第10話 アイドルに何が?

 「ファンを装ったスタッフとか?」

 「残ね~ん。返答の中に幾つか共通のワードを見つけたんだ」

 「ワードって?」

 「どうも、顔出しされている連中は、アイドル擁護で事務所やスタッフに何かとクレームを投稿し、度々、話題になっていた連中らしいんだ」

 「事務所からすれば、居なくなって欲しい存在って訳か」

 「そ~すね」

 「そんな厄介な奴を態々、呼ぶか?アイドルにこんな酷いことをして…とか、文句言ってる俺たちは、他の者より、冷遇された…とか、また、書き込みされて、面倒なことにならないか?」

 「えへぇ~、普通は、そう思うだろうね」

 「普通って何だよ?」

 「もし、こんな条件があったとしたら、どうかな」

 「条件…」

 「このAVに参加するに当たって、慎司ならどう思う?」

 「俺だったら、仮にも応援していた女の子を陵辱するのに顔出しなんて、絶対無理だなね、モザイクがかかるって言うなら好奇心が勝って、皆もいるし、その場の雰囲気もあっていいかなって思うかもしれないかな、集団心理ってやつ。それに、自分は出演しなくても誰かが出演する訳だろう、そう思うと、このチャンスを逃すのは余りにも、勿体ないと思うかもな」

 「ボクもそう思ったんだ、なのに、こうして顔を晒されたら…慎司なら、どう思う。約束が違うって、訴える、抗議する?」

 「う~ん、抗議しても聞く相手じゃないだろう?」

 「そうなると?」

 「泣き寝入りか」

 「全員の顔にモザイクを掛ける約束を反故にして、事務所に反逆した、または、不都合な者のみ、顔を晒させる。晒された者は、仲間に相談も、訴えもできない。そんなことをすれば、事務所じゃなく、そいつが炎上してThe END。顔をモザイクで隠されている者も、安心できないさ。事務所に睨まれたら最後、モザイクを外される恐怖感に、ビビリまくりの毎日だろうね。折角の楽しいひと時が、実は地獄への一歩とはね、残念」

 「何か、楽しんでいないか?」

 「自業自得は、怖いね~って、話しよ」

 「自業自得だって言ったな」

 「ボ、ボクには、関係ないから」

 「それはないだろう、花がちょっかいをださなければ日長一日、ボケーとしていられたのに…」

 「これは、失敬」

 「でも、彼女や事務所はどうやって、儲けているんだ?どうみても、CDやDVD、ライブの売上でやっていけないだろう」

 「ピンポ~ン、その通り、無理だね」

 「じゃ~どうやって?」

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