第9話 アイドルに何が?
「ボクが注目したのは、その後の場面なのさ。本来ならさぞかし、夢が叶って満足気かと思いきや、物悲しいってのか、後悔の念に苛まれているって、感じたんだ、これって、どうなんだろう?」
「花の感が当たってるよ。勢いでやったものの、元は、穏やかな奴らだ。後悔の念に苛まれても可笑しくない。それを、同じような花が、感じ取ったのさ」
「一緒にすんな!」
「それで」
「根は純粋なだけに、これをきっかけに自己嫌悪に陥る者や、罪悪感から対人恐怖症になる者が現れ、自ら社会との隔絶を選択したと思うんだ」
「なるほど、ナイーブな葉っぱが大きく傷ついたか」
「これは、慎司の言う、寝取られってやつも同じさ。闘争心を煽られたと言っても、覚めれば、罪悪感に押しつぶされたの違いないさ」
「ふむ、ふむ、それも推しメンは違うが、元は同じアイドルグループを応援していた者同士。合わせる顔がないってやつか」
「そう、それで、人間関係を絶ったのではないかってね」
「心理を読むねぇ~」
「…。慎司の言う虐待物のような場合は、この○○さへいなかったら、△△ちゃんはセンターになれたのに、って言う恨み辛みを企画者側が匠に煽りたて、興奮状態に男たちを追い込み、対象となるアイドルを痛めつける構図をつくるの、酷いでしょ」
「罪悪感や断絶、絶縁とう関係の崩壊が形成されるって、訳か…」
「そう、組織が強要するのではなく、参加した者たち自身が口を閉ざさざるを得ない状況を作り出したんだ」
「奴ら、悪魔だな。その苦しみから逃れるために薬に走ったか?」
「ボクもそう思うよ」
「ふむ…、この案件では、意見の一致が多いな」
「ば~か」
「はいはい」
「その悪魔的仕業だけど、可笑しなことがあるんだ」
「ほぉ~、何に気づいたのかな?」
「見つけられたのはこの1本だけ。それも数分ってことは手に入れた誰かが何故かこの部分だけを無断で投稿したってこと。でも、本体が見つけられない…」
「ってことは、誰でも手に入れない品物だと言うことか。儲けは薄いな」
「そう、だから、販売目的は二の次で、運営側の不都合をばらされたくない、口止めのためのものじゃないかなぁ」
「成る程、一理あるな」
「最も気になったことがあるんだ」
「何だ?」
「ファンとされている男たちの顔へのモザイクさ」
「モザイク…、普通この手のAVでは、男の顔は邪魔だから、モザイクが掛かっているのが普通だろう」
「…だよね」
「だよねって、花、他にも見てるな?」
「五月蝿い…、続けるよ」
「ああ」
「そのモザイクだけど、ほら、これを観て」
花は、AVのある場面を探し出し、慎司に見せた。
「どれどれ…、ん?」
「気づいた?」
「確かに、モザイクが掛かっている者とそうでない者がいるな」
「そうなんだ、で、モザイクのかかっていない男の顔をその男の知人を装って、拡散してみたんだ。すると、面白いことがわかったんだ」
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