もしも自己啓発オタクが勇者一行をマネジメントしたら
アイスティー・ポン太
第1話 みつお転生
僕は山田みつお。今年で30歳になる中堅サラリーマン。会社の中では、有能社員って感じでもないが落ちこぼれ社員ってわけでもない。いわゆるフツーのサラリーマンだ。けれども僕は、少しでも今の自分より、そして会社の同期たちより、仕事ができるようになりたいなぁと日々思っている。だから僕は、数年前から時間があるとビジネス書や、有名人の自伝などを読んだりしている。自分でいうのもなんだが、そろそろ「自己啓発オタク」と名乗っても良い気がしてきている。
そんなフツーのサラリーマンだった僕は、ある日の通勤途中に交差点で信号無視したトラックに轢かれて死んでしまった。
「……ん?」
なぜか意識がまだある。おそらく病院のベッドで蘇生したのだろうと一瞬考えたが、明らかに病院の雰囲気ではない謎の空間に僕は倒れていた。というか体めっちゃ動くな。
「おお!!みつお!!トラックに轢かれてしまうとは情けない!!」
めちゃくちゃ長くて白いひげを蓄えた、「いかにも神様・仙人です」って感じの爺様が横に立っていた。
「おぬしはもう死んでおるのだが、転生のチャンスをやろう。一つは前世の記憶を完全に消去してそこそこ強い状態で転生させるか、もう一つは記憶を引き継ぐがステータスは最弱のまま転生するかじゃ。」
これ、よくある「なろう系」の転生パターンじゃん……と内心おもったが、ここはよく考えよう。まずは提案のメリット・デメリットを整理しなくては。
もちろん、「どういった世界に転生するのか?」や「強い状態とは?」といった点に関してあまりにも情報が無さすぎるので、そこはもう仮定して考えるしかない。
仮定:「異世界ファンタジーの世界」で「Levelの上限がmax999だった場合、少なくともLevel 200程度のステータスが与えられる状態」
案①:前世の記憶を完全に消去してそこそこ強い状態で転生する
メリット
・自衛ができる。即死の可能性を下げられる。
・町のギルドなどで依頼などをこなして報酬をもらえる可能性が高まる。
・それによって金欠になる可能性を下げられる。
デメリット
・何か重要な選択を迫られた際の、検討する際にこういった思考法ができない可能性が高まる。
・それによって不利な条件での依頼や危険な依頼を引き受けてしまい、命を落とすリスクが高まる。
・転生のスタート地点ですでに自分よりレベルのモンスターが居た場合、初期ステータスが高くても死ぬリスクが高い。
案②:記憶を引き継ぐがステータスは最弱のまま転生する
メリット
・物事を選択する際に、合理的な判断ができる可能性が高まる。
・それによって不利な条件での依頼や危険な依頼を引き受ける可能性を下げられる。
デメリット
・即死の可能性が高くなる。
・町の人々の依頼をこなすことが困難になる。
「ほれ、もう時間じゃ。はやく決めんかね」
時間があれば、マインドマップやMICEなどでもっと選択肢を検討したかったが仕方ない。少し迷ったが、困った時に今まで学んできた思考技法が全く使えないのは明らかに不便だ。というかなんかもったいないじゃないか。せっかく何年もかけて得た知識をなくすなんて。多少ステータスが低くても、記憶は引き継ごう。
「じゃあ、引き継いで転生させてください。」
「よろしい。おぬしに神の加護があらんことを……」
一瞬目の前が真っ白になった。
目が覚めると、そこは全く見覚えのない森の中だった。いきなり森の中か……危険すぎるな……と思ったその瞬間である。前方の茂みの中からオオカミらしきモンスターが僕に襲いかかってきた。
(やばい……!!)
僕は無我夢中でそのへんの木の枝を拾って応戦するも、いかんせんステータスが低いため、こいつ1匹倒すのにかなり苦戦した。
「はあ……はあ……」
これは選択をミスったか……?やっぱりある程度ステータスが必要だったか……?と考えていると、再び近くの茂みからオオカミが現れた。それも5匹。
(ああ、転生して早速死ぬのか俺は……)
そう諦めた刹那、爆音と共にオオカミ達は悲鳴を上げながら炎に包まれていた。
「大丈夫ですか!?」
魔女の様な格好をした少女が駆け寄ってきた。
「大丈夫です……」
僕は疲労と安堵で急に意識を失い、そのまま倒れてしまった。
「アレン、スタン、この人を町まで運びましょう!」
「わかったよ」
「了解!」
この時、僕の意識は無かったが、助けてくれた3人が僕を近くの町まで運んでくれたらしい。
もしも自己啓発オタクが勇者一行をマネジメントしたら アイスティー・ポン太 @icetea_ponta
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