよ」
「人気に繋がるなら、利用できるものは利用する、か」
「資金繰りに苦しむ事務所は、解散を匂わせて、出資者に女の子を差し出す。そこで得た金は、事務所と女の子で折半するそうよ」
「切迫した環境が、泥沼化を進行させるんだな」
「大人の言いなりになりたくない子たちの中には、ファンと枕営業をする子もいるそうよ。ファンを束ねる者と関係を持ち、推しメンの人数増加やチケットのまとめ買いを委ねたりね。彼女たちは、SNSのDMで隠密に連絡を取り合ったり、実際に会って関係を結ぶ者もいる。ファンは自分に寛容だし、優しいから、付き合いやすく、金蔓にしやすいんだろうね。だから、複数と関係を持つ子も少なくないみたいね」
「なるほどねぇ~。事務所はそれを黙認するんだ。それが、AV出演の下地になる訳か」
「いい推察ね」
「あっ、ありがとう、なんか上から目線の気がするな」
「細かい事を気にするのね、ちっちゃ」
「見たことも、ない癖に」
「馬鹿か、お前は!」
「馬鹿ですよ、何もしていないのに警察にねちっこく苛められたんだから」
「もう、先に行くはよ。楽屋では、あいつ、金を持っているとか、業界の者と知り合いだとかの情報交換は当たり前。また、ファンやパパに買わせた服や装飾品を転売して、家賃や生活費にしてる子も少なくないって。握手会、抱っこ会、ハグ会など、ファンとの距離感が縮まった上、SNSの普及で事務所も管理できないのが今の身近なアイドル像かな」
「どの世界も上に行くためには、それなりの覚悟が必要だと言うことだな。ご苦労なこった」
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